☆5夜目「引力?圧力!」 

   「引力?圧力!」   乙音メイ 



 この太陽系に月は二つある。

二つ目の月は、すでに慣れ親しんでいる月の真裏にある。裏の月は、強く反発するエネルギーを発している。表の月はこの惑星をかばってくれている。太陽もその軽いエネルギー光線を贈り、負担を軽くしてくれている。満月と新月のときの星の整列を考えれば分かる。


 一匹狼でいることが、裏の月の自然な姿なのかもしれない。けれども、反面、寂しん坊的でもあり、煌めく光や色を吸収している。黒い色をした黒子の月なのである。そんな様子なのだ。これまで「重力」と言われてきたものは、黒子の月からの反発エネルギーを、誤って解釈してきたものだ。


 表舞台の月に着陸したいときは、まず月の高等評議会に連絡をし、そして、表舞台の月の観客席側に行くならばまだいいが、舞台裏に行くには、もちろん磁力シールド装備の船でなければ、黒子の月からの反発力で、舞台裏の地層に叩きつけられてしまう。



 この惑星以外の、より高度に発達した星々では、もうずうっと前から磁力シールドの対策がなされている。

 表舞台の月や金星などの人々は、圧力を流すドーム型の建造物群の中で、活力に満ちたゲル状の土壌で野菜、果物、ナッツ類などの栄養豊富な、しかも味の良い作物を育て、ヴィーガン“VEGAN”の快適な暮らしを楽しんでいる。何百年経ようと、二十代にしか見えない容貌は、軽い周波数と食習慣による血液の美しさと、抱いている深淵な愛によるものだ。

 この惑星でも、太古の昔は土壌がよかったため(菜食)、とても長生きしていたと聞く。



 宇宙に存在するすべてのものには意識がある。それぞれ、恒星であっても惑星であっても衛星であっても、意識ある存在「意識体」なのだ。だから、その寂しん坊的印象を伴う黒い月も尊重されている。いずれ、「愛」で頑なさが和らぎ、重力と勘違いされるほどの反発力も軽くなるかもしれない。


 思いのほか重要な事を伝えることとなった。2017年6月15日午後から、この惑星でも黒い月からの反発力が弱まる措置がなされた(天使たちにより)。そのため、満月新月の時のような浮力をもうすでに感じている。この惑星の自転は変わらないので、海水の流れはあるが、潮力は張力として上昇したままである。

 (16日に世間がひっそりしていたような。もう何年もテレビラジオを視聴しないので、みんな心配してなければいいけど…)海水も水の循環をしているので、溢れすぎることはない。満月新月、いつも平和である。


 この惑星で「引力」と思っていた「圧力」は弱まった。


 そろそろ、車から車輪を外して、磁力で移動することを考えませんか。YAMAHAさま!何となく脳裏にこの企業名が……。




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