第49話 予定流出

「よく来てくれましたね。オリナー・クリスタとレシアさん」

「はい!」

「うん! お姫様に会いたくて来たよー!」

「ふふ、ありがとうございます」

「えへへー」


 話し合いが終わった後、私達はコクヨーちゃんに誘われたのでトパーズサイト様のいるお城にやって来ました。

 それにしても、頭を撫でられてクリスタ君、嬉しそうですね。隣にはクレサン様もいますし。


「それにしてもまさかお使いを頼んだらお互い同じ店に行って一緒になるなんて凄い偶然でしたね」

「はい。凄い偶然ですよ。私達も一緒になるとは思ってなかったですし。ね、クリスタ君」

「うん」


 クレサン様の言葉に笑顔で返答して、クリスタ君の方を見るとクリスタ君も笑顔でそう返答を、って、あ、あれ?

 今、なんとなくおかしい感じがしたんですけど。なんというかこう、なんかこう凄い違和感なかったんですけど、でも違和感が、というか―――。


「ってぇ! く、くくく、クレサン様!?」


 再度しっかりと見た私の視線の先には確かにクレサン様が!

 ええ!? なんでいるんですか!?

 クレサン様、トパーズサイト様の命を狙った罪で悪い人が行く牢屋っていう所にいるって訊いてたんですけど!?

 というか、これトパーズサイト様を守らないといけないですよね!?

 あ、で、でも、クレサン様、トパーズサイト様の近くにいますし、ど、どうすれば良いんですか!?


「あの件に関しては大きなご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「へ?」


 そう思っていたらクレサン様がそう言って頭を下げてきました。

 え、えーと……。


「そう警戒しなくても大丈夫ですわ。クレサンは操られていたのです。その洗脳も解けたのでそんなポーズしないで、安心して下さいませ」

「そ、そうなんですか」


 咄嗟に身構えちゃいましたけど、トパーズサイト様の言葉にとりあえずホッとしました。

 もー、ビックリしましたよ。それにしても、クレサン様操られていたんですか。


「ねえねえ、れしあさん」

「どうかしましたか?」

「操られるって、なーに?」


 ホッと胸を撫で下ろしていたらクリスタ君が首を傾げてそんな事を。

 んー、そうですねぇ。私も本でしか見たこと無いですけど、えーと、確か―――


「誰かにこう勝手に体を動かされたりして、自分の考えで動けなくなることですよ」

「そーなんだ!」

「そうなんです」

「くれさん様、操られてだいじょーぶだったの? 体を勝手に動かされて痛いところ無い?」


 するとクリスタ君はクレサン様の方を見てそんな質問を。


「ご心配ありがとうございます。オリナー・クリスタ。私は大丈夫です。それに操られていたのは体では無く心の方でしたし、その、操られていた時の感情は今はもうありませんので」

「そーなんだ? よくわかんないけど、でも、だいじょーぶで良かったー!」

「はい。それと、私の父の事を助けて頂きありがとうございます」

「ふえ?」


 そんな事を言ってクレサン様はクリスタ君の前で膝をついてそんな事を。

 クリスタ君、何かしたんですかね?

 んー、あれ? でも、何かするにしても私ずっと一緒にいましたけど、クリスタ君何か特別なことしてましたっけ?

 むむう。謎です。


「それと、レシアさんもありがとうございました」

「へ? あ、いえ。そのー」

「全ては父から聞きました。本当にありがとうございました」


 何の事か訊こうと思ったら、クレサン様はそう言ってまた頭を下げちゃいました。

 一体何の事なんでしょうか……?


「私からもお礼を申し上げます。お二人とも本当にありがとうございました」


 突然の事にポカンとしてたらトパーズサイト様にもそうお礼を言われました。けど、えーと、なんでしょうかね?


 戸惑ってクリスタ君の方を見ましたけど、クリスタ君もよく分かってないみたいで私の方を見てきます。

 んー、よく分からないですけど―――


「やっぱりおりなーとれしあさんは凄いんです」


 ぴょんぴょんしてるコクヨーちゃんのそんな様子を見て多分何か凄い事をしたんだと思います。よく分からないですけど。


「あ、そうです!」


 と、そんなコクヨーちゃんは何かを思い出した様子で鞄をごそごそし始めました。


「はい。お姫様。頼まれてた煉瓦です!」


 そしてコクヨーちゃんは煉瓦屋さんで買った煉瓦を両手で持ってお姫様の方へ。


「ああ。そうでした。コクヨー、ありがとうございます」

「えへへ。お姫様の役に立てて嬉しいです!」


 煉瓦を受け取ったトパーズサイト様の言葉にコクヨーちゃんは満面の笑みで答えます。

 なんか見ててほっこりしますね。


「それにしても、ああ、この堅さと質感。やはり煉瓦はあのお店に限りますわ。ふふ」


 と、トパーズサイト様は煉瓦を丁寧に両手で持って下から覗くように見ています。

 口の端から少し涎出てますけど、それくらい美味しい物なんでしょうね。


「トパーズサイト様、客前ですよ?」

「へ? あ!? す、すみません。オリナー・クリスタとレシアさん。お見苦しい物をお目にかけてしまって」


 そう言って頭を下げるトパーズサイト様。

 ですけど、んー


「別に見苦しくはないですよ? ね、クリスタ君」

「うん! あ、でもね。お姫様がね、わーってしてるの見てね僕も煉瓦食べたくなってきたー!」

「です。私も食べたくなってきたです」


 トパーズサイト様へ二人は元気にそんな返答を。


「では、席についてお話ししながら食べましょうか」

「はーい!」

「はいです!」


 そう言うと三人は綺麗な白いテーブルの所にある椅子に座って、お姫様の「お願いします」って言葉にコクヨーちゃんが頷いてバッグから煉瓦を取り出し、クリスタ君にも手渡すと三人で食べ始めちゃいました。

 三人それぞれ食べてますけど、トパーズサイト様。凄く綺麗な食べ方です。


「ふふ、やっぱりこれですわ」

「んー! これ凄く美味しいです!」

「これ凄ーい! 美味しー!」


 そんな三人の言葉を聞いてると、凄くゴクリって感じがします。

 煉瓦ですけど。


「すみません。トパーズサイト様はあのお店の煉瓦となるとなかなか我慢できないたちですので」


 そんな三人を眺めていたらクレサン様がそんな事を。


「いえ、気にしなくて大丈夫ですよ。ですけど、凄く美味しそうですね」

「……レシアさん? 煉瓦ですよ? 岩食族、いえ今は宝晶族でしたね。それ以外は普通の食事の方が美味しいですからね?」

「う、わ、分かってますよ?」


 なんか凄い剣幕でクレサン様にそう言われます。

 って、あれ? そういえば。


「クレサン様はトパーズサイト様と同じ種族だって聞きましたけど煉瓦食べないんですか?」

「一応そうはなっていますけど、私は宝晶族と人間のハーフです。ですから栄養面的に石は食べなきゃいけませんけど味なんて分かりませんしそのままじゃ噛めないので粉末にして料理にかけて食べます。全く美味しくないですが……」

「そ、そうなんですか」


 な、なんでしょう。話しているクレサン様から凄い溜息と疲れたような様子が見えますよ。


「あ、す、すみません。愚痴を言ってしまって」

「いえ、気にしないで下さい。それよりも、トパーズサイト様ってハーフだったんですか!」

「はい。父が岩食族、あーいえ。宝晶族で母が人間のハーフですね」


 ハーフですか。なんだか、親近感がありますね。


「実は私も―――」

「まあ! そうなのですか!?」


 私もハーフなのを言おうとしたらそんなトパーズサイト様の言葉にビックリです。

 どうかしたんでしょうか?


「うん!」

「です! 秘密のお話ししてそうなったです!」

「そうなのですね」

「はいです!」

「あ、でも、これは秘密のお話だからしーなんだよ?」

「です。お姫様しーです」

「なるほど。秘密なのですね」


 どうやらさっき相談した事を話してるみたいですね。


「それでね、かりんさんがね、後でお姫様のことお絵かきしに来るって言ってたよ」

「です。絵が上手い人が来てお姫様をお絵かきするって言ってたです」

「そうなのですか。それはそれは、私も気合いを入れなきゃですわね」

「ふえ? 気合い入れるの? なんで?」

「絵を描かれるって事は、その絵はずっと残ることです。ですので描かれる際にはしっかりと綺麗な感じにしないといけないのです」

「そーなんだ!」

「そーなんですか!」


 へぇー、そうなんですか。初めて知りました。


「あ、でもね。お姫様の絵を描くのはね、ちょーこくを作るためだよって言ってたよ?」

「です。ちょーこくのためって言ってたです」

「え? 彫刻ですか?」

「うん!」

「です。ちょーこくのためです!」

「そうなのですか。ですが、なんでまた私の彫刻なんて」

「それはねあのね、えーと、街の凄ーい人を作るーってなったんだけど、ふくーだこーしゃく様が出てこれないからーって」

「です。でも、これはしーなんです」

「なるほどそういう経緯なのですか」


 クリスタ君達の言葉に頷きながら聞くトパーズサイト様。

 なんだかその様子はお母さんに報告している子供達みたいに見えて少し可愛いですね。


「それで、その事に関しては誰に秘密にすれば良いのでしょうか?」

「えっとね、お姫様に秘密なんだよ」

「です。お姫様に秘密でするんです!」

「え?」


 クリスタ君達の言葉に一瞬固まるトパーズサイト様。

 一体どうかしたんでしょうかね?


「……あ、ああ。そうなのですね。残念です。私も詳しく知りたかったですけれど、秘密なら仕方ないですね」

「うん。秘密なの」

「ごめんなさいです」

「いえ、お気になさらず。さあ、もっと煉瓦を食べましょう。コクヨー出して下さいますか?」

「はいです!」


 お姫様の言葉にコクヨーちゃんは元気に返答すると、買ってきた煉瓦を取り出してクリスタ君とトパーズサイト様の元へ。

 そしてまた食べ始める三人。凄く美味しそうです。

 んー、それにしてもお姫様、凄く優しいですね。

 自分に関して秘密なのに、聞き出すんじゃ無くて、秘密だから仕方ないって言って更に聞かないなんて。私なら聞いちゃいますよ。


「ところでオリナー・クリスタ」

「なーに?」

「カリン様達はいつ頃来るとか聞いてますか?」


 と、突然トパーズサイト様がクリスタ君へそんな話題を。


「えーとね、明日行くーって言ってたよ?」

「そうなのですか」

「うん!」


 トパーズサイト様の言葉に元気に返答すると再度クリスタ君は煉瓦をボリボリと。

 それにしても、見てたらまたお腹が空いてきました。

 やっぱり、雨の日はお腹が空いてダメですねぇ~。

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