第3話 遊び半分
異世界召喚されるようになってから、楽しめなくなった物がある。
それはゲームだ。
シューティングもアクションも鍛え抜かれた動体視力と反応速度の前では難易度が低すぎる。
RPGにいたっては、せっかく現代に戻ってきたのに勇者の真似事なんかしたくないからだ。
……次々潰れるコントローラーと薄くなる財布に嫌気がさしたのもあるけど。
今日は休みだ、何をしようかと昔買ったゲーム機を見たときにそんな事を思い出していた。
そして、シミュレーションなら今でも楽しめるかもと思っている。
……目の前の戦場を眺めながら。
ずいぶん血生臭くなったなと思うけど、今回はちょっと真面目にやろうかな。
召喚されたのは異世界の時間で昨日のことだった。
バイトが休みで、ゲームもどうかなと考えていた時。
魔法陣が足下に広がり、あぁまたかと転移した先は小国の王城だった。
もはや領土のほとんどを隣の帝国に攻め落とされ、王都の近くまで攻め込まれている状況。
王都の背後には険しい山脈があり、その反対側には天然の堀になっている川がある。
その先に農地を兼ねる平地が広がっているのだが、敵はそこで野営しているらしい。
敵は3万5千ほど、こちらはもう都市防衛部隊5千と敗残兵が7千の1万2千だ。
攻めるのには3倍の兵力がいると言っても、こっちは傷病兵も含んでいるのに対し、相手は川や城壁対策に様々な準備を揃えてある。
とりあえずどうせ橋を架けられてしまうのなら上流で川をせき止め、敵が川底を渡っている時に決壊させて流してしまうという案をだした。
……反対意見が多かったけど。
ひょっとしたら帝国に身売りする予定なのかもしれない。
一人殴ったらみんな賛成するようになったからどうでもいいや。
せっかくだからとシミュレーションゲーム感覚で色々準備してみた。
城壁を魔法で強化、ランダムに5~40秒間隔でトゲだらけになるように改造。
城壁の上には太陽光を収束し、レーザー光線を出す砲門を配置。
夜は使えないから、弾数制限はあるけど投石器も配置。
城壁の下には食人植物を多数移植。
地下に芋を作るから、立て籠もっても食糧確保の足しには出来る。
掘り出しは【アポーツ】で芋だけを引き寄せれば安全だよ!
川には時々鉄砲水が流れるように上流にダムを作成。
水の精霊のアトラクション施設を兼ねる事で、水の精霊に防衛もして貰う。
最後に門を地獄につなげて防衛は完璧だね!
……なんかみんな引いてるけど気にしないことにする。
一晩で難攻不落の要塞に変化した都市を前に、中々攻めてこない敵軍。
中々攻めてこない敵軍。
……全然攻めてこない敵軍。
待つのが面倒くさくなったから、とりあえず一人で殴り込みしたら敵の城まで止まらない無双ゲームになってしまったのは秘密。
シミュレーションゲームは向いてないみたいだ。
戦争終了後、地獄の門は解除したけど防衛施設はそのまま残され、どんなに強くても油断せず準備をしっかりするようにとの教訓が後世に伝わったとか伝わってないとか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます