『 ミルキーウェイ銀河 』
乙音 メイ
第1話
──── 一つの魂を二つに分けた双子の魂、これを「ツインフレーム」といいます。ツインフレーム同志は、一目見れば相手が同じスピリットであることがわかります。たとえ障害があっても結ばれる運命にあります。
*
ある宇宙にアクマがいました。アクマはいつも独りでした。弟がいましたが、明るく陽気で、一緒にいると疲れてしまうため、十億光年離れた所で暮らしていました。
アクマは、後から生まれてきた弟の子供たちである双子の魂に、弟に似た性質があることを感じていました。ふたりがいつもとても仲が良く、眩いばかりに光り輝いていることが目障りでした。そこで、手を繋いで散歩をしているふたりのちょうどまん中に暗闇を流し、仲たがいさせることにしました。
+
ゴォォォォォォォ!
ふたりが散歩を楽しんでいると、遠くから轟音が鳴り響き、黒いエネルギーがどんどんこちらに近づいて来るのが見えます。ふたりは手を固く握りしめようとしましたが、川の勢いが激しく、河の左と右に分かれてしまいました。暗い流れがふたりの間に広がっています。
「オリヒメ!」
「ヒコボシィィィィィ!」
やがて、長い間うごめいていた流れが止み身を切られるような寂寞感がふたりを襲いました。オリヒメとヒコボシの間にたゆたう河の幅は広く、長さは長く、また暗く、ふたりは近づくことも、姿を見ることもまったくできませんでした。
+
「お父さま、助けて!」
オリヒメから事情を聞いた王は、流れの向こう側にいるヒコボシをすぐに取り戻そうとしました。しかし、この暗い流れには呪文がかけられていて、救い出せませんでした。王は、流れの向こうとこちらに佇む我が子へのせめてもの思いやりで、暗い流れの中にキラキラと輝く幾億幾千万もの星を加えました。
「これでお互いの姿が分かるだろう。わたしは、行って、確かめてこなければならない」
+
王は、遠く兄上のいる所に赴き、なぜこのようなことが起っているのかを尋ねました。
「私がやったことだ。そなたたちがあまりにも明るく輝くのを見て、私の居場所がなくなるように感じたのだ」
「わたしも兄上も同じ父上から生まれたのではないですか。なぜそのようなことを言うのです?兄上は父上のように、雄大な宇宙に満ちておられ、まるで写し鏡のようです。わたしはそんなお二人と共に在り、安心感と歓びに浮き浮きとし、ただ在りのままでいるに過ぎないのです。兄上という宇宙があってこその輝きです。どうしたら居場所がないなどと感じることができるのでしょう」
王がこう言うと、兄であるアクマは、心がほぐれ、涙を浮かべて項垂れるのであった。
「おまえこそが父上の鏡だと思っていた」
「では、わたし達の両方が父上の写し鏡だったのでしょう!やあ、これは至極愉快だ!兄上もそう思いませんか?」
「……どうやら誤解をしていたようだな」
兄アクマは、王である弟と共に、自分がかけた呪文を解くため出かけて行った。着いてみると、暗い流れは星の光を帯び、燦然とした銀河になっていた。暗い宇宙空間に乳白色に光り輝く美しい大河である。
「煌めきは、宇宙があってこそ、と申してくれた!私は、今、このミルキーウェイ銀河に橋を架けた!今後私は、双子の魂を祝福し、もう二度と邪魔だてしないと誓う!」
*
──── 十億光年後に再会できたふたりの唄
もう天の河の広さに
圧倒されなくていい
神が橋を架けてくれた
いつでも会える
毎日のように会える
年に一度だけでなく
オリヒメとヒコボシは
今一緒に暮らしている
愛を育み楽しく暮らしている
ふたりは宇宙船を造っている
ミルキーウェイ銀河のツインフレームを
再会させるのだ
遠く他の星へ出かけて行った
家族やツインフレームを
この宇宙船で再会させるのだ
もう自分たちのように
銀河から銀河への広さに
誰も悲嘆させない
自分たちも神のように優しくなるのだ
神は愛である
了
『 ミルキーウェイ銀河 』 乙音 メイ @ys-j
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