第13話 おおぐまちゃんとこぐまちゃん、買い物に行く

ホテルにもどってしばらくすると、翌日の予定の連絡があった。くまぞうの様態は安定したとのことで当初の予定どおり朝10時から30分間の面会が許された。それと監視付きではあるがホテルの近所での外出も許可された。こぐまちゃんに伝えると興奮した様子で

「あしたもいっていいの?おとうさんだいじょうぶかな。あんなにくるしそうだったけれどほんとにだいじょうぶ?」

「お医者さんが大丈夫っていてるらしいよ。でもあんまり無理させないようにしようね。」

「あしたおはなをもっていこうとおもうの。かってもらっていい?」

「もちろんさ。どんなお花いいかな?」

「んーとね。わかんない。」

「まあ見てから決めようか。」

「うん。それとね・・・。」

「それと?」

「ネックレスがみたいの。おおぐまちゃんのみたいなの。」

「指輪でなくていいの?」

「うっ・・・ぷん!いじわる!」

うっかり調子に乗って怒らせてしまった。

「・・・じゃあとりあえず連絡するね。しばらく時間がかかるだろうからテレビでも観てよっか。」

30分ほど待つと部屋に電話が鳴り、30分後にロビーに降りてくるようにいわれた。クマロニアのテレビ番組はあまり面白くないらしく、こぐまちゃんはベッドに寝そべって絵を描いていた。花を貰ってニコニコしているくまぞうの姿だった。


ロビーの降りると例の黒いスーツを着たくまが待っていた。子供連れのスパイなんかいるはずもないのによっぽどクマランドのくまは警戒されているらしい。

外に出るとあたりは賑やかだ。クマロニアのくま達はクマランドのくまよりも体毛の色が薄い。金色を帯びた茶色のような感じである。別の土地のくまであることはすぐわかるので、すれ違う度に振り返られる。あたりの店は盛況で、熊ランドから見ていたイメージとはまるで違う。明るい空気に触れ、少し開放された感じになった。黒スーツのくまから入っていい店、だめな店の指示が飛んでくる。

面白くなくなったこぐまちゃんは歩道を走り出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る