第13話 兄の役割
【異世界言語】のスキルを手に入れたのは結構遅かったはずだ。
最初は自力で学習したし、2回目では異世界から召喚する事になれていたからか、翻訳魔法があった。
3回目からは翻訳魔法で乗り切っていたけど、魔法をかけていないと言葉がわからなかった。
助けを呼ぶ言葉や、危険を知らせる言葉は魔法無しでも聞き取れるように毎回覚えていたくらいだ。
異世界転移が10回を超えたくらいの時。
最低限の言葉を覚えていた時に【異世界言語】を身に付けたのだ。
それ以来言葉を覚えることも、言葉の違いを気にする事も無くなった。
同じ世界に転移しても気付かなかったのは、そのせいなのかもしれない。
と、脳筋らしくない事は置いといて、まずは目の前の姉妹だ。
とりあえず何を殴ればいい……もとい、何を悩んでるのか聞いてみよう。
「誰がアンタみたいな怪しいやつに言うもん「あのね。私たち狐火を練習しているの。」」
「トウカ!言っちゃダメ!」
慌てて幼女の口を塞ぐ少女。しかし既に手遅れだった。
「狐火?なんじゃそりゃ?」
少なくとも前回とその前にこの世界に来たとき、どちらも狐火とやらは聞いた事がなかった。
当時は歳をとってる事に気付いてなかったし、当時のクレアに求婚されて逃げたから、あまりこの世界は見てまわったわけじゃない。
前回も殴りまわった範囲には狐獣人自体いなかった。
「まあとりあえず帰るところなら護衛するよ。
近くの街にも行きたいし、考えるの疲れたから。ウホウホ。」
「お兄ちゃんは大猿の人なの?」
姉の事を放置して、俺の服の裾を引っ張りながら見上げる幼女。
さっきから姉に呼ばれているトウカってのが名前なんだろう。
「いいや、お兄ちゃんは猿人種の仲間だよ。
トウカちゃん……で良いのかな?
案内してくれるかな?」
トウカからツルハシを受け取り、肩車すると指さす方に歩き出す。
「ち、ちょっと待ちなさいよ!トウカを降ろしなさい!」
慌てて前に回り込み、両手を広げて立ち塞がる姉。
「まあまあ、男たちを一瞬で倒す俺がわざわざ騙す意味なんて無いじゃないか。
悪いようにはしないから、大人しく助けられときなさい。」
そう言って姉の背負うリュックを持ってやる。
まだ警戒しつつも、確かに抵抗しても無駄だと思ったのか、渋々と従う姉。
「それでお姉ちゃんの名前は何なんだい?」
「……私の名前はタマモだ。」
「タマモダ?」
「違う!タ・マ・モ!」
ハッハッハ、ちょっとは元気が出たみたいだな。
とりあえずこの後の事は、家まで送ってから考えよう。
脳筋はそんなに考えないからね。うん。
尻にタマモから蹴りを受けながら、2人の家へと向かう。
お巡りさん、これはご褒美とかじゃありませんよ?
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