第42話 光晶祭 -最後の灯し-
夜。お星様が見えるそんな時間帯。
私とクリスタ君、コロンさん、あと、カリンさんとマイティアちゃん。レオンさん達でお祭りの会場に来ています。丁度皆さん目を覚ましたので皆さんで来たんですけど、やっぱり大勢で行くっていうのは楽しいですね!
「こんなに人が集まるなんて、奇跡的に怪我人がいなかったのかな?」
「そうとしか思えないな。街の被害の様子からそれはおかしい気もするが、皆が普通に会場にいるというのはそれしか考えられないな」
「本当に不思議」
と、会場でステージの方を見ていたらレオンさん達がそんな会話を。
ふふ、これは教えてあげた方が良いですよね。
「あら。誰かが素材提供して万能霊薬が出来たから皆怪我が治ったんだそうよ」
そう思ってたらカリンさんがそんな事を!
「万能霊薬!? 何故その様な物を? いや、それよりも材料を提供? 材料だけでも相当な額になると聞いているのに。お金も取らずに渡したと言うのですか?」
「そうなんでしょう。フクゥダちゃんがそう言ってたもの」
「その人、価値とか分からないタイプの人だったとか?」
な、なんでしょう?
ルーファンさんに散々言われてる気がするんですけど!
「確かに、話だけ聞けばその者は色々おかしな者だとは思うが、その者のおかげで皆が元気になれたんだ。もしかしたら聖人のように良い奴なのかもしれないな」
ディアナさんがそんな事を。うう、ありがとうございます。
「ねえ、レシア。その素材提供したのってもしかしてレシアだったりする?」
ディアナさんに感謝していたらコロンさんがそんな事を小さく聞いてきました。
フクゥダ公爵様からはあまり自分が提供した者ですって言わない方が良いって言われましたけど、コロンさんになら言っても良いですよね。
「うん。そうだよ」
って、クリスタ君に先に言われちゃいました!
「やっぱり。ならさっきグリノレッジ公爵様がレシア達に言ってたのはそういう事だったのね」
「あ、でもね。これは秘密でしーなんだって」
納得したコロンさんにクリスタ君が口に人差し指を当ててしーって教えます。
「分かってる。それこそ広めたら大変な事になるだろうし」
コロンさんがクリスタ君に返答した時でした。
「これより光晶祭最終日。最後となります大結晶への灯しを執り行います」
そんな声が聞こえて、会場にいる人達がざわざわと話し始めました。
「執り行えるって事は宝晶族様戻ってきたって事だよな?」
「ああ、まさかノクターンホロウが攫っていくなんて思わなかったが、兵隊達頑張ったんだろうな。あのノクターンホロウが奪ったモノを取り返すなんてな」
「なんか今年、色々あったけど、無事にこの時まで来れて良かったわね」
「ああ、そうだな。この日のためにわざわざ来たんだからな」
「そうね。大結晶の灯しは綺麗だし、明日から頑張ろうって思えるからね」
そんな感じに近くにいる人が色々お話ししています。
皆さん、凄く楽しみみたいですね。ですけど、私は別の目的もあります。
それはですね、クレサン様の代わりに頑張るって立候補したコクヨーちゃんを見るためですよ!
「それでは、宝晶族様。お二人とも前へ」
そう声が聞こえるとステージの上に白い肩の出てるワンピースを着たコクヨーちゃんがゆっくりと登るのが見えます。出会ってから黒い布の長袖のお洋服着てたので忘れてましたけど、コクヨーちゃんの腕にはクリスタ君みたいに黒い宝晶が付いててステージを照らす光で時々光ってます。その光が少し眩しいですけど。
「あの子も宝晶族なのか!?」
「というか、世界に一人だけの一種じゃ無いのか!?」
「もしかして、あの腕のは魔宝石、なのか?」
「埋まってるのかしら?」
「あの子、どこかで見たような?」
何故か周りの人達が驚いてそんな事を言ってるのが聞こえます。けど、今はコクヨーちゃんの頑張りを見ないとですよね!
そしてコクヨーちゃんは振り向いてその腕を後ろに出すと、お次は綺麗なドレスを着たトパーズサイト様がその手をとって壇上へ。
なんというか、天使が神様を案内してるみたいで綺麗ですよ。思わず見取れちゃいます。
そうして二人は一緒に大結晶の方へとステージ上を歩いて行きます。
でも、コクヨーちゃん。近付くにつれて顔が凄く強ばってます。なんかもう我慢してるのが分かりますよ。
多分、怖いんですよね。何でか分かりませんけど、クリスタ君とコクヨーちゃんあれ怖いって言ってましたし。
ですけど、頑張ってコクヨーちゃん! コクヨーちゃんなら大丈夫ですから!
私が頑張って心の中で応援していたら、コクヨーは無事に泣かずに大結晶の元へ。
よく頑張りましたよコクヨーちゃん。
そう思った瞬間、いきなりステージの光が消えて真っ暗になっちゃいましたよ!? 一体何が起きたんですか!?
まさか、何か事件が!?
「これより、大結晶に光が灯されます。皆様、ご注目下さい」
驚いていたら凄くいつも通りな声が。
これ、何かの事件とかトラブルじゃ無いんですか?
「いつもだが、この急に暗くなるの、こう心臓に悪いぜ」
「あんた暗いの苦手だもんねぇ」
「う、うるせぇ」
そう考えていたらそんな会話が。
あ、これいつもなんですか。びっくりしましたよ。
ですけど、私も暗いのは苦手ですね。幽霊とか怖いですし。
あと、暗いところで物音すると見えないので怖いですよね。
そう考えていたら、いきなり「おおー!」って声がしてビックリです。
ビックリして顔を上げたら、
「おおー!」
綺麗な光でした。丸くて綺麗な光が暗い中にポツリと浮かんでますけど、なんというかランタンの中で光る光みたいにガラス越し、じゃなくて大結晶の中で光ってるのが分かります。
それがゆっくりと上に登って、登って―――……。
え? あ、あれ? なんでかまた嫌な予感がするんですけど。
また上に行ったら光が襲ってくるとかそんなんですかね?
あれ、襲われた時、特に何も無かったんですけど、逆に何も無くてなんか嫌なんですけど!
そんな私の服を抱っこしてるクリスタ君のつかまる力が強まったのを感じました。
クリスタ君もあれは嫌だったみたいですから、警戒してるんでしょう。
そうして二人でドキドキしながら見ていると、光は大結晶の真ん中で止まっちゃいました。
あ、なんでしょう。これから上に上がる感じは無いみたいですね。
そう安心して再度見てると綺麗ですね。こう、なんていうんでしょう。
結晶全体に光が行き渡って、大結晶が光り輝いてるのは、凄く綺麗です。なんというか、こう、綺麗ですよ!
「今まで見てきたけど、こうなるのは初めてだ」
「そうだな」
「うん」
「え? そうなんですか?」
隣で見ていたレオンさん達がなんかそんな事を言ってたので聞き返しちゃいました。
「ああ、いつもなら開会の時同様。上まで行った光の球体が、弾けて街に降ってくるといった感じのものなんだ。だからこうなるのは初めて見た」
「そうなんですか」
ディアナさんが説明してくれましたけど……。
え? じゃあ、あれはいつも通りじゃ無いって事ですよね?
それを聞いたらなんか色々ざわざわくるんですけど。だ、大丈夫ですよね?
そう思い警戒しつつ再度大結晶の方へ視線を向けると、さっきより全体への光が強くなってそれが一気に強くなって―――
光ってる大結晶が弾けました!
あわわわわ!? 大丈夫なんでしょうかこれ!?
その弾けた光は、何個かの光の粒の塊になって皆の周りとか、家の周りとかいろんなところを縦横無尽に飛び回ります。まるで、街で元気に走り回ってる子供達みたいな、そんな感じに。
なんというか私を狙ってきたあの光、とも違う感じがしますけど、なんなんでしょうかこれ。
でも、不思議と怖さはないですね。どことなく暖かいような?
「ねえねえ、れしあさん」
そんな光を目で追ってたらクリスタ君が服をくいくいと。
どうかしたんでしょうかね?
「クリスタ君、どうしました?」
「あれ」
「あれ?」
クリスタ君が指さす先。そこは、私の目の前で、そこには霊廟の時案内してくれた光が立っていました。
もしかして、な、なにかお話があるんでしょうかね?
そう思って見ていたら、急にその光は頭を下げてきます。
え? えーと、これは?
「えっと、どういたしまして」
どうして頭を下げてるのか分からずにいるとクリスタ君が首を傾げながらそう言います。
あ、もしかして何かお礼に来てくれたんでしょうか?
なんのお礼か分かりませんけど、だったら私も―――
「どういたしまして」
すると、その光は、なんというか顔を上げると笑ったように思えました。すると、他の光みたいに光の粒の塊になって街を飛び回り始めちゃいました。
そして光はいくらか飛び回った後、一斉にステージの方へと集まっていきます。
そこでは光に照らされて驚いた様子のトパーズサイト様とコクヨーちゃんが光に照らされているのが見えます。
って、光が大きさはコクヨーちゃんくらいの人の形になっちゃいました。
「なんだあれ?」
「分からん」
「宝晶族様も驚いてる様子だけど、え? 何あれ。特殊な演出とかじゃ無いの?」
会場の皆さんがざわざわと話し始めました。
でも、本当になんでしょうかね? 皆さん、トパーズサイト様の方向いてますし。
あ、一つ光が遅れてステージに来ましたね。って、さっき私達に頭を下げた光の人ですよ。
そして―――
『お姫様、今までありがとう』
それは誰が言ったのか本当に言葉だったのかく分かりませんでしたが、なんかそう聞こえたような気がしました。
その瞬間、ステージに集まっていた光は光の粒になって会場を埋め尽くす程になると、急に大きな竜巻みたいになってお空へ上がっていっちゃいました。
よく分かりませんけど、なんというかまるでお星様がお空へ帰るみたいな感じがします。
「ばいばい。またねー」
そんな渦を見上げてクリスタ君が手を振ります。
もしかしてあの光の人達に手を振ってるんですかね。
あ、なら私も手を振っておきましょう。さっき頭を下げてくれた人がいると思いますし、そうです。そうしましょう!
そしていざ振ろうとしたら、終わっちゃいましたよ!?
えー、もうちょっと長くても良かったと思うんですけど……。
そうして再び明かりが無く暗くなる会場。そこはステージの明かりが点くまで少し静かな時が流れていました。
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