未来
「おぎゃー!おぎゃー!」
俺の、俺達の子が産まれた。
元気な女の子だ。
名前は、未来。
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あれから1ヶ月して、彼女は目覚めた。
医者は、奇跡だといい、彼女の両親は泣きじゃくり、俺はただ、笑夢を抱き締めた。
奇跡じゃなくて、笑夢の頑張りと、未来さん心臓の頑張りだと思った。
ありがとう。
後遺症が残るかもと言われていたが幸い、笑夢にはなんの後遺症も残らなかった。
両親や俺のことも、しっかり覚えていた。
笑夢が目覚めるまで、俺は毎日病室に通い続けたし、目覚めてからも学校に行けるようになるまで彼女の病室に通った。
彼女はもちろん病室に居たので、俺達は仲良く留年した。
2年生をもう1回、笑夢とやり直した。
今度は俺にも、沢山友達が出来た。
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未来さんのお母さん、希さんの願いは見事に叶えられた。
俺達は、未来が産まれて3週間後、未来を連れて、磯山さん夫妻に会いに行ったみたいだ。
結婚式以来だ。
この時の俺達は、まだ知らないけど。
『未来』と名付けたことも、報告した。
ご両親は、泣いて喜んで、笑夢と未来、それから俺までを抱き締めてくれた。
これからも、時間があるときでいいから会いに来てと言われた。
未来が大人になるまでずっと、会いに行こうと笑夢と話した。
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未来が産まれるより前、もちろん結婚式もした。
純白のドレスに身を包んだ笑夢は、物語の中のヒロインと疑ってしまうくらいに、綺麗だった。
いや、俺の中のヒロインだから、疑うも何も、そうなのかもしれない。
誓いのキスは、少し恥ずかしかったが、病室の中で笑夢のご両親の前ですでにしていたから、まだマシだった。
披露宴では、俺達の過去を、全て語った。
笑夢の友達も、俺の親友も、新しくできた、笑夢と俺の友達も、みんな泣いていた。
もちろん、笑夢の両親と、未来さんのご両親も、俺の親も。
その後は、みんなが披露宴を盛り上げてくれた。
泣いて笑って、最高に楽しい時間だった。
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ちなみに、籍は笑夢の家に入れることにした。
法も改正されて、夫婦別姓でも良くなったが、俺より何倍も、何十倍も辛い経験をして、それを乗り越えてきた彼女の名字を、継ぎたいと思った。
だから、俺達の子供は『豊丘未来』だ。
ここには、俺達、笑夢の両親、俺の親、それから、未来さんのご両親。
いろんな人の思いが詰まっている。
未来にはこれから、楽しいことも、辛いことも、嬉しいことも、悲しいことも、時には死んでしまいたくなることだってあるかも知れない。
でも、俺は、俺達はみんなで協力して、全力で支えていきたいと思う。
「笑夢、生きててくれてありがとう」
不意に未来を抱き締めて微笑んでいる彼女にそう言う。
すると彼女は恥ずかしそうに笑いながらも、「今は違うでしょ」と言った。
俺は理解し、彼女と口を揃えて言う。
「未来、産まれてきてくれてありがとう」
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