第18話 おおぐまちゃん、涙が出そうになる
ロビーに着くとベアードが神妙な顔で立っていた。
「おぐまさん、ちょっとお話したいことがあるんですが・・・」
穏やかな笑顔を浮かべた。
「こぐまちゃん、ベアードさんとちょっとお話があるからソファに座っててくれるかな?」
嫌な空気を察してその場からこぐまちゃんを引き離すと、くまぞうの担当医からの手紙が渡された。そこにはクマロニア政府から口止めされていたがくまぞうの本当の病状が記されていた。事故で負った傷はそれほど深刻なものではなかったが、病院で発生した院内感染によって危険な状態まで追い込まれた。一時的に収まって入るが、特に心臓が弱っている。今のくまぞうの様態では環境が変化させることは一番危ういことらしい。クマロニアとしてはクマランドに帰って治ればクマロニアでの治療のおかげとできるし、急変しても本人が帰りたいと無理を言ったためやむなく帰したというシナリオだ。貿易での関係改善は成功したことで、やっかいな患者を人質としておく必要はない。
「先生があまりにも深刻な表情で渡されたので、失礼とは思いましたが先に拝見いたしました。」
「でも船の中で何かあったらどうするんですか!」
「医療スタッフは同行します。大丈夫ですよ。」
ベアードはまた穏やかな笑顔を浮かべた。
おおぐまちゃんとこぐまちゃんはホテルに戻ったが、ふたりとも黙ったままお茶をのんでいた。こぐまちゃんは自分の気持が少しは伝わったかと上目遣いで見ていたが、ずいぶんイライラした様子である。
「こんなおおぐまちゃんみたことがない・・・」
こぐまちゃんに不安そうな顔を見ると、おおぐまちゃんはハッとしてにっこり笑ってみせた。
「お出かけでもしようか。」
「くまたろうとか、がっこうのおともだちにおみやげをかいたいの。」
「そうだね。どんなのにする?」
「どうしよう、おかしかなぁ。」
楽しそうにしているこぐまちゃんの姿を見ておおぐまちゃんは涙が出そうになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます