第19話 おおぐまちゃん、眠れなくなる

外に出ると涼しい風が吹いていた。明日この地を離れると思うとなんだか少し寂しい。ふたりで手をつないで歩道を歩いて行くと、シックな店構えの『はちみつ』という洋菓子店に入ってみると2頭は甘いお菓子の香りに包まれた。

「わぁぁおいしそうなにおい!」

「ホントだ。甘いいい香りがするね。」

「召し上がりますか?」

丸いクッキーの試食をさせてもらった。

「おいしー!」

揃って声をあげた。

「これはくまたろうの。これっておじさんがすきそう。これとあちはがっこうのともだちの。」

いろいろなクッキーをおおぐまちゃんに渡し、レジで借りたカゴがいっぱいになった。ちなみにおじさんとはおおぐまちゃんが勤めている店のオーナーのことだ。クマランドで待っているくま達の顔を思い浮かべながら幸せな気分に浸り、お菓子をたくさん買った。


夕食をとってホテルに戻り、帰り支度をし始めた。

「こぐまちゃん、明日の服の用意をしてね。おみやげとかはスーツケースにいれちゃうから。」

「ちょっとまって。あたしたちのぶんをださないと。はい、これおおぐまちゃんの。これあたしの。」

風呂上がりあたたかいミルクと一緒にクッキーを食べた。こぐまちゃんはずいぶん眠そうだ。

「残りは明日船で食べよう。ほら、ポシェットにしまって。歯磨きもするんだよ。」

「うるさいなー。なによ、やさしてくれてもいいのに。」

ぶつぶつと言いながら洗面所に向かい歯をみがいた。


こぐまちゃんはベッドでおおぐまちゃんの懐に潜り込むとすぐに寝てしまった。

明日クマランドに帰ることができるが、くまぞうの様態や今後こぐまちゃんをどうやって守って行くか。おおぐまちゃんはいろいろなことを考えると眠れなくなってしまった。そっとベッドから起きソファに腰を降ろしため息をついた。

「どんなことがあってもこの娘は守ってみせる。」

窓の外を見ると、月が青白い光で静かに街を照らしていた。

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