第23話 こぐまちゃん、決断する。

「こぐまちゃん、また揺れるといけないから軽くにしときなよ。」

「うん。だいじょうぶ。」

ショーケースに食いついておおぐまちゃんの言うことは聞いていない。

「ボクはカレーライスにするね。」

さっき船長と話したときぜひ食べるように勧められていたブルー・オーシャンのクルーみんなの大好物だ。

「あたしはミックスサンドとミックスジュースね。」

席に座りオーダーを伝えしばらくするとカレーライスとサラダ、ミックスサンドとミックスジュースがテーブルに並んだ。大きく切った人参・きのこ・角切りの牛肉に艶のあるカレーソースが絡んでふっくら炊いたライスにかけられている。見ただけでおいしいとわかる。絶対おかわりをするだろう。サラダはレタスの上にくし形に切ったトマトとスライスしたキュウリが乗ったシンプルなもの。サンドウィッチはハムとチーズのサンドと野菜サンドのコンビネーションで、添えられたパセリの緑が美しい。それと数種の果物と牛乳をミキサーした甘さが控えめのミックスジュース。こぐまちゃんは一口飲んで幸せそうな笑顔を浮かべた。そのあとパセリをつまんでおおぐまちゃんのサラダに乗せた。

「あたしパセリきらいなの。おおぐまちゃん、あげるね。」

「あ、ちゃんと食べないとだめじゃないか。よし、今度パセリを使ったまかないを作ろう。」

「えー、いじわる。そんなのたべない。おじさんにいいつけるもん。このジュースだってあげないからね。」

「うーん。それはこまったなあ・・・。」

ワイワイ言いながら2頭は食事を楽しんだ。

その後しばらくして、真面目な顔をしてこぐまちゃんはポツリポツリと話しだした。

「あのね、あたしね、おとうさんとくらすことにする。たいいんすればまたひとりぼっちでかわいそうなんだもん。でもおおぐまちゃんのへやのすぐちかくがいい。おじさんのみせでもはたらくよ。おばさんやさしくて、おかあさんみたいにおもってるよ。あたしはみんなのこどもになりたいの。それでおおきくなったら・・・なんでもない。」

顔を赤くしてうつむいてしまった。おおぐまちゃんはその意味がわからず首をかしげるだけだった。

「仲良く暮らせるようにボクも手伝うよ。こぐまちゃんはボクが守る。」

「うん、ありがとう。おおぐまちゃん。」

おおぐまちゃん胸に抱きつき泣き出した。


結局おおぐまちゃんはカレーライスを三杯も食べてしまった。

「ふーん、あたしにはかるくにしときなっていったくせに。しーらない。」

「だって美味しかったんだもん。料理くまとしての研究のためさ。」

自分でも調子に乗ってしまったことを反省し、膨らんだお腹を擦りながら船室に帰った。

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おおぐまちゃんとこぐまちゃん 瀬賀部 普 @shinsegawa

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