第57話 夕暮れの再会
拍手が起こった所を見ると、いつの間にいたのかキルティーさんと同じ種族と思われる男の人が。
な、なんか凄いニヤニヤしてて、なんでしょう? ……なんか怖いです。
「いやぁ、
その男の人はそう言ってヒューって口笛を吹きました。
「ケールッッ!!!」
突然、そんな大声が聞こえてび、ビックリしました。見ると、背中越しにキルティーさんが剣を向けているのが見えます。
し、知り合いなんでしょうか?
ですけど、なんか仲が良くない感じがします。というか剣向けてますし……。
「おお、怖い怖い。キルティー先輩ィ。そんなに怖い顔して怖いじゃ無いですかぁ」
「―――貴様ッ」
「キルティー落ち着け。流されるな。また逃げられるぞ」
「ッ、すまない」
「へぇ、今度は乗ってこないんだねぇ。ま、良いけどね」
そう言ってこのケールっていう人は凄くいやらしい笑みでキルティーさんの方を見てます。
な、なんか雰囲気が凄く怖いんですけど……。
と、キルティーさんが口を開きます。
「ケール、今なら許してやる。だから縄につけ」
「許してやる、ねぇ。今の状況でよく言えるね。先輩腕落ちた?」
「ああ、お前のお陰でかなり鈍ったな」
「はは、そう素直に認める所、可愛くなったねぇ。……ああ。本当、可愛くねぇ」
「はっ、今のお前に可愛いと言われても嬉しくなどない。逆に反吐が出る」
う、うう、な、なんか凄く怖いです。
「ま、先輩。顔だけは良いから俺の女にしてやっても良いぜ? まあ、その返事は今のうちだけだけどねぇ」
「そんなものになるくらいなら死んだ方がマシだ。それにお前含めて三人。私達には取るに足らないな」
「あ、鈍くなったのは本当なんだねぇ」
「「 ッ!? 」」
ケールさんがそう言った瞬間でした。
ゼバスさんとユニーさんが急にガクンって、
「ど、どうしたんですか! ゼバスさん! 大丈夫ですか!?」
「だいじょーぶ?」
「どうした! ゼバス、ユニー!」
「か、体に力が入らん」
「吹き矢は、落としたはず」
「ケンタウロス快速便を相手にするのに馬鹿正直な武器使っても意味ないでしょ。それくらい分かってるからねぇ。まあ、分からないまま死ぬのも可哀想だから教えてやるよ。おい、その矢筒見せてやれ」
そう言ったケールさんの向いた方向を見ると、ゼバスさんで見えませんでしたが人がいて何か二股に分かれた棒を持ってます。
「どうだ? これで分かっただろ? それに、刺さってるのも感じなかったんじゃ無いか?」
「―――ッ」
「凄ぇだろ? よく分かんねぇ事を言う
ぎゃははははって凄く大きな声でケールさんが笑います。
私、この人嫌いです!!
嫌いですけど、この人にこんな武器を渡した人も酷いです!
「さぁて、先輩。三対一だ。どうする? 降参するか?」
そう言っているケールさんの傍にさっきの人ともう一人の人が集まります。
ですけど、キルティーさんは俯いて、
「おいおい、せんぱぁい。黙ってちゃ分かりませんよぉ?」
「―――お客様」
「え? あ、はい!」
きゅ、急に呼ばれてビックリしました。
な、なんでしょう?
「申し訳ありませんが、二人の事を頼んでもよろしいでしょうか?」
「え?」
私の方を見ずにキルティーさんがそんな事を。
お願いしますって……。
「おいおい、聞いたかよ。天下の快速便が客に指図してやが―――」
「うん! 任せて!」
ケールさんの声に負けないくらいの声でクリスタ君がそう言いました。
クリスタ君、そ、そうですよね!
「任せて下さい!」
「ありがとうございます」
お礼を言ったキルティーさん。
そしてキルティーさんは剣を構えて前へ。
と、向こうの方でも二人の人が前に―――
「ああ、待て待て。この女は俺が相手するからよ。お前等は手ぇ出すな」
出ようとしたのを止めてケールさんが剣を抜きながら前に。
が、頑張って下さい。キルティーさん!
「さぁてっとッ!」
ガキンッ!!
そんなケールさんの声が聞こえたと思ったら、鍔迫り合いをしてました。
全く見えなかったんですけど。
そして二人が動いて、火花を散らしながらキンキンって音が。
凄く早くて、見失いそうですけど、キルティーさん頑張って下さい!
って、ケールさんが蹴りを!
「ッ!」
き、キルティーさん。避けないで腕で受け止めました!
と、ケールさんが後ろに跳びます。
けど―――
「ぐっ!?」
跳んだケールさんの脇腹にキルティーさんの蹴りが!
ケールさんはそのままの勢いで斜め後ろに吹っ飛んで倒れました。
や、やりましたかね?
「てめぇ! ぶっ殺してやる!」
そう思ったら、助けに起こしに来てくれた仲間の人達の手を振り払ってケールさんが跳び起き立ち上がりました。
す、すごく怒ってます。
「そうか」
「チッ! すましてんじゃねー!!」
平然と答えたキルティーさんに迫るケールさん。
というか、早―――っ
―――キキンッ!!
「は?」
凄い速さで迫ったケールさんの勢いに驚いていたら、そんな声が聞こえてケールさんの剣を持った腕が上に上がっていて、その手に剣がありませんでした。
そして時間をおいて、ザクッという音が遠くの方で聞こえます。
見ればケールさんの持っていた剣が地面に刺さっていました。
「終わりだ。さっさと縄に付け」
唖然としているケールさんにキルティーさんが剣を向けてそう宣言します。
こ、これで終わ、――――あっ!!
いつの間に移動してたのか、キルティーさんの後ろにケールさんの仲間の人達が!
「キル―――」
キルティーさん危ない!って言おうとしたら急にキルティーさんが振り向いて、一人の腕を掴んで反対側から襲いかかろうとしていた人にぶつけちゃいました!!
そして剣をしまうと、凄い早技で腕を掴んだ人をそのまま地面に叩きつけると、ぶつかってよろけたもう一人の人の腕を掴んで足を払い、また地面に。
―――一瞬で二人、倒しちゃいました!
「貰ったァー!」
って、そっちに注目していたらケールさんがいつの間にか剣を取りに行ったみたいで、その剣を手にキルティーさんに向けて突き出しながら迫ってました!
き、キルティーさ―――ッ!!
ドッ!
怖くて目をさらしたらそんな音がして、何かが落ちる音と静寂が広がりました。
ど、どうなったんでしょう。うう、怖くて視線が戻せません。
「……あ?」
聞こえてきたのはそんなケールさんの声。
何か思っていたのと違う雰囲気を感じて恐る恐る視線を戻すと、剣を手に立っているキルティーさんと、ケールさんが向かい合って立っていました。けど、
あ、あれ? ケールさん、何か、おかしいような?
……あっ。
何がおかしいのか気付いたら、少し血の気が引きました。だって、ケールさん立ってるのに剣を持った腕が地面に……。
「は、は? は!?」
私が気付いたのと同時にそんな声がして、ケールさんが叫びながら地面を転げ回ります。
そんな彼の先の無い腕からは血が……。
「次は腕一本じゃすまないぞ。 さっさと負けを認めろ!」
「ふざけんなぁ! なんで俺が負けなきゃいけねぇんだァ! クソがァ! てか、てめぇが動かねぇからこんな事になってんだろうが! あいつがどうなっても良いのか!!」
キルティーさんが剣を向けているのにも気にせず、ケールさんがなんか変な方を向いて叫び始めました。
ど、どうしたんでしょうか?
ですけど、なんか嫌な予感がします。
―――ガサリ。
思った瞬間、そんな音が聞こえて視線をそこに向けると、夕日がかなり沈み薄暗くなったこの場所の一角。ケールさんが叫んでいた場所に一人の男の人が立っていました。
いつの間にいたんでしょうか!? 全く気付きませんでしたけど、ですけどなんか少し暗い雰囲気というか、静かでちょっと不気味な雰囲気が。
「け、剣聖、様? 何故、ここに?」
キルティーさんが戸惑った様子でそう言いました。
知り合いなんでしょうか?
と、男の人はキルティーさんを見たまま、こっちに指を向けてきました。
な、なんでしょうかね?
「キルティー、そこの嬢ちゃん達を渡してくれないか?」
そう言った剣聖さんにキルティーさんは小さく「え?」と声を漏らすと、
「それはどういう意味で―――っ!」
ギキンッ!
突然、そんな音がしてキルティーさんと剣聖さんが鍔迫り合いをしていました!
い、一体何が起きたんですか!?
さっきまで結構な距離がありましたし、お話ししてたんじゃ?
と、押され気味だったキルティーさんが剣聖さんの剣を弾いて後ろに跳び視線を剣聖さんの方へ。
「剣聖様、どうされたというのですか!?」
「どうもこうも、我等のボスがそこのお嬢ちゃん達を欲しがっているから奪いに来ただけだ」
「我等のボス? それは―――くっ!」
「無駄口を叩く暇など無い」
男の人は凄い速さで迫り、淡々とした口調でキルティーさんに攻撃をして、キルティーさんはそれを受け止めています。
時々、攻撃が目で追えなくなるんですけど!
って、あわわわ!? キルティーさん、一本だけ生えている木の傍まで押されちゃってますけど大丈夫でしょうか!?
「剣聖様! 目を覚まして下さい!」
「残念ながら目なら覚めている。これが夢ならどれ程良かったか……」
「え?」
剣聖さんの言葉を聞いてキルティーさんが一瞬止まったその瞬間、剣聖さんがキルティーさんの首を掴んでキルティーさんが木に叩きつけられちゃいました! それで剣も落としちゃいましたよ!
あわわわ! き、キルティーさん!
「すまぬが、利き腕、潰させて貰う!」
「ッ!!?」
そんな声が聞こえた瞬間、剣聖さんの膝がキルティーさんの腕に当たって、「ポキッ」て音が!!
その途端、声にならない声と、キルティーさんの腕がだらんって!!
ひぃ!!
「そうだ! そのままやっちまえ!!」
地面に寝ている状態でケールさんがそう叫びます。剣聖さんは「すまぬな」なんてそんな事を言って、キルティーさんに向かって剣をッ―――!!!
「手を離して下さい! わ、私が相手をします!!!」
怖くて仕方なかったですけど、咄嗟に飛び出して言っちゃいました。けど、こ、怖いです。で、でも、キルティーさんが危ないですし―――
「お、客様、だ、ダメです。に、逃げてっ」
「嫌です!!」
「僕もやー!!!」
「え?」
隣からそんな声がして見たらクリスタ君が!
ええ!? クリスタ君!?
「く、クリスタ君は戻ってて下さい! 危ないんですよ!?」
「やー! 僕も頑張るもん!」
「ダメです! 戻ってて下さい!」
「―――分かった。両方と相手をしよう。連れてこいとは言われているが、生死は問われてないからな」
はっ!? クリスタ君と言い合いをしてたら剣聖さんがキルティーさんから手を離してこちらに向かって―――!
クリスタ君!!
咄嗟にクリスタ君を守るために抱きつきました!!
神さ―――ッ!!
「見つけたぞッ!」
神様に助けを求めようとした途端、突然聞き覚えのある声が聞こえて、ズズンという大きな音と、少し地面が揺れました。
い、一体何が?
そう思って目を開けると、そこには大きく夕日と同じ色の体と、青い瞳で私達を見下ろす目がありました。
光合成少女の世界旅 ‐そうだ!世界を見に行こう!‐ 寺池良春 @yoshiharu-t
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