第5話 一歩ずつ前へ

 とりあえずクレアを魔法でキレイにし、手持ちの子供用ワンピースを着せた。


 ……いや、ほら、孤児院の支援とかしてたからね。

 その時の洋服が空間をねじ曲げて作った倉庫に入っててもおかしくないでしょ?

 ……ろろろロリコンちょう…ロリコンちゃうわ!


 おふざけはさておき、まずは今の現状把握からだ。

 普通なら酒場で酒でもおごりながら誰かに聞き出すんだろうが、クレアを連れて行くわけにもいかない。

 そんな時にあって良かった【アカシックレコード】


 この魔法は世界の記憶を読み取ることで、地理から歴史から全てを知ることが出来る。

 ……中身を絞って読み取らないと頭パンクしそうになるけど。


 ふむ、どうやら先々代の時に王妃が浮気、今の王は当時のクレアと血が繋がって無いらしい。

 先代のクレアは公爵家に降嫁したものの、先々代の王妃と先代の王にハメられて追放。

 先代からは貴族ですら無いようだが、今の王に命を狙われているようだ。

 牛タン食べたい。


 現状を確認していると、クレアが俺の服の裾を引っ張って見上げていた。マジかわいい。


「わたしはお姫様にならなくていいから、みんなを助けて欲しいの。

 みんなお腹がすいてるのにご飯を分けてくれたりして助けてくれるの!

 わたしは何も出来ないから、お兄ちゃんに助けて欲しいの…」


 途中からうつむき消え入りそうな声でみんなを助けて欲しいとお願いするクレア。



 そうだ、俺脳筋になるんだった。



「よし!それじゃあとりあえずご飯を食べよう!

 助けてくれたみんなも集めてお腹いっぱい食べようね!」


 敵は蹴散らせばいい。涙は拭けばいい。拭いても止まらないならお腹いっぱい食べよう!食育だ!

 なんか違う気がするけど気にすんな!


「うん!」


 目を潤ませて笑顔を見せるクレアはやっぱりかわいかった。

 もう俺、ロリコンで…良くないけど。



 クレアに案内して貰った場所はお世辞にもキレイとは言えないスラム街だった。

 昼なのに薄暗く日もあたらない場所であったが、異空間倉庫から出したバーベキューコンロを置く場所にはなる。

 まずはみんなで満腹だ!


 料理の腕はひとり暮らしの独身男性レベルで、あまりこった物は作れない。

 とりあえず米を大量にお粥にし、野菜や肉を大量に鍋にぶち込んだ後は魔法で加熱して加圧。

 短時間でトロットロのスープを作って、消化に優しいご飯の完成!


 スープは魔法で密封しているため、あたりに漂うのはお米のにおいだけだ。

 意外と嗅ぎ馴れないと美味しそうなにおいって思えないらしいんだよね。

 何やら異臭がしてると集まってきた野次馬も、スープ鍋の圧を抜いた途端に漏れ出た香りにお腹を鳴らして合唱だ。


「お兄ちゃん美味しそう!」


 クレアの誤解を招きかねない発言に、つい目を逸らすと招かざる客もいるようだ。


「よーし!それじゃあみんなに配るよー!」


 そう叫んだ途端、一気に押し寄せてきたので魔法で己型の壁を作る。

 強制的に並ばせて受け取った後横に抜けていく形だ。

 急な魔法にビビりつつも、意図を理解して入り口から並んでいく人達。

 そこにやっぱり守らない人もやってくるわけで……


「おうおうにーちゃん羽振りがいいなぁ!

 ここは一つ俺らに全部よこ「脳筋ぱーんち!」」


 ちゃんとゴミはゴミ箱に、犬は犬小屋に。

 仕返しを心配する人もいるが大丈夫だ、問題ない。ファ○通の攻略本だよ!



 普通に美味しいの普通って何だろうと考えさせられる評価をいただいた食事を終え、全員丸坊主……もとい、全員一気にクリーンの魔法でピカピカにしてやった。



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