もう俺、ゴリラでいいや。
ぱぷぅ
第1章 瞬殺編
第1話 筋を通せ
そうだ、脳筋になろう。
もう俺、ゴリラでいいや。
そう思ったのは19回目の異世界召喚でやって来た、薄暗く魔法陣だけが光り輝く部屋の中だった。
周囲は槍を持った兵士達がこちらを睨みながら油断なく構えている。
一段高いところにある舞台には、金髪巻髪ドレスのいかにもなお姫様がこちらを見下ろしていた。
「よく来たわね。貴方にはとっとと強くなって魔王を殺して貰うわ。」
何故俺なんだろうか。
最初の召喚の時は必死だった。
剣を覚え魔法を覚え友を失い傷を負い貴族から逃げハニートラップを袖にしながら3年かけて何とか魔王を倒した。
地球に戻ったときには社会的立場を失っていた。
受験を目前にした高校生が3年も行方不明になれば当然のことだろう。
歳は21になり、受験どころか高校は中退扱い。
それでもめでたしめでたしで終わらないのが人生だ。
地球で魔法は使うわけにいかず、鍛えた体が唯一の財産だった。
親の不審な目線から逃げるように日雇いの土木作業で日銭を稼ぎ、卒業認定をとるために勉強を続けた。
俺は人生を諦めなかった。
魔王の強さに比べれば、これくらいの事で折れるほど俺の心は弱くなかった。
順調に人生を取り戻せると思っていた。
2回目の召喚までは。
2回目の異世界はまだアタリだったのだろう。
1回目で鍛えた体と武技は健在だったし、系統は少し違ったが魔法も使えた。
新たな魔法も覚え、剣以外の武器も使えるようになった。
貴族のあしらい方も覚えたし、魔王も1回目より早く、1年半で倒すことが出来た。
そして何より嬉しかったのは、元の時間に戻れる帰還魔法陣だった。
少しばかり勉強内容が飛んでいるが、少し復習すれば取り戻せると思っていた。
帰ってからは現代知識も詰め込んだ。
次の召喚があるかもしれないと備えたことが無駄にならなかったのは、はたして幸せなのか不幸なのか俺には今でもわからない。
気付いたのは11回目の召喚から帰ったときだった。
地球では1年くらいしかたってないはずなのに、俺の顔は30代前半の顔になっていた。
急激に老ける俺をまたもや不審な目で見る両親にいたたまれず、俺は家を出た。
魔物がはびこる異世界の旅に比べれば、日本のホームレスはとても快適だった。
日雇いも続けて住むところも決まり、何とか再び衣食住を取り戻した。
相変わらず異世界に召喚はされていたが、もはや魔王など敵では無い。
と言うか悪ですら無いことも多かった。
俺は若返りの方法を探すことに夢中になった。
幻影魔法も使えるが、大学に入ったときに70歳とかになっていたら、たまったものじゃ無いからだ。
見つからないと判断すると、様々な方法で世界を平和にし、自前の帰還魔法で戻った。
たくさんの異世界知識を身に付け、15回目で不死になった。
そしてついに前回、見た目の年齢も変更できるようになった。
ちなみに魔王は全力のデコピンで頭が爆散した。
不死になったのは行き過ぎだと思うが、これで安心して青春を取り戻せると思っていた。
そこに間髪入れず19回目の召喚だった。
もう心が折れそうだった。
高圧的な姫も過去にはいたが、武器まで向けられているのは初めてだった。
一人は奴隷に使う隷属の首輪まで持っている。
「なあ、名前も知らない姫さんよ。
こう言う時はお願いしますって言うんだぜ?」
「あら、平民ごときが何を言っているのかしら。
平民は大人しく王侯貴族の命令を聞く物よ?」
とりあえずムカついたので、兵士達を殺さないようにぶちのめし、姫を含めて全員丸坊主にして地球へと帰還した。
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