第3章 狐姉妹編

第12話 狐の国

 ラ○オ体操第二ってゴリラっぽいポーズあるよね。

 最初のジャンプの次のやつ。

 足を開いて両腕を力こぶ作るみたいに曲げて、ムキムキって感じで動くやつ。

 ラジオ体操を知らない人がそれを見たらどう思うんだろうか。


「てめえ!大猿人種か!?」


 答えは多分ゴリラの事でしたー!そのままー!


 作業着でゴリラっぽいポーズをして固まっている俺と、皮鎧姿で槍を構えた狐の獣人っぽい男。

 狐の獣人だからって狐目の美人だけじゃないよね。残念。


「あ、うん。多分猿人種の一種だ。」


 とりあえず姿勢を普通に戻して、適当に答える。

 世界によっては人間がいない世界もあるかもしれないからね。

 ……ダメならゴリればいいや。


「お前が何者だろうと関係ない、身ぐるみ置いてもらオブラッ」


 ゴリった。

 身ぐるみ置いてとか言うやつ初めて見たよ。

 こんなベタな悪役本当にいたのか。

 とりあえず今のやつの仲間か知らないけど、近くにもいるみたいだから行ってみよう。

 悪人は吹き飛ばせ!ゴリラスイッチはまだONだぜウホウホ。


 そこには2人の姉妹と取り囲む4人の男たち。

 少し離れたところにいる3人は周囲の見張りだろうか。

 さっきのやつも見張りだったのかもしれない。

 狐獣人しかいないようだが、このあたりは狐獣人の生息地なんだろうか。


 残った姉妹に話を聞いてみよう。

 え?男たち?投げて見張りにぶつけたよ?ウホウホ。

 ボスっぽい1人は余ったから、手足が千切れない程度に遠くまで投げてみた。

 2kmくらいは飛んだんじゃないかな?

 今回、丸坊主は狐耳まで削りそうだったから勘弁してあげたよ。

 俺って優しいね!


「もう大丈夫だよー。

 悪い人はいなくなったからねー。」


 のんびり気味に話しかける事で、2人の警戒を少しでも和らげる。

 第一村人に受け入れられやすくする異世界転移の知恵だ。


 幼女と少女だから、なおさら優しく接しないとね。

 通報は怖いもんね。うん。


 ボロボロの服にボロボロのリュックを背負った少女と、似たような格好にツルハシを背負った幼女。

 リュックの穴からはちょっと変わった石が見える。

 なんかの鉱石だろうか。


 優しく話しかけても少女の警戒は解けず、幼女を後ろに守りながら厳しい目線を俺に向けている。

 しかし、幼女は目を輝かせながらこう言った。


「もしかして……お兄ちゃんなの?」

「そうだよ!お兄ちゃんだよ!」


 ノータイムで返事をする俺。

 またしても魅惑の呼び名、お兄ちゃんの登場です!

 俺が感動に震えていると、少女の方が警戒心むき出しで気になることを言ったのだ。



「トウカ、騙されちゃだめ!

 こんなやつが『さいきょうのおにいちゃん』なわけ無いでしょ!」

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