第48話 ひみつのおはなし

「なるほどー」

「そーなんだー」


 コクヨーちゃんの相談に頷きます。

 その内容は、とても大変そうですけど、でも、協力してあげたい内容です。


 その内容とは―――、

 あの大結晶があったところに何か置きたいって話でした。

 というのも、昨日、宝晶族様と同じお屋敷にいたら、大結晶がなくなって寂しくなったって声が聞こえてきたからなんだそうです。

 それで何かしたいなーと思ってたらしいです。


「それは難しいお話ねぇ」

「です。でも、おりなーなら凄いので凄いのが出来ると思ったです。あと、おりなーが凄いって言ってるれしあさんも凄いので、出来ると思うのです」


 なんだか凄いって言われると、照れますね。

 というか、いつの間にカリンさんもお話に入ってきたんでしょうか?


「それでも、二人で、いえ、あなたも含めて三人でやるのには難しいと思うわ。せめて、何をするにしてもあの大きいものの代わりになるものを置くのだからフクゥダちゃんとかに相談しないと」

「難しいですー?」

「ええ。二人は凄いけれど限度があるもの」

「そーなんです?」

「ええ。そうなのよ」

「なら、ふくーださんにもそーだんするです」

「あ、でも、ふくーだこーしゃくさん。れしあさんの武器作るーって言ってたよ?」

「そーなんです?」

「うん」


 頷くクリスタ君。そういえばそうでしたね。

 んー、ですけど、


「ですけど、言えば手伝ってくれるんじゃないですかね?」

「んー、それは難しいと思うわ~」


 そう言ったらカリンさんが頬に手を当てて首を横に振っちゃいました。

 なんででしょう?


「フクゥダ公爵様なら普通にお話すれば良いと思うんですけど」

「甘いわレシアちゃん。フクゥダちゃんはね、普段はあんなちゃらんぽらん―――、いいえ、人当たりも良く接するけれど、武器の制作中となるとそれ以外の事はやらなくなってしまう程没頭しちゃうの。鍛冶仕事自体は数日で終わるけれど、その期間全く仕事しないから、貴族としての仕事に支障が出てたのよ。だから最近鍛冶に関しては彼、一切断っていたのよ。だけれど、久々に作るってなって、多分、今は制作以外の頭は無いでしょうから、何も聞こえないわ」


 私の言葉にカリンさんはそう答えます。

 むむー、なんだか武器の制作を頼んだ私が悪く思えてきますね。なんだかごめんなさいです。


「ですが、何かをそこに置くのかも考えるとなるとやはり公爵様の許可は必要になると思うのですが」

「そうなんですか?」

「ええ、ここは公爵様の領地な訳ですし」


 はえー、初めて知りました。オーラ様が言ってくれなかった分からなかったです。

 領地が何かは分かりませんけど、って、あ、あれ?

 いつの間にオーラ様が!?


「あ、おーら様。と、せなさんだー! こんにちはー」

「はい。こんにちは」

「こんにちは」


 さっきまでいなかったのに急に現れたオーラ様にビックリです! あ、あと、セナさんにも。

 ですけど、クリスタ君はビックリした様子もなく普通に挨拶してます。って、あ、私も挨拶しなきゃいけないのにタイミング逃しました!


「あら、オーラちゃん。いつの間に来ていたの?」

「先程ですね。ですが気付かれなかったので、お話しするために近くに来たら、お話が聞こえてきたので」

「あらぁ、ごめんなさいね。お話に夢中になっちゃってたわ」

「いえいえ。それよりも、コクヨーさんの提案はとても良いと思いましたわ。ですけど、現状ではグリノレッジ公爵様にお話を通すのは無理だと思うのでレシアさんの武器作りが終わってからになると思います」

「むー、やっぱりそーです?」

「はい」

「そーですか」


 オーラ様の言葉に凄くがっかりそうにコクヨーちゃんは声を出します。

 んー、私のせいでもありますから、ここはなんとかしてあげたいですね。

 ですけど、どうしたら良いでしょうか? むむー、やっぱりフクゥダ公爵様に良いか聞けるように言わないといけませんよね。

 ですけど、カリンさんの言葉的にフクゥダ公爵様は全く聞かないみたいなので、どうしましょう? あ、そうです。物凄く頑張って言えば大丈夫じゃないでしょうかね?


「あら、何かを建てるだけならフクゥダちゃんじゃなくても大丈夫よ?」


 そう考えていたらカリンさんがそう一言。


「そうなのですか?」

「ええ。前にこういう事が色々あって、フクゥダちゃんがそうなっちゃった場合の時のためにちょっとした領地運営の仕事に関しては、王様より直々に言われて私も出来るようになっているのよ? 爵位は無いけれど、ね」


 そう言って片目を閉じるカリンさん。


「そうだったのですか」

「ええ。それにしても、オーラちゃんがお話に入ってくるなんて。何か良い案、あるんでしょう?」


 感心していたオーラ様にカリンさんはそう言って片目を閉じて視線を向けました。

 オーラ様、良い案があるんですか。


「ふふ、流石は宝晶ほうしょうの英雄が泊まっていた宿の当時からの主。カリン様です」

「いやん、やめて。その言い方。乙女の年齢はたとえ途中からであっても秘密なのよー!?」


 カリンさんはオーラ様の言葉に頬に手を当ててぶんぶんと顔を振ってます。

 目回らないんですかね?


「それで、案ってなんです?」


 そんなカリンさんを見ていたらコクヨーちゃんがオーラ様に問いかけました。

 するとオーラ様はやんわりとした笑みでコクヨーちゃんに答えます。


「そうですね。彫刻―――なんてどうでしょうか?」


 なるほど。彫刻ならなかなか良いと思います。うちにもありましたけど、お父さんとお母さんの彫刻で、なんでも森の外に行った時に貰った物らしくて、羨ましかったです。

 その彫刻、うちで大切に飾ってますけど。

 それよりも、彫刻それが思いつくなんて流石オーラ様です。


「彫刻ねぇ。確かに出来にもよるけれど、できればかなり良い街のシンボルになるわね」

「ええ、そう思って提案させて頂きました。他の皆様はどう思われますか?」

「私も彫刻良いと思います!」


 そうです。とても良い案だと思いますよ。


「ねえねえ、れしあさん」


 そう思っていたらクリスタ君に袖をクイクイと引っ張られました。


「どうかしましたか?」

「ちょーこくって、なーに?」

「です。ちょーこくってなんです?」


 クリスタ君の方を向いたらコクヨーちゃんからもそんな事を。

 クリスタ君もコクヨーちゃんも知らないみたいですね。ならば、ここは私が教えてあげましょう!


「彫刻というのはですね、石で人を作った物なんですよ」

「石で人を作るのー? 石が人になっちゃったら食べれないよー!」

「です。それは食べられなくて酷いです」


 私の説明に二人はしょぼんってしちゃいました。けど、人って言っても人の形にするだけなんですけど。

 あ、そう言えば良いですね。


「石から人を作るんじゃ無くてですね。人の形にするだけなので、石は石のままですから安心して下さい」

「そーなの?」

「です?」

「そうなんですよ」

「そーなんだ」

「そーなんです」


 私の言葉に二人はホッとした様子で納得してくれました。

 ふう、良かったです。


「あれ? でも、石で作るって言ってたですけど、石はおりなーじゃないとぶれいくできないです。どーやって作です? あ、もしかしておりなーが他にもいるです?」

「え?」


 どうなんでしょう?

 ですけど、お母さん達は普通に作ってもらった物だって言ってましたけど、もしかしてその時にクリスタ君みたいな岩食族に出会って作ってもらったんですかね?


「違うわよ。コクヨーちゃん達の種族の中で特別なオリナーじゃなくてもね、石を砕いて削る事はできるのよ」


 そう悩んでいたらカリンさんがそんな事を。


「そーなんです?」

「ええ。専用の道具があって、それを使って砕いたり、削ったり、磨いたりして作るの。だけどね、繊細な技術も必要になるから、普通の人では難しいのよ。だから、彫刻はね、ちゃんと専門で行ってくれる人がやってくれるの」


 カリンさんの説明を聞いてるとなんか本当に凄いモノみたいです。そう考えると、お父さんとお母さんの彫刻作ってくれた人凄いですね。


「はえー、なんか凄いです」

「うん! なんかすごーい!」


 二人も目を輝かせて「おー」って感じで話を聞いてます。


「現物が見せれれば分かりやすいと思うのだけれど、生憎、私の宿に無いのよねぇ。ごめんなさいね」

「だいじょーぶです! 見てないので分からないですけど、ちょーこくは凄い物なので、ちょーこくを置けば皆も喜ぶと思うです!」


 少しすまなさそうに言うカリンさんにコクヨーちゃんは元気にそう言い、そんなコクヨーちゃんの頭を「ふふ、ありがとね」と言ってカリンさんが撫でます。


「そうと決まれば、何を題材に致しましょうか? やはり、ここはフクゥダ公爵様と宝晶族様でしょうかね?」

「あら、私が入ってないわよ?」

「え? あ、ふふ。すみません。では、カリン様もご一緒にという事で」

「もう、冗談を冗談で返すなんて!」

「ふふ、申し訳御座いません」

「まあ、良いわ。それで、彫刻用の石材に関してはコーメイン領オーラちゃんの所に発注すれば良いのね」

「いえ、その事に関しましては我が家の為に親身になって下さったこの街と友人の為のお手伝いとしてタダでご用意致します」

「それは、ダメよ」

「え?」


 オーラ様は先程まで笑顔のまま下に向けた顔を本当に「え?」っていう感じに変えてカリンさんの方を見ます。

 そんなオーラ様の方をカリンさんは少し厳しいような、でも優しいようなそんな表情で見返しています。


「あなたのその心は人としては素晴らしいわ。でもね、領主という立場。上に立つ者として、自分の領地の物をタダで他へ渡すのはダメ。自領ならあなたの考えで良いけれど、他領が必要としている物なのだから、売りなさい。恩があるというなら値下げすれば良いだけよ。でもね、最低ラインは守りなさい。それはあなたに仕えてる者が汗水垂らして提供した物。タダで渡すのはそれをその価値しかないと周りの領地に紹介するようなものよ。だから、買わせてもらうわ。イイ男達の汗の結晶を、ね」

「分かりました。ありがとうございます」

「良いのよ。それに私のお金じゃ無くて、フクゥダちゃんのお財布から出るから気にしないの!」

「そ、それはそれでどうなのでしょう?」

「そこは気にしないの。経済は回さなくちゃ。そよりも問題はどういう感じの像にするのかというのと、どうやって材料を運ぶか、ね」

「そうですわね。像は街の象徴とした方が良いと思います。それと、材料の運搬に関する街同士の行き来に関しては、領主館の転移門を使えば良いと思いますけれど」

「転移門ねぇ。でも、あれ、結構魔宝石使うでしょう? そこまでの魔宝石に使うお金あるのかしら? まあ、無くてもフクゥダちゃんにつけておけば―――」

「あ、いえ。その点に関しましては大丈夫です。レシアさんとクリスタさんから素敵なプレゼントを頂きましたので」


 そう言うとオーラ様は優しい笑みを浮かべて私達の方へ視線を。

 ……あ。プレゼントって、クリスタ君の魔宝石の事ですかね?

 それしかあげてませんし。


「あら、そうなの? じゃあ、大丈夫ね」


 と、カリンさんも私とクリスタ君の方を向いて、納得した様子でオーラ様に返答します。


「それじゃあ、あとは街の象徴かしら。まあ、そうなるとフクゥダちゃんとトパーズちゃんのどちらかになるわね」

「そうですわね」

「私はお姫様がいーです!」


 と、真剣な話をしている二人にコクヨーちゃんが手を上げてそう告げます。


「まあ、コクヨーちゃん的にはトパーズちゃんが良いでしょうね。だけれどね、フクゥダちゃんもこの街に住む他の種族にとったらそれくらい大切な人なのよ?」

「そーなんです?」

「そうなの」

「んーと、じゃー、二人とも作るです!」

「それは難しいわ。あの大きさに並ぶ物だもの。それを二人分も作るってなったら何年かかるか分からないわ」

「だいじょーぶです! おりなーがいますです!」


 自信満々に言うコクヨーちゃん。でもクリスタ君じゃあ、石を削るのは難しいような。

 あ、でも、石で作るならクリスタ君のブレイクがありますよ! これなら、簡単に出来る気が―――


「それは難しいわね」


 そう思った瞬間カリンさんが溜息交じりにそう言います。


「なんでです?」

「私の知ってる岩食族にもコクヨーちゃんの言うオリナーがいたのだけれど、その子も同じ様な事を考えてやってたの。けれど上手く出来てなかったもの。というより、作ろうとしていた物に全く近付いてすらいなかったのよ」

「そーなんですか」


 カリンさんの言葉にシュンとするコクヨーちゃん。

 私も良い案だと思ったんですけど、カリンさんは実際に見てるみたいなのでブレイクだとダメなんでしょう。


「ですけど、コクヨーさんの言うようにフクゥダ公爵様と宝晶族様、お二人のモノが作れればそれは凄くいい物になるとは思いますわ」


 そんなコクヨーちゃんがシュンとした中、オーラ様がそんな事を。


「私も出来るならそう思うけれどー。まあ、とりあえず、する事は決まったわ。あとはトパーズちゃんとフクゥダちゃん。どちらかにモデルになって貰わないと、ね」


 話がまとまってフクゥダ公爵様とトパーズサイト様のどちらかがモデルっていうのになるみたいです。

 あれ? ですけど、


「でも、フクゥダ公爵様、今出てこれないんじゃなかったでしたっけ?」

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