第6話 おおぐまちゃん、説得する

朝7時ごろおおぐまちゃんが目を覚ますと、懐からこぐまちゃんがいなくなっていた。飛び起きると窓辺にぼんやりとして座り、空を眺めていた。

「おはようこぐまちゃん。早起きだね。」

「ここはどこ?」

「ボクが住んでる部屋だよ。」

と答えると、少し不安そうな表情をした。

「今日グレイスハウスに連絡するから安心して。」

というと彼女はがっくりとうなだれて、

「イヤ。かえりたくないの。」

「イジメられたのかい?」

「うううん・・・みんなやさしいよ。なかよくしてた。でもむかしのことおもいだしちゃうとどうしてもいられなくなるの。」

どうやら家出したのは今回だけではなく、何度も連れ戻されてやっと今回たどり着けたというわけだ。

「だれかにあわなきゃいけないの。」

「だれか?」

「だれかはわからないの。ねぇおおぐまちゃん、どうしたらいいとおもう?」

「だれだか判らなくて探すのは難しいね。」

「でもね、ここにいればおもいだせるかもしれないの。」

おおぐまちゃんはグレイスハウスに連絡をとった。案の定あちらでは騒ぎになっていた。そこでおおぐまちゃんは提案してみた。

「彼女を今連れ戻してもまた同じことをすると思います。ですので気の済むまでいさせて思い出に出てくるくまを探したほうがいいんじゃないでしょうか。ボクもこの街に来たばかりなので、力になれるかどうかはわかりませんが、彼女の手伝いをしたいんです。ボクも早くに両親を亡くしたので彼女の気持は良くわかります。ボクが責任をもってお預かりします。なんとかお願いします。」

あちらも相当手を焼いていたようで、そういただければありがたいということとなった。まったく勢いで大変なこととなった。今日からこぐまちゃんと二人暮らしだ。

電話切った後こぐまちゃんが抱きついてきた。

「ありがとう、おおぐまちゃん。だいすき。」

こぐまちゃんの栗色の毛をなでた。

「なんか昔こんなことが無かったっけ?」

おおぐまちゃんは懐かしい感じがした。まだ子供だったころ両親以外の誰かに抱きしめられたときのように。

「あれは誰だっけ?」

おおぐまちゃんも良くは覚えていなかった。

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