第17話 こぐまちゃん、寂しくなる

エレベーターを降り、ナースステーションの向かうと看護師がすぐ病室に案内した。昨日は薄暗かった病室が陽の光が降り注いでいる。ベッドの傍らに医師ともう1頭スーツを着たくまが立っていた。濃い色の体毛でひと目でクマランドのくまだとわかった。

「おおぐまさんですか?私は政府から派遣された交渉官のくろくまといいます。今回の和解成立によって、くまぞうさんの身柄はクマランドに引き渡されることになりました。明日の午後クマランドに向かう船であなた方とご一緒にお帰りいただくことになります。」

医師はまだ治療には時間がかかりそうだけれど、移動させるのは問題ないだろうという見立てであった。

「こぐまちゃん、良かったね。お父さんと一緒に帰れるんだよ!」

「うん。そうだね・・・。」

嬉しいはずなのに、こぐまちゃんは複雑そうな顔をしている。

「ああ・・・やっと帰れるんだね。やっとこぐまと暮らせるんだね。」

くまぞうはこぐまちゃんの手をとり涙を浮かべていた。


「明日の12時にホテルにお迎えを向かわせます。くまぞうさんの退院手続は私達がして港に向かいますので、ターミナルでお会いしましょう。」

くろくまが明日の予定を伝えた。

「よろしくお願いします。」

おおぐまちゃんとこぐまちゃんはくろくまにおじぎをして病室を後にした。

エレベーターの中でこぐまちゃんはおおぐまちゃんの手を引き、小声で話しだした。

「おとうさんといっしょにかえれるのはうれしいけど、おおぐまちゃんとはいっしょにすめなくなるの?」

「・・・お父さんが元気になって働けるようになれば、そうなるだろうね。」

「おとうさんのことなにもおぼえてないのに、なかよくできるかな。」

「うーん・・・最初はちょっと難しかもしれないけど、ボクとも仲良くなれたんだからきっと大丈夫だよ。」

「うん、がんばる。」

こぐまちゃんは寂しそうに笑った。

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