第46話 武器の振り方
「れしあさん凄いよこれー!」
「ですね。凄いですねこれ」
フクゥダ公爵様のお屋敷で着せて頂いた外套を着てお外に出たら凄かったです。
全く濡れた感じしませんし、雨がパラパラと外套に当たる音がして少し心地良いです。
これなら雨の日も嫌だなぁーって感じしませんね。
それと、
「クリスタ君、立派な靴履かせてもらって良かったですね」
「うん!」
クリスタ君は靴が小さくて雨が中に入るだろうって事で、なんと小さなブーツを履かせて貰っています。ふふ、なんというか外套もブーツも黒い感じですけど、クリスタ君が着るとなんだか可愛いですね。
「お前さん方。では、行くぞ」
「はい」
「はーい!」
クリスタ君と話していたらフクゥダ公爵様にそう声をかけられたので、返事をしてついて行きます。
そして辿り着いたそこは―――凄かったです。
大きな建物で、なんかこう立派な建物ですよ。
ですけど、あれ? なんかどっかで見た事ある気がしますけど、どこでしたっけ?
「学園長、いらっしゃるのであれば連絡をして頂けると嬉しいのですが」
建物を見ていたらそんな声が聞こえて向くと、フクゥダ公爵様になんというか立派な服装の女の人が話しかけています。
「いや、別にすぐ帰るから別に必要ないじゃろう。それよりも、今、演習室は空いておるか?」
「演習室ですか? 今であれば空いてはいますけれど」
「うむ、そうか」
「それよりも、学園長一つよろしいでしょうか?」
「なんじゃ?」
「その―――」
はえー、なんだか凄い頭が良さそうな感じに聞こえます。
それに、髭を触ってるフクゥダ公爵様もその様子が凄く賢そうに見えます。
「レシア、クリスタついて来い」
「あ、はーい」
「はーい!」
私達はフクゥダ公爵様に連れられてその演習室という場所へ。そこはなんというか凄く大きなお家って感じの見た目で、中に入ると、凄く広いです。
そこには、何か木のお人形さんみたいなの立ってます。
「良し。レシア、お前さんの腕前。見せてもらうぞい」
木のお人形さんを見ていたら公爵様にそう言われました。
って、そうです。私、フクゥダ公爵様に武器を振るう動きを見せるんでした。
あ、ですけど……。
「あの、フクゥダ公爵様。私、今、剣無いんですけど……」
「大丈夫じゃ。ここにあるからの」
「へ?」
フクゥダ公爵様はそう言って笑ってますけど、どこにあるんでしょうか?
全然見当たらないんですけど……。
そう思っているとフクゥダ公爵様は自身の腰に下げてるバッグの中に手を入れ―――
「よっと」
大きくて長い剣を取り出しました。
いきなり小さなバッグから出てきたのでビックリです!
けど、もしかして私が持ってるバッグと同じモノなんでしょうかね?
「ほれ、これを使ってあの
あの木のお人形さんを指さしてそう言ってきます。
というか、あれが案山子ですか。本で読んだ事はありましたけど初めて見ました。
「ほれ、どうした? 早く受け取ってくれ。これ持ってるのドワーフのワシでも相当きついんじゃ。早くしてくれぇ~」
「へ? あ、すみません」
感心していたらフクゥダ公爵様がぷるぷるしちゃってます。
そして慌てて剣を受け取ると、私が持ってた剣よりも凄く軽かったです。
これくらい軽いなら振りやすいですし。あ、もしかしてフクゥダ公爵様はそれを考えて持ってきてくれたんでしょうか?
おお! そう考えるとフクゥダ公爵様凄いですね!
ならば早速―――!
「では、いきます!」
「うむ、では、何回か動きを見せてくれぃ」
「はい。分かりました」
「がんばれー! れしあさーん」
クリスタ君の応援を背に、いざ!
「はぁあああ!!」
私は言われたとおりに案山子に向かって剣を振り下ろします。
剣は案山子さんに当たって、ガァーンって音を立てます。少し手が痺れますけど、案山子さんはびくともしていません。
ですけど、これくらい丈夫なら何回やっても大丈夫そうですね。それに動きを何回かって言われたので今度は横から思い切り―――!
そう思って剣を振るったんですけど、剣は空を斬りました。……全く手応えがありません。
どうしたんでしょうか? もしかして避けたんでしょうか?
案山子さんもやっぱり痛いのは嫌で避けたんでしょうか? むむー?
そう思ってふと剣の方を見てみたら、あれ?
さっきまで長い剣だったのに、なんか短くなってます。半分くらいの大きさになってますよ。
というかこれ、もしかして……、折れてません?
そう思った瞬間。後ろの方でガァーンって感じの音がしてビックリです。
見たら、剣の半分がフクゥダ公爵様の目の前の床に刺さってました。
「うおぉぉおお!!?」
「わあー! 剣が飛んだー!」
その様子に驚くフクゥダ公爵様と凄ーいって目を輝かせてるクリスタ君の姿。
って、
「す、すみません! フクゥダ公爵様! 大丈夫ですか!?」
「ほ、ほひょー。寿命が縮まったわい」
「ご、ごめんなさい」
「ううむ、わざとでは無いのは分かるが、まさか、剣が折れる程とは……」
「ご、ごめんなさい」
目を見開いて凄い顔していたのでフクゥダ公爵様に咄嗟に謝りましたけどなんで折れちゃったんでしょうか……?
普通に剣を振っただけなのに。
「うむむ。元々大剣は普通の剣として使う物では無いが、お主の振り方を見た感じ、大剣、というより剣は合わないように感じるのぅ」
「え? あわないんですか!?」
突然フクゥダ公爵様が言った言葉にビックリです。
私、今までお母さんに言われて剣を振るう練習してきたんです。なのに剣が合わないって。
「うむ、お主の振り方は力任せなところが大きい。ふむー、そうじゃな。レシア、少しこれを振ってみてくれ」
「へ?」
衝撃的な言葉に落ち込んでいたら、フクゥダ公爵様は今度はバッグから何か取り出しました。
それは、棒の先端に大きな黒い塊が付いてます。あ、それ見た事あります。確か。
「
「うむ? まあ、確かに大きな金槌といえば金槌とも言えなくはないが。これは一応武器としての金槌じゃ。普通は
「そうなんですか」
戦大鎚。なんか凄い響きです。
「とりあえずこれを案山子に向かって振ってみてくれ」
「分かりました」
という訳でフクゥダ公爵様からその戦大槌を受け取って、
「あの、フクゥダ公爵様。この折れちゃったのはどうしたら良いですか?」
「む? ああ、それは預かろう」
そう言ってフクゥダ公爵様は折れちゃった剣を受け取って鞄に入れちゃいました。
「ほれ、これを持つのじゃ」
「あ、はい」
という訳で、戦大鎚を受け取ってって、その戦大鎚を持ち上げると、なんでしょう?
なんか凄くしっくりくる感じがします!
なんでしょう? これならなんだかいける気がします!
「それじゃあ、いきます!」
「うむ」
「れしあさん、がんばれー!」
二人の声を背に、私は案山子に向かってその戦大鎚を振り降ろします!
凄くガガーンって感じの音がしましたけど、さっき剣でやった時とは違って手が痺れません。
これなら次の動きが普通にできます。
というわけで、今度は普通に横から案山子に向かって戦大鎚を振るいます。
今度はさっき剣を横に振った時とは違って手応えありです!
凄い勢いでパッカーンって音と共に案山子さんが横に飛んでいきました。そして壁に当たって―――
「ぶへっ!?」
私の方へ返ってきて。
うう、痛いです。
「れしあさん、だいじょーぶ?」
「だ、大丈夫かの?」
案山子さんがぶつかったところを擦っていると、二人が心配した様子で声をかけてくれました。
「うう、一応大丈夫です」
少しまだ痛みますけど。
「れしあさん、真っ赤だよー。よしよし」
うずくまっていたらクリスタ君が痛いところを擦ってくれます。
クリスタ君が撫でてくれたところ、なんとなく痛みが消えたようなそんな感じがします。
「ううむ、まさか、案山子が外れるとは想定外じゃ。薄々思っておったが、お主、凄い力持ちなんじゃな」
フクゥダ公爵様はそう言うと私の方へ。
「それよりも、どうだったかの? 戦大鎚を振ってみた感想は」
「え? あ、凄く振りやすかったです。手にしっくりしてましたし」
「そうかそうか。うむ、ワシの目もまだまだ捨てたもんでは無いのぅ。であれば、お主が良ければじゃが、大剣より、戦大鎚なんてどうじゃ?」
「うーん、そうですね」
確かにしっくりきましたけど、大剣だけで鍛えてきたのでどうなんでしょう?
ですけど、なんだか戦大鎚の方が良いような気もします。
「武器として使うのであれば手に最初から馴染んでおる方が良いからのぅ。じゃが、武器を選ぶのも本人次第じゃ。全く使えてないのに憧れで使う者も知っておるしの。それで、英雄となった者も知っておるしな」
悩んでいたらフクゥダ公爵様が「ほっほっほ」って笑いながらそう話してくれました。
うーん、そう言われると更に悩みます。むむー。
あ、そうです。こういう時は誰かにも訊いてみれば良いんですよ。
という訳で早速―――
「クリスタ君は見ててどっちが良いと思いました?」
「えーとね、れしあさんがね、おーはんまーをね、ぶーんってしてるのがね凄かったよ!」
「なるほど」
戦大鎚を振ってた私の方が凄かったんですか。なら。
「戦大鎚でお願いします!」
「うむ、分かった。では、早速制作に取りかかろう。といってもまずは設計図と材料を集めねばならぬからな。お前さん方にはしばし待って貰う事となるが良いかのう?」
「私は大丈夫ですよ」
「僕もだいじょーぶ!」
そう二人で言うとフクゥダ公爵様は頷いて、今日はあとフクゥダ公爵様はお屋敷に戻って色々するそうなのでここから自由行動です。
ふふ、それにしてもどんなのが出来上がるのか楽しみですね。
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