第14話 こぐまちゃん、お花を買う

走り出したこぐまちゃんにびっくりしておおぐまちゃんと黒スーツのくまはあわててこぐまちゃんを追いかけ回した。

「きゃーーっここまでおいでー!」

クマロニアに来て以来ストレスが溜まっていたのだろう、追いかけっこを楽しんでいる。通りがかりのクマ達は嬉しそうな顔をして道を空けてた。すると一見の店の前でピタリと立ち止まった。

「このおみせ、はいっていい?」

はあはあ息を切らせながら2頭が追いついた。

「急に走り出したら危ないじゃないですか!花屋?いいですよ。ごゆっくり。」

黒いスーツのくまが答えると、こぐまちゃんはぱぁっとした明るい笑顔をして店の中に入っていった。


店には色とりどりの花が置いてあった。なかにはクマランドにはない花もたくさんあった。店の中を10分ほど見て回り、じっと花を見たり匂いを嗅いだりした。

「おおぐまちゃん、このおはなすごくきれい。」

ワンピースとおそろいのピンクのカーネーションであった。

「これを持っていきたいのかい?」

「うん、これがいい。」

「花束にしてもらおうか?」

こぐまちゃんは嬉しそうにこくこくうなずいた。

店員に頼んだところ、明日の朝花束を作りホテルまで届けてくれるという。店を出ると黒いスーツのくまが

「お気に入りの花は見つかりましたか?」

「ええ、明日の朝ホテルに届けてくれるそうです。」

「私の母も同じ病院に入院中でしてね。忙しくてなかなか見舞いに行っていないんですよ。」

「じゃあ明日花を届けてもらえばいいじゃないですか。同じ病院に行くんですし。」

「でも持ち場を離れるわけには・・・。」

「看護師さんに頼んで届けてもらえばいいじゃないですか。メッセージを添えておけば、お母さんもわかっていただけますよ。」

おおくまちゃんが勧めると、厳しい顔をしていた黒いスーツのくまの顔が緩み、嬉しそうに花を選んでいた。

「あなたがたには助けられました。ありがとうございます。」

彼の名前は『ベアード』という。意外に話しやすそうなくまだった。


この後彼とは長いお付き合いとなる。

まあそれは別のお話で。

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