第12話 おおぐまちゃん、わくわくする

「あのね、おとうさん。おとうさんのことはあんまりおぼえてないの。ごめんなさい。でもおおぐまちゃんといっしょうけんめいさがしたのよ。」

「くまお、世話をかけてしまったな。」

「くまおさんは他の港に移られてしまって、こぐまちゃんは施設に預けられていたんです。」

「あなたは・・・?」

不思議そうにくまぞうがいった。

「おおぐまといいます。クマランドの港でひとりでいたこぐまちゃんと出会いまして、いろいろあって一緒にあなたを探してたんですよ。」

こぐまちゃんは申し訳なさそうに

「あのね、ひとりでハウスをぬけだしたの。それかられっしゃにのってみなとでひとりぼっちでいたら、おおぐまちゃんがたすけてくれたの。」

「おお、大冒険だな。でもハウスのくまたちには迷惑をかけたんだろ。ちゃんと謝るんだよ。それで今はどこに住んでるんだい?」

「おおぐまちゃんといっしょ。がっこうにもいってるよ。」

「よかったなこぐま。いいくまに助けられたんだな。」

「うん。すごくいいくまだよ。だいすきなの。」

恥ずかしそうにこぐまちゃんが言った。

「おおぐまさん、あなたにはなんと礼をいえばわからないくらいだ。ありがとう。娘にはこのまま会えず、ここで死んでしまうのかと思っていました。」

「いえ、まだ大丈夫ですよ。」

「そのネックレスはくまおが着けていたものにそっくりなので、てっきりあなたがくまおと思いました。」

「こちらに来るときに乗った船の船長にクマロニアのものだと聞きました。亡くなった父から貰ったものなんですが、父は山奥にずっと住んでんいたのでクマロニアには来たことがないはずなんですが。それが気になっていて・・・。」

「あなたはくまおによく似ている。ひょっとしてあなたの親戚では?」

それを聞いたとき、おおぐまちゃんはあることを思い出した。

おおぐまちゃんが生まれる前の話だが、おおぐまちゃんのお父さんの『くまじ』にはお兄さんがいた。名前は覚えていないが、船乗りになりたいといい、おじいちゃんと大喧嘩になった。住んでいた村では山に生まれたくまは山のために働くという習わしで出ていくのなら親子の縁を切るとまで言われたが、船乗りになる憧れは捨てきれず村を出ていったそうだ。それ以来我が家ではその話をするのはタブーだったが、お父さんのくまじは教えてくれてくれていたのだ。

くまぞうが苦しそうになったので今日の面会は中止となり。3日間予定されていた面会も様子を見てながらということに変更された。

「くまおさんが、ぼくのおじさん?」

おおぐまちゃんはワクワクした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る