第16話 こぐまちゃん、少し震える
朝9時にロビーに降りると、ベアードが花束を2つ持っておおぐまちゃんたちを待っていた。
「おはようございます。おおぐまさん、こぐまちゃん。」
「おはようございます。花束受け取っておいてくれたんですね。」
「おおぐまさん、今日は車で病院までご案内しますが、病室にはついて行きません。監視対象ではなくなりましたのでね。その間、私は母の病室に行かせてもらうように上司に許可を貰いました。」
「おおっやったじゃないですか!」
「ええ、実は会うのが楽しみでよく眠れなかったんですよ。おはずかしい。」
「よかったね、ベアードさん。おかあさんはやくよくなるといいね。」
「ありがとう、あなた方のおかげです。それじゃ車を回してきますね。」
ベアードは花束をおおぐまちゃんに預け、嬉しそうに駐車場に向かった。
病院までの道は昨日に比べ、ずいぶん混み合っていた。
「今日は混んでいますね。遅刻しないでしょうか?」
おおぐまちゃんがベアードに尋ねた。
「やっぱり昨日の発表の影響でしょう。クマランドからの輸入が再開されるのでみんな一斉に動き出したって感じですね。ここからなら充分間に合いますよ、ご安心ください。」
車窓から見えるくま達の顔は、なんとなく嬉しそうに見える。
車は時間どおり病院に到着した。ベアードが受付で面会手続をしてゲストカードを2頭に渡した。
「面会時間は30分です。ナースステーションに声をかけていただければ看護師がご案内します。帰りはこのロビーで待ちしています。」
病室に向かうベアードを見送ると、こぐまちゃんは緊張したようにおおぐまちゃんの手を握った。
「きのうみたいになっちゃったらどうしよう・・・。」
「大丈夫。おとうさんにはお医者さんとか看護師さんもいるし、こぐまちゃんにはボクがついてる。」
ほっとした面持ちで、こぐまちゃんはおおぐまちゃんを見上げた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
病棟に向かうエレベーターに中でこぐまちゃんは自分に言い聞かせていた。昨日のくまぞうの様子を思い出したのであろう、少し震えている。
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