第14話 サナンダ記:日給8千円

サナンダ記

    

   日給8千円   乙音メイ

 

  大学の視聴覚室内にまで付いてきた「護衛」は、勉強が苦手なのか、

「あ~~……」

と、を上げ、机に突っ伏しながら騒いでいる。そもそもここの教室には、ID埋め込みの学生証がないと地下鉄の入退場と同様で入れない。そのようなシステムである。護衛するために、入学までしたのか? 

「それなら一緒に勉学に励めばよさそうなものを」

と、私は思う。また、もし飽きても、自分の受講科目以外の講義のビデオも、受付で借りることができるし、隣室には図書室もある。部屋の退出も任意で、時間枠に縛られることもない。自主的に勉学をしたい人々のための教室であり、私として、天使ながら嫌な気持ちがしないでもない。


 メアリー以外にも二十数人はいたであろう。そのうちの半分は護衛であるが、だとしても、その他の方々からは顰蹙を買ったに違いない。

「8千円のためなら、自分の「真心」も捨てるのか」


 真摯な気持ちで学びを楽しんでいたメアリーも、あれは自分に付いて来た者、と思い始めて気を揉んでいる。だが、しかしまだ護衛のうちの出来の悪い一人だと思っている。

 

 帰宅して、そんな護衛の振る舞いを怒り、悲しんだ。数日前の自宅最寄り駅での護衛の態度にも思いが至り、合わせて泣いていた。  考えてみると、メアリーはいつ知るようになったのか? 職場だけのことでなく、自宅でも盗聴されていることを。職場でのおぞましさは、この後もっと深まっていった。





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