第12話 サナンダ記:半年スパンの契約
サナンダ記
半年スパンの契約 乙音メイ
闇のやり方の一つに、ある程度の空の器を用意し、個々の、それに対する反応を溜めていくというのがある。恐れのエネルギーは殊更ごちそうのようであるのだが、プラスマイナス、いろいろある中から組織のために時宜にかなったものを吸収していく。
初めは、メアリーの光のパワーを利用してやれ、あるいは光のパワーを低く見積もっていたのかもしれない。だが、途中から思わぬ脅威と考えるようになった。妻には、顕在的、潜在的に目覚ましいものがあるからだ。
わずかな数の正社員以外はすべて、半年毎に再雇用する臨時の扱いである。契約した半年が終るころ、希望の労働時間や部署などを記入するシートが配られる。様々な意見を書く欄もあり、メアリーは毎回そこに、小さな文字でびっしりと書き込みをしてから提出していた。会社のみならず、この惑星の永続に繋がる展望を綴っているのだ。考え方は常にダイナミックだ。そのせいで、新しい子会社が出来たほどである。
また、昇給にもつながる半年に一度の実技と筆記の認定試験にも挑み、ストレートに受かっていった。その際に合格者は、一連の認定試験を受講してのレポートを提出するのだが、その用紙には、何やら思わせぶりな「わたしは です」という、書き出しが印刷されている感想や決意などを書く欄が設けられている。まあこれも一連の、空の器である。
振り返ると、妻は、派遣会社からの2か月間の短期アルバイトでI.N.Oに関わるようになった。アルバイトの延長に次ぐ延長で、1年半くらい経過した頃、派遣会社を通すよりもコストのかからない直接雇用に変更になり、メアリーは喜んで、I.N.Oの半年スパンの臨時雇用者になった。メアリーは社訓が気に入っていたのだ。また、常々受けてみたいと思っていた認定試験の受験資格もできた、と喜んだ。
半年ごとの試験も順調に進み、3回目だったか、とうとう書いたのだ。「わたしは です」の空欄に、ズバリとある言葉を妻は書いた。それで、I.N.O側は、光に乗っ取られる!この会社もこの星も!そのように思ったのかもしれない。体よく利用していたが、この時から、侮れない相手として憎まれ始めたのかもしれない。3.11の大地震が日本で起こる前だった。惑星規模で、光が目覚ましく優勢になった頃のことである。敵は恐れをなしている。
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