第4話 クロームとドクターシュー

「うわわわわわわーーーーーーたすけてーーーはなちゃーん」


 ウマタロウは、きがつくとくらいへやのなかにいました。

 ざぶとんがなんまいかかさなっているところのうえにおちたようです。

 けがはないようです。でもちょっとからだがよごれちゃったけど。


「だいじょうぶかの?」

 だれかがこえをかけてきました。ずいぶんおじいちゃんのネコです。

「いたた…だいじょうぶだよ。ここはどこ?ぼく、はなちゃんのところにいかなくっちゃ。」

「まあ、まちなさい。おまえさん、なんであんなところからおちてきたんじゃ。おちたところがここじゃなけりゃ、とっくにしんでたぞ」


 ネコのおじいさんがゆびさすほうをみると、かなりうえのほうにひかりがみえます。


「ぼく、バイナリけんけんぱをまちがえちゃったんだ。だからおちたんだよ。あおのやかたにしろのバイナリめがねをとどけなきゃいけないのに!はなちゃん、きっとないてるだろうな…」

 ウマタロウはこれまでのことを、ネコのおじいさんにはなしました。


 ふむふむときいていたネコのおじいさんは、つくえのうえをゆびさして、いいました。

「おまえさんのもってきたバイナリめがねはこれか?」

「うん!それだよ!!はなちゃんがママからもらったやつ!あれ?なんでここにあるの??はなちゃんのポケットにはいってたはずなのに!!!」

「このめがね、おまえさんがおちてくるときにいっしょにおちてきたんじゃ。でもすこし、おちてたときにこわれてしまっておる。なおしてあげてもいいが…タダってわけにはのう。」

「ええーーーーぼく、おかねもってないよ」

「ほら、おまえさんのそこにあるじゃろ、それ。」

「え?」

 ウマタロウがネコのおじいさんのゆびさすほうをみると、そこにはあのネコじゃらしステッキがありました。


「これ、ネコのおばあさんにもらったやつだけど、これほしいの?」

 ウマタロウがネコじゃらしステッキをさしだすと、うれしそうにおじいさんはうけとりました。

「わしのなまえは、クロームじゃ。このバイナリめがねをしゅうりしてしんぜよう。にゃっほっほーうでがなるのう。」


 クロームは、レンズをとりだしてきかいにとりつけると、うれしそうにつくえにむかいました。

「ねえ、クローム。かいとうブルーってなんなの?あおのやかたにはゆうめいなかがくしゃがすんでたって…、でもいまはオバケがでるって…」

「わっはっは。オバケなどはうそじゃ。ブルーがこのやかたにひとをよせつけないようにするためにまいたうわさにすぎぬ。むかしはの…」


 クロームのはなしによると、あおのやかたにはゆうめいなかがくしゃのドクターシューがすんでいて、いろいろなきかいをつくったり、やくにたつはつめいなどをしていたのだそうだ。

 ドクターシューはやさしい人だったし、いつもむらのためにいろんなことをしてくれたから、村人むらびとからとてもしたわれていたのだそうだ。

 ドクターシューにはおくさんも子どもがいなかった。子どもがいないかわりに、クロームのようなきんじょの子どもたちにたくさんお勉強べんきょうをおしえてくれたのだそうだ。クロームたちがすむ村はまずしくて、みんな学校がっこうにかよえなかった。学校にかよえないかわりに、このあおのやかたでドクターシューからいろんなことをおそわった。こくご、さんすう、りか、しゃかい、・・・それからがいこくのことばも!!

 「じゃから、ワシも学校にいってにゃいのに、がいこくごがはなせるんじゃにゃ。」


 ドクターシューのすむあおのやかたには、ときどきりっぱなくるまがとまっていた。そのくるまがきているときは、あおのやかたにははいってはいけない、とドクターシューからいわれていた。くるまにはなんのマークもついていなかったけれども、なんとなくそのくるまは、おうさまのすむおしろのくるまだろう…とクロームはおもっていた。

 なぜって?

 だって、こっそりとそこからおりてくるきれいなおんなの人をみたことがあるから。


「いまにしておもえばだにゃ、あのおんなの人は、アセンブラひめだったんじゃにゃいかとおもうんだにゃ。」

「アセンブラひめ?」

「にゃんじゃおぬし、アセンブラひめをしらんのか」

「だって、ぼく、ちがうところから0と1のうずにまきこまれて、ハナちゃんといっしょにやってきたんだもん」

「!!!!にゃーーーんと!!!おぬしら、むこうのせかいのものにゃったのか!!!」


 アセンブラひめとは、まえの王さまとおうひさまのあいだにうまれた、プリンセスなのだそうだ。

「プリンセスはビットひめじゃないの?」

「ビットひめは、いまの王さま、アセンブラひめのおにいさんのむすめじゃ。そうじゃな、おばさんになるにゃ。」


 クロームがいうには、もともとはドクターシューはアセンブラひめのかていきょうしをしていたんだそうだ。ドクターシューがあおのやかたからおしろまでいっておべんきょうをおしえることがおおかったけれども、ときどきアセンブラひめが“おしのび”であおのやかたにきていたこともあったらしい。

 アセンブラひめとドクターシューは、そのうちなかよくなり、“こいびと”になったのだそうだ。

“こいびと”になってから、“けっこん”すると、“あかちゃん”がうまれるって、ハナちゃんのママからきいたことがある。


「じゃあ、アセンブラひめとドクターシューは“けっこん”したの?」

「…いや…けっこんできなかったんだにゃ」

 クロームはバイナリめがねをしゅうりするてをとめずにこたえた。


「ドクターシューはとてもあたまのいい人だったけれども、あいてはプリンセスだからにゃあ…アセンブラひめはがいこくの王子おうじさまとの“けっこん”がきまっておったんじゃ…」

「…かわいそうににゃ…、アセンブラひめは、なくなくドクターシューとわかれて、がいこくの王子さまのところにおよめにいったんじゃよ。でもにゃあ・・・まさかあんなことににゃあ・・・」


 ここ、バイナリおうこくのとなりにあるモジラーこくの王子とけっこんするはずだったアセンブラひめは、しかしモジラーこくにいくまでのみちで、とつぜんゆくえふめいになった。とちゅうのホテルで、すがたをけしてしまったのだ。

 くにをあげてさがしたのだけどみつからず、それがげんいんで、モジラーこくとはけんかしたじょうたいになってしまったのだそう。


「じゃあ、アセンブラひめはいまどこにいるのかだれもしらないの?」

「うむ。だれにもわからんにゃ。」

「ドクターシューもしらないの?」

「ドクターシューがひめをさらったんじゃないか?っておしろのへいたいがドクターシューをつかまえてだな、5ねんかん、ろうやにいれたんじゃ!!!」

「ええええええーーー」

「でもけっきょく、ドクターシューはなにもしらないことがわかって、ろうやからだされたんじゃが・・・あおのやかたにかえってきてから、ドクターシューはむかしのようにやさしいおにいさんじゃなくなってしまってにゃ、だれともはなさず、いえからもでなくて・・・」


「かいとうブルーは、ドクターシューなの?」

「ちがうにゃ。かいとうブルーは子どもじゃからにゃ。」

「ドクターシューの子どもなの?」

「むむむ・・・それがよくわからんのにゃよ。ドクターシューにはおくさんも子どももいにゃいからにゃ。でも、あるときからあおのやかたで子どものこえがするようににゃってだな・・・それがかいとうブルーなんじゃ・・・・


 ・・・ほれ、なおったにゃ。」


 クロームが、てにしたしろいバイナリめがねをウマタロウにかけてくれた。

 あの、ふしぎなすうじとえがみててきた…

「わーいなおったー」

「にゃんじゃ、おまえさん、目grepメグレップができるのかにゃ、むこうのせかいのじゅうにんじゃというのにおりこうさんじゃの。」

「なにそれ?ハナちゃんはときどきわかったーっていっているけどぼくはよくわかんないよ」

「・・・まあそうじゃろうて。このせかいのじゅうにんじゃなきゃ、これはわかるまいて・・・さてと、いくぞ」

「ん?どこに?」

「おまえさんのだいじな、“ハナちゃん”のところじゃよ。そろそろからだもうごくころじゃろ、さっきねてるあいだにからだもなおしておいてやったからの。ほれ、ぐずぐずするとくらくなってみえにゃくなるぞ!」

「あ、おじさんまって!!!」


 ねこじゃらしステッキをもったクロームのうしろを、バイナリめがねをかけたウマタロウはあわてておいかけていった。

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ブルーをさがせ~ハナちゃんとウマタロウのぼうけん @cchanabo

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