4-③ ドロボウか!

ショートコント、伝説の剣

(ギムコ、剣を抱きかかえながら家で一人待っている。)

ギムコ「この伝説の剣を渡せる英雄様が遂に来てくれる……長々と続く我が家の使命を果たせるときがいよいよ訪れるのだ……ああ、感無量だ……」

(英雄シコロモート(以下、シコロ)、登場)


シコロ「あ、ちーす! 剣もらいに来ましたー!」

ギムコ「チャラいなあ! 英雄なら英雄らしくカッコよく、って何だその格好!」


シコロ「え? おかしいですか? 黒ずくめで茶色の腹巻巻いて、渦巻き布をほっかむりしているだけですけど?」

ギムコ「どう見たってドロボウじゃねえか! 今どきこんな典型的なの見たことないけど!」


シコロ「いやいやいや、俺英雄ですよ! 本物ですから! ドロボウ何かじゃないです! 外見に惑わされないでくださいよ!」

ギムコ「本当か……?」

シコロ「何なら証拠見せますよ、ほら、王様からの証明書」(紙を見せてくる)

ギムコ「ああ、これ本物だな……」


シコロ「まあ盗んだ奴なんですけどね」

ギムコ「ドロボウか!(片腕で頭を叩きながら)盗んだって何だよお前!」


シコロ「すいません、いい間違えました。夜無断で侵入して書類を勝手に持ってきただけです」

ギムコ「ドロボウか!(頭を叩きながら)立派な警察案件じゃねえか!」


シコロ「大丈夫ですよ、警察には持ちだした王様の財布渡しましたし。口止め料として」

ギムコ「ドロボウか!(叩きながら)余計酷いわ! とっ捕まえるぞ!」


シコロ「とにかくそんなことどうでもいいじゃないですか。伝説の剣下さいよー」

ギムコ「ダメダメ。そんな奴には伝説の剣はやれないよ。渡すのは力や体力も必要だけど、人格的にも優れている人じゃなきゃ渡しちゃダメなんだ」


シコロ「それなら俺がぴったりですよ! 闇ルートで売りさばきたいっていう純粋な想いしか持ってませんから!」

ギムコ「ドロボウか!(叩き略)伝説の剣をなんだと思ってんだ!」


シコロ「大切に思ってますよ! 金づるとして」

ギムコ「ドロボウか!(略)そもそも伝説の剣に値がつくか!」


シコロ「大丈夫です、溶かして貴金属類で売りますから」

ギムコ「ドロボウか!(略)」


シコロ「さっきからポカポカポカポカ……! やめてくださいよ、警察呼びますよ!」

ギムコ「お前が呼ぶか! ドロボウのお前が! つうかたたかれるようなことしか言ってねえお前が悪いんだよ! さっきから、ドロボウ関係のことばかり言いやがって!」


シコロ「あ、見てください! あそこに薄汚くなった銅が!」

ギムコ「……?」



シコロ「ドウボロか!(略)」



ギムコ「何が!? ドロボウとドウボロ何の関係が!? しかも何で俺が叩かれなきゃいけねえんだよ!」

シコロ「いや、ついノリで」

ギムコ「ノリで叩かれてたまるかよ! もういいよ! お前にやる伝説の剣なんかねえよ!」


シコロ「そこをなんとか……! この仕事を終えたら恋人に楽をさせられるんです……!」

ギムコ「お前付き合ってるやついんのか!」


シコロ「はい! まあフラれたんですけど」

ギムコ「そこは心をドロボウしとけよ! もういいわ、ありがとうございましたー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る