第21話 おおぐまちゃんとこぐまちゃん、帰国の途に着く

おおぐまちゃん達の乗った車が港のターミナルビルの前に着くと、程なくくまぞうを載せた救急車が到着した。ストレッチャーが降ろされ、点滴を受けているくまぞうが現れた。救急車の後ろからついてきた黒い車には医師と看護師らしきくまが降りてきて、救急車に同乗していた看護師と話しくまぞうの様子を確認してターミナルビルに入っていった。おおぐまちゃんとこぐまちゃんも車から荷物を降ろした。

「ベアードさん、ありがとうございました。今度また来るときはゆっくり過ごせるよにしたいですね。」

「そうそう、みたいおみせがいっぱいあるの。ベアードさんのおすすめのおみせいをあんないしてね。はい、これあげる。」

「あ、『はちみつ』のクッキーじゃないですか!私これ好きなんですよね。おいしいケーキ屋とかたくさん知ってますので今度案内させてくださいよ!。」

「実は甘党なんですね。」

「ええ、こう見えてお酒は呑めないんですよ。」

「クマランドのおいしいおかしいっぱいもってくるから、まっててね。おおぐまちゃんもいっぱいつくってね。」

「お菓子作りも勉強しておくよ。じゃあベアードさんありがとう。」

3頭は抱き合い笑顔で別れた。


くまぞうはすでに船に載せられたようで、空のストレッチャーが船から降ろされている。おおぐまちゃんとこぐまちゃんは出国手続きを済ませ船に乗った。来るときに乗ったのと同じ船だ。

「おおぐまさん、こぐまちゃんこんにちは。クマロニアはいかがでしたか?」

きょぐま船長が話しかけてきた。

「スケジュールがきつくてあまり見て回ってませんけど、すごくいいところですね。警備の方と友達になったので、今度はゆっくり来ることにします。」

「いい国なんですよ、ここは。クマランドも仲良くやってほしいものですね。」

「まったくですよ。あ、船長。くまぞうさんなんですが、どちらにいらっしゃいますか?」

「医務室におられます。ご案内しましょうか?」

船長に案内され2頭は船の医務室にやってきた。

医師が1頭、看護師が2頭がくまぞうについていた。

こぐまちゃんがいるのに気がついた看護師が医師に声をかけると、医師が手招きをした。

「今は落ち着いておられますよ。このまま静かに運べればいいんですがね。船長はまあ大丈夫だろうとのことですけど。そうだお嬢さん、話されますか?」

こぐまちゃんがこくこく頷いた。

「おとうさん、だいじょうぶ?」

「ああ、こぐま。大丈夫だよ。お医者さんもいるから安心だよ。おまえが船酔のほうが心配さ。ああおおぐまさん、ちょっと渡したいものがあるんだ。」

くまぞうが手帳からメモを取り出し、おおぐまちゃんに渡した。

「俺の乗っていた船の仲間の連絡先です。そいつらならくまおの居場所はわかるはずです。連絡してみてください。」

「ありがとうございます。じゃあ早速連絡してみます。」

出港まで30分ほどあるので、こぐまちゃんを医務室に残し電話を掛けるため甲板に出た。くまきちという男と連絡が取れた。くまぞうが帰国するとのニュースを聞いて船の仲間を集めて皆で出迎えてくれるという。くまおにも絶対に来るように言ってあるそうだ。結果を早く伝えようとおおぐまちゃんは踊るように医務室に向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る