第2話 連続召喚
地球に帰った俺は少しだけスッキリしていた。
魔王でも神でもなく、召喚者の髪を刈ってきたからだろう。
……オヤジ化に気を付けよう。
地球じゃまだ22歳だけど、体感的には40歳近いからな。
でも好き勝手やれたのは初めてだったかもしれない。
今までは目標があって、調べものや修行でずっと気を張っていたけど、もうそんな必要無いしね。
脳筋ゴリラで楽しい異世界ライフも夢じゃないのかもしれない。
でもあくまで俺は地球人。ちゃんと地球の人生を一度は満喫したい。
もう死なないし老けないから、あと60年ぐらいで偽装死しないといけないけど。
まあ難しい事を考えるのはさておき、とりあえずは今日も一日仕事に勉強と頑張りますか!
……玄関のドアを開けるとそこは薄暗い森の中だった。
「あぃええ!?ナンデ!?2日連続とかヤメテヨー!」
後ろでドアが閉まる音と共に振り向くが、もうそこにドアは無く、一本の巨大な木がそびえ立っていた。
直径10メートルを超えるその木は途中に顔のような節が見えるものの、数百メートル上まで枝も無く真っ直ぐに伸びている。
『よくぞ来て下さいました、力ある勇者様よ。
来られて早々不躾でしょうが、私のお願いを聞いて頂けないでしょうか?』
おそらくはこの木が念話かテレパシーか知らないが使っているのだろう。
当然俺はにっこり微笑んでこう答えた。
「は?やだよ。ふざけんな。家に帰せよ。
お前ら異世界の存在は拉致ばっかりしやがって!
権三郎とか田子作とか大五郎とかアーノルドとかボブとかディックとか厳ついイメージの名前だけで、お前の表面を相合い傘だらけにしてやろうか!」
丁度持っていた家の鍵で大木にガリガリと傷を付けていく。
よい子は真似しちゃ駄目だぞ!
『いやいやいやいやちょっと待ってねぇお願いやめてやめて!』
あまりにも必死なので手を止めて話を聞いてやることにした。
……既に相合い傘は12個ほど刻んでいたが。
『ううう……酷いです。
こんな勇者は初めてです。普通木が喋ってたら驚いたり人を探したりするものなのに……』
俺は再びポケットから鍵を取り出した。
『わー!待って待って!すぐ手短に話すから!
昔異世界から来て一度封印された魔神が復活しちゃったので、伝説の金属ヒヒイロカネを探して勇者の剣を作ってもう一度封印して下さい!』
だいぶ端折ってるみたいだが、言いたいことはわかった。
【アポーツ】・【金属精製】・【武器作成】・【武器強化】・【ロックオン】・【投てき】
『ひいいいぃぃぃぃぃ!!!』
大木の枝を切り飛ばしながら飛んでいく勇者の剣
「はいお疲れー。じゃあ帰るねー。」
自前の帰還魔法を発動させる頃には、薄暗かった森の中に木漏れ日が差し込んできた。
『えっ?あれっ?魔神の気配が消えた?』
こうしてこの世界は平和になりましたとさ。
めでたしめでたし。
「さて、今日も一日仕事に勉強と頑張りますか!」
こうして俺は職場に向かうために帰還の門をくぐるのであった。
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