第10話 脳筋捕獲

 召喚できるようにするために必要な条件は二つ。

 一つは親から引き継ぐ、もしくは親の召喚獣の眷属をもらう形。

 クレアが俺を呼び出せたのもネックレスと名前を鍵に、通常とは異なる引き継ぎをしていたからだろう。

 もう一つは魔物を瀕死まで追い込むこと。


 今回の目標は後者。そう、クレアに魔物をボコボコにしてもらわなければならない。


「クレアはどんな召喚獣が欲しいんだ?モフモフか?モフモフだろ?」


 モフモフ信者でもある俺はクレアにモフモフを進める。

 飛べるグリフォンか、小型化すると子犬になるケルベロスか……

 猫又は微妙だけど狐なら八尾以上なら大丈夫だろう。


「わたしトカゲさんのツルツルがいい!」



 ……なん…だと!?


 まさかクレアが爬虫類好きだとは想定していなかった。

 モフモフと幼女なら可愛さ二倍だが、果たして爬虫類と幼女の組み合わせに需要があるのか?

 まあ本人が好むのであればそれを尊重しよう。


「と言うわけでホワイトドラゴンとブラックドラゴンでーっす!」


 目は赤と青だけど、どっちがどっちかは言わない。

 魔法の鎖で口から翼、尻尾までぐっるぐるに巻き付けてある。

 まるで某有名SFのロボットのようだ。

 ちょっとさらってきちゃった!


 後はクレアにドラゴンキラーを作り、俺が後ろで威圧する。

 ドラゴンキラーはクレアでも扱えそうな短剣にドラゴン特攻をえげつないほど付けた一品だ。

 幼女でも二、三発で普通のドラゴンなら瀕死に出来る優れもの。

 これでドラゴンの心を折れば従属可能なはず。


「さあクレア、飼い主としてしっかりしつけをやろうね!」


 教育に悪そうなのはこの際考えない。

 従属させればそれで良いのだ!


「お兄ちゃん!トカゲさんをいじめちゃだめっ!!」


 おお!なんと優しいんだクレア!

 でも従属させるにはちゃんとボコボコにしないと……


「ごめんねトカゲさん、お兄ちゃんは悪い人じゃ無いんだよ。

 今お願いして自由にしてあげるからね。本当にゴメンね。」


 あ、いや……その………


 しかし二匹のドラゴンは涙を流しながら、唯一動く鼻先をクレアにすり付けている。

 …念のためクレアをそばに呼び寄せ、魔法の鎖と威圧を解除してみた。


 すると何という事でしょう。

 二匹のドラゴンは体を小型犬くらいまで小さくすると、クレアの足下にすり寄ってきた。

 ……あれ?従属してる?


 どうやら恐怖の根源だった俺をたしなめ、自分達を解放させたクレアに忠誠を誓ったらしい。

 何この飴と鞭テイム。


『姫、我らに名をいただけないでしょうか。

 姫の剣と盾となりその身を守ることを誓います。』


『姫!そこのお方以外であれば俺が蹴散らしてやるぜ!』


 あれ?念話出来るドラゴンとか思ったより強いやつだった?

 ちなみに真面目っぽい方が白いやつで、ヤンチャっぽいのが黒いやつだ。

 予想外に強めなドラゴンだった事に驚いてると、クレアはうんうんと悩みつつも名前を決めた。


「じゃあシロとクロ!」


 犬じゃねぇぞ!でもそんなクレアも可愛い!


『シロ…ですか……?』

『く、クロ?なのか?』


 あ゛あん?


『『素晴らしいお名前です!ありがとうございます!』』


 よろしい。

 これならレベル上げもあんまり必要ないかもな。

 とりあえず基礎教育からやろうか。



「クレアちゃんは!」

『『最高です!』』


「クレアちゃんは!」

『『最高です!』』


「クレアちゃんは!」

『『最高です!』』


「大嫌い?」

『『とんでもなーい!』』


 よし!100点!



 こうしてクレア教がここに誕生……しないよ?

 残念だけど。

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