第16話 君、いたの?
そろそろトウカとタマモも強くなったし、帰ろうかなと思っていた日の夕暮れ。
街中に鐘を叩く音が鳴り響いた。
「お兄ちゃん!避難の合図だよ!」
鉱石がパンパンに詰まった鉱石を背負ったトウカが駆け寄ってきた。
もはや鉱石ぐらいじゃおもりにもならないらしい。
「この音は魔物か他の国が攻め込んできた時の合図だ。
ここから馬車で半日くらいの距離に大軍が現れたんだと思う。」
鉱石から狐火に使う金属成分の抽出を行っていたタマモがそう教えてくれた。
……どうでもいいけど、他の狐火師に販売予定のインゴット作ってるんだから、直径2mの球状じゃだめだと思うんだ。
それ純粋な銅なら32トンになるから。
軽々と持ってるけど、普通の人なら持ち切れずにペチャンコだからね。
……正直魔物とか敵国とかどうでもいいけど、薬飲ませすぎたかもしれない。
将来確実に尻に敷かれることになる2人の伴侶に幸運を祈りつつも、ちょっと状況を見てみることにした。
「ちょっと様子見てくる。とぅっ!」
その場で333mほど垂直に飛び上がると、魔法を使う。
【
すると遠くに数種類混ざったような獣や、明らかに巨大な1つ目の顔色の悪い人が隊列を組んでこちらに向かっているようだ。
このペースだと、夜に一度止まって翌朝開戦だろうか。
いや、相手は魔物だ。夜にこそ襲ってくるかも知れない。
「じゃあちょっと殲滅してくる。」
「私も行く。
これだけ強くなったんだから、足手まといにはならないはずよ!」
「わたしもいく!」
「いいよ。すぐ終わるし。」
俺がそう答えると、2人ともポカンとした表情で固まっていた。
「……え?
普通付いてくるなとか言う場面じゃ無いの?」
どうやら死にに行くとでも思われたのだろうか。
確かに足手まといにはならないかも知れないけど、それ以前の問題だ。
まあどっちでもいい。
「じゃあとりあえず城壁の上に行こうか。」
城壁の上から街の外を見渡すと、一面に広がる魔王軍。
おそらくは10万とかいるかもしれない。
「なんて数なの……
こんなんじゃ無事じゃすまないよ……」
そうタマモが呟くが、死ぬとは一言も言ってないし思ってもいないのは強くなったからだろう。
……やり過ぎたかもしれない。
「いたな勇者よ!
キサマが1年ほど前、大陸中を駆け回って潜り込ませていた我が配下を殴ってまわったのは知っている。
しかし!物理攻撃しか出来ない貴様がこちらを全滅させる前に、必ず貴様の仲間を殺してやる!
この数ならそれを防げまい!
嫌なら大人しく1人で出て来い!!」
声を魔法で拡散させているのが魔王だろうか。
狙いはどうやら俺のようだ。
「お兄ちゃん……行っちゃうの?
ダメだよ!死んじゃうよ!」
必死に裾を引っ張りながら俺を止めるトウカ。
上目遣いかわいいです。
「大丈夫だよ、もうほとんど終わったから。」
何を言っているのかわからないと困惑しているトウカの横で、タマモは見渡す限りの魔物が燃えているのを死んだ目で見ていた。
「うぐあぁががが……キサマああぁぁ!!!」
「あ、やっぱり生きてた。」
燃えながらもこちらを睨む魔王。
流石に魔王はこれくらいじゃ死なないらしい。
焼け野原にならないように気を遣ったからかも。
もう魔法でトドメさしちゃったけど。
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