第41話 光晶祭 -杭は差し込むべし-
「クリスタ君、これどこにどうやれば良いですかー?」
「えっとね、このままだとねこっちにね、ががーんってなるからね、そうならないようにねぴったり合わせてねずずーんってやってー」
「分かりましたー」
クリスタ君の指示通り、私はこのお家にぴったりと合わせ、この杭っていうらしい大きな木の先端が尖ったお家ぐらいの大きさのやつを地面に刺していきます。
その他の建物はコクヨーちゃんの指示でギルシュガルデさんや他の私衛兵さん達が皆さんで一本の杭を運んで作業を行ってます。
エアークイックをかけているので皆さん速い動きでなんかこう凄いです。
最初速さに慣れずに何人か怪我とかしちゃったみたいですけど、万能霊薬のお陰で傷も治って今では慣れたらしくて早く行動できてます。
それにしても魔宝石を使うとあんなに早く動けるんですね。初めて知りました。
ここに着く前にフクゥダ公爵様に魔宝石を使って―――って言われたのでクリスタ君からもらっておいて良かったですね。
それで、フクゥダ公爵様はちょっと取ってくるって言って何かを取りに行っちゃったので、今はいません。
その時、この間にある程度材料を持ってきて進めていようってギルシュガルデさんが言ってたので早速フクゥダ公爵様に言われた事を伝えて皆さんにエアークイックをかけたんですよね。
そして今では結構な数のお家の補強が終わってます。
これならあとすぐに終わりそうですね。
「れしあさーん、あとね二個ね、こことここにずずーんってやってー」
「はーい」
クリスタ君からの指示で地面に刺していきます。
それにしてもクリスタ君の指示は的確で分かりやすいです。
あと、クリスタ君達、岩食族はお家が傾いてたり崩れそうなのを見つける事が出来るって初めて知りましたよ。
それはフクゥダ公爵様に教えていただきましたけど、流石は種族に詳しいフクゥダ公爵様ですね。
「あのー、もう少し分かりやすく教えて頂けると嬉しいのですが」
私がクリスタ君に言われた二本目を地面に差し終えた時、そんな言葉が聞こえました。
見ると私衛兵さんがコクヨーちゃんに困った顔で言っている様子が見えます。
「分かりやすく言ったですけど、分かりにくかったです?」
「少し私には分かりにくかったですね。もう少し具体的にどうやれば良いのか教えて頂けると助かります」
「えっと、ですね、あそこのお家のあそこに合わせてそれを地面に刺すと傾かないです」
その私衛兵さんに対してコクヨーちゃんは身振り手振りも合わせて教えていますけど、私衛兵さん分からない様子で頬を掻いてます。
あんなに分かりやすいのに、おかしいですね。
あ、そうですよ!
「私が代わりにやりますよー!」
「え? あ、いえ。ここは私達が任されている場所なのでレシア殿の手を煩わせる訳には―――」
「いえいえ、任せて下さい! 早く終わった方が皆さん喜びますし!」
そうして私は私衛兵さんの後ろで杭を持って立っている人達の杭を担いでコクヨーちゃんが言ってたようにお家に合わせてその杭をお家の端の方にズズンです!
「れしあさーん、こっちこっちー!」
「はーい!」
そうしていたらクリスタ君に呼ばれたのでその方へ。
と、丁度、手に木箱を持ったフクゥダ公爵様が戻ってきたのが見えました。
「あ、フクゥダ公爵様ー。お帰りなさーい」
なので手を振って声をかけ、かけ……?
あ、あれ? 声をかけたんですけど、フクゥダ公爵様返事してくれないどころか、こっちも見てくれませんね。
というか、目を見開いて固まっちゃってるんですけど……。 どうかしたんでしょうかね?
あ、フクゥダ公爵様動き出したと思ったらギルシュガルデさんの方へ行っちゃいました。
ここからじゃ聞こえないですけど、何か話してるみたいですね。むむむ、なんでしょう気になります。気になりますけど、聞こえないです。
「れしあさーん、どーしたのー?」
聞こえるのはクリスタ君のそんな声。
って、そうでした。今はクリスタ君の指示に従って動いてたんでした。
「ごめんなさいクリスタ君。よそ見してました。それで次はどこに?」
「えっとね、あっちのねお家のところのね、少し離したところにずずーんってやってー。そしたらね、だいじょーぶだよ」
「了解です」
こうして私はクリスタ君の指示の元、杭を刺します。
ですけど、今回は地面が固くてなかなか刺しにくいです。むむぅ、ですけど、頑張らないと!
あ、そうです。そのままだと刺しにくいなら上から思いっきり差し込めば良いんですよ。よし!
そういう訳で私は飛行魔法で空を飛んで、さっきクリスタ君に指示された、少しくぼみのついた地面に杭を持って突撃ですー!
「やぁあああああ!!」
気合いを入れて突撃したら、さっきただ刺していたよりも簡単に杭が地面に刺さります。
ふふ、どんなもんですか!
「いや、お嬢さん。補強するのに、勢いが強すぎると思うんじゃが」
「へ?」
急に声をかけられて見たらフクゥダ公爵様でした。
「ふむ、本来であればこの丸太の間に魔宝石で障壁を張る予定じゃったが。この様子ではもう必要ないみたいじゃな。あちらはもう大丈夫とコクヨーが言うておったしの」
そう言ってフクゥダ公爵様は何故か少し寂しそうな表情です。
言われたとおりにやったはずなんですけど……。むむむぅ。私、何かやっちゃいましたかね?
「して、こちらは終わったのかの?」
悩んでいたらフクゥダ公爵様からそんな言葉が。
そういえばどうなんですかね? さっき大丈夫っては言ってましたけど。
「クリスタくーん。こっちってあと補強とか必要ですかー?」
「あと、だいじょーぶ」
確認したらあと大丈夫らしいです。なら、そう伝えれば大丈夫ですね!
「あと大丈夫だそうです」
「う、うむ? それは終わったということで良いのかの?」
「そうですね。もう大丈夫ですし」
「そうか。もう大丈夫なら大丈夫か」
「はい!」
フクゥダ公爵様にそう答えると納得してくれました。
それにしてもそんなに確認しなくても大丈夫って言ってるので大丈夫なのに、何か心配な事があるんでしょうかね? 少し落ち込んでいるような。
あ、もしかして持ってきた物が使えなくて少しがっかりしてるとかですかね? うーん、それは少し可哀想な事をしちゃいました。
「おりなー、こっちは終わったですー?」
と、そう思う私の横をコクヨーちゃんがてててーと駆け抜けクリスタ君の元へ。
「うん! 終わったよー!」
「そうですか。なら終わりですね!」
「これでお姫様喜ぶね!」
「ですです! お姫様もにこーってなれるです!」
二人はそう言って楽しそうに笑っています。
ふふ、なんでか分かりませんけどその会話を聞くとこちらも笑顔になっちゃいますね。
「まあ、じゃが、これで一応光晶祭の再開は出来るな。皆、ご苦労さんじゃ」
フクゥダ公爵様の言葉。
それに皆さんがこれまた嬉しそうに返事をしてますけど声が大きくなっててびっくりです!
ですけど、皆さん本当に嬉しそうで、なんだかこっちを見ても嬉しくなってきますよ。
それに、フクゥダ公爵様もさっきのがっかりしたような様子とは違って嬉しそうにしてて良かったです。
「では、我等はこのまま会場の復元に取りかかります。グリノレッジ公爵様は宝晶族様をお連れして下さい」
そしたらギルシュガルデさんがそんな事をフクゥダ公爵様に言いました。
すると何人かの兵士さん達がどこかに行っちゃいました。あの様子、何か凄い事をするみたいに感じますね。
「れしあさん終わったね!」
「です。終わったですー」
そんな兵士さん達の様子を見ていたら嬉しそうにクリスタ君とコクヨーちゃんが抱きついてきました。
ふふ、余程嬉しいみたいですね。
「では、お嬢さん方一旦ワシの屋敷に戻ろう。トパーズにも知らせねばならんしのぅ」
「はい!」
「はーい!」
「はいです!」
こうして私達は一旦お屋敷に戻る事に。
ふふ、待っていて下さいトパーズサイト様。お祭り出来る事を報告して笑顔にさせて見せますよ!
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