第40話 光晶祭 -光合成とは-

「すみません。私のために」


 フクゥダ公爵様に頼まれて、髪を渡した後、案内された部屋に用意されたお菓子とお茶を頂いて、そのままフクゥダ公爵様の事を待っていたら、トパーズサイト様が突然すまなそうにそんな事を言ってきました。

 急にどうしたんでしょうかね? あ、もしかして髪を渡したことを言ってるんでしょうかね? なら―――――


「気にしなくて大丈夫ですよ。また伸びてきますし」

「ですが、あんなに長く綺麗な髪でしたのに、バッサリ切ってしまって」

「良いんですよ。これで皆さんが助かるんですから。」


 少し後ろが涼しいですけど、これはこれで新鮮で別に困ってませんし。

 それに、また伸びてきますからトパーズサイト様が気にする様な事じゃないですけど。


「ごめんなさい」


 ですけど、トパーズサイト様はそんな私に頭を下げて再度謝ってきました。

 むむー、別に謝らなくても良いんですけど……。


 あ、そうです!

 あんなに気にしてるなら、気にしなくなるようにすれば良いんですよ。また伸びるのを見せてあげれば納得するでしょう!


「トパーズサイト様、大丈夫です。私がまた伸びるのを証明して見せますから!」


 と言う訳で、私は窓の傍に行って、気合いを入れます! 気合いを入れて光合成です!

 むむむむむむ!


「わあ! れしあさんの髪キラキラしてるー!」

「凄いです! 綺麗ですー! あと、髪も伸びてるです!」

「え? えぇ……」


 私の光合成を見て、クリスタ君とコクヨーちゃんの歓声が聞こえます。

 ふふ、凄いでしょう凄いでしょう!

 ですけど、何故かトパーズサイト様から聞こえたの歓声じゃ無いですけど。

 まあ、それよりも、これくらい伸ばせば大丈夫ですよね。これでトパーズサイト様も気にせず大丈夫だという事が分かったと思います。


「ふふ、これで謝らなくて大丈夫な事証明できましたよね!」

「え。あ、えーと、はい」


 なんか凄く歯切れの悪い回答が帰って来たんですけど……。


「れしあさん凄ーい!」

「です! 髪がにゅーって伸びたです!」


 と、トパーズサイト様とは違ってクリスタ君、コクヨーちゃんの二人が凄く目を輝かせて大絶賛って感じで話しかけてきてくれました。

 なんというか、本当はトパーズサイト様に喜んでいただきたかったんですけど、でも、まあ、悪い気はしませんね。


「れしあさん、僕も髪伸ばしたーい」

「です! 私もにゅーってしたいです!」


 ふふ、なんでしょう。二人の声を聞いたらなんというか明るい気分になって来ました。

 なってきましたけど、


「そうですねぇ。教えたいですけど、これは光合成が出来ないと出来ないのでクリスタ君達には出来ないと思いますよ」

「そーなの?」

「です?」

「はい」


 私がそう答えると、二人は顔を見合わせて


「ねえねえ、れしあさん。光合成こーごーせーって何ー?」

「です! 光合成ってなんです?」


 そしたら今度はそんな質問が。

 どうやら光合成知らないみたいです。ふふ、であればここは私が教えてあげましょう!


「光合成とはですね」

「光合成とは?」

「なんです?なんです?」

「光合成とは、お日様の下で行うと気持ちよくて、お腹もいっぱいになる不思議で凄い事です!」

「そーなんだ!」

「凄いです!」


 説明にクリスタ君とコクヨーちゃんは目を輝かせて絶賛です。

 ふふ、これは久々に気持ちいいですね。やっぱり教えるのは楽しいですね。


「僕も光合成出来ないかなー?」

「です! 私も光合成したいです!」


 そしたら今度は光合成したいって言い始めちゃいましたね。

 ですけど、


「光合成はアルラウネやトレントとかの植物の種族しか出来ないってお母さん言ってたので多分クリスタ君達は出来ないと思いますよ?」

「そっかー」

「残念です」


 私の言葉に二人はシュンとしちゃいました。

 その姿を見て少し可哀想に感じますけど、こればっかりはどうしようも出来ませんからね。


「あ、じゃあ、それ、れしあさんの種族特技なのー?」


 と、クリスタ君が突然そんなことを。

 うーんですけど


「違うんじゃないですかね? だってアルラウネ以外にも使える方いますし」

「そーなの?」

「そうですね」

「そっかー」

「そうなんですかー」


 私の返答に二人は「ほほー」って感じで納得してくれました。

 なんというか、この様子を見て思うんですけど、やっぱり二人と話すの楽しいですね。


「入っても良いかの?」


 すると、ドアのノックの音と共にフクゥダ公爵様の声が聞こえてきました。

 帰ってきたみたいですね。


「はい!」

「うん!」

「です! 入っても良いです!」

「では、失礼するぞ」


 そう言ってドアが開き、フクゥダ公爵様が入ってきました。

 その表情はなんというか晴れ晴れとしているようなそんな表情です。


「いやぁ、レシア。お前さんのお陰で皆助かった。礼を言おう。ありがとうのぅ」

「いえいえ、お役に立てて私も嬉しいですよ」

「そう言って貰えるとはありがたい。でじゃ。お前さんに謝罪と感謝を込めてワシからお前さん用に武器を作ろうと思うのじゃがどうじゃろうか?」

「え?」

「ほれ、屋敷に入った時にあの、ブレローと言ったか。彼奴がお前さんの親の形見の剣に引かれ、封印を解いた際にどうしてくれると泣いておったじゃろう。お前さんの親の形見程とはいかぬが、わしも昔は鍛冶をやっていたのじゃ。そのノウハウを全て駆使してお前さん用の武器を作ろうと思っての。どうじゃ?」


 ど、どうじゃと言われても


「フクゥダ公爵様」

「なんじゃ? やはりそれだけでは足りん―――」

「武器作れるんですかー!?」


 意外です! なんかこう武器を作る人って、コーメインで採掘体験した後に坑道からの帰り道に鍛冶屋さんでチラッと見かけましたけど、なんかこう穏やかなフクゥダ公爵様みたいな人じゃ無くて、厳つくて怖い感じの人だったのでそういう人が行うものだと思ってましたよ!


「う、うむ。元々、といっても五百年前じゃがこの街がイファブリーノであった時は鍛冶連合組合にいたからのぉ。その時に比べれば腕は落ちたかもしれんが、ノウハウはバッチリじゃ」


 言ってることよく分かりませんが、なんかこう凄いって事は分かりますね。それに親指を立てるフクゥダ公爵様、凄く信頼して良さそうな気がします。


「それでじゃ、お前さんはあの大剣を振るっていたようじゃから武器は大剣で良いじゃろう?」

「はい。ずっとお母さんから教えられたのでその方が良いです」

「うむ、では明日でも良ければ明日でも良いが、後日武器を振るう姿を見せてもらいたい」

「武器を振るう姿ですか?」


 なんで私が武器を振るう姿を見たいんでしょうか?


「うむ、お前さんの癖やなにやらを見てみたいからのぅ。折角作るのじゃ。それに合わせて作らねばの」

「なるほど」


 つまり、私にあった武器にするために必要な事なんですか~。ふむふむ。あ、そう考えたら凄くやる気が出てきましたよ!


「分かりました! それじゃ今からでも大丈夫ですよ! やりましょう!」

「いや、すまんが今からはちょっと」

「なんでですかー!?」


 何故かフクゥダ公爵様に今日はダメって言われちゃいましたよ! 折角やる気が凄い出てるのに! むむぅ。


「本来であれば行う予定では無かったが、万能霊薬を持って避難所に行った時にのぅ、怪我を治し終えた時に皆から言われたのじゃ。光晶祭を続けて欲しいとな。じゃから、建物の崩壊の危険性もある中やる予定では無かったが、隣で聞いていたギルシュのやつが崩壊の危険のある建物を補強すると言い出しての。急遽、光晶祭を行う事となったのじゃ」


 なるほど。だから今日はダメなんですね。


「それで、補強のための協力を仰ぎに来たのじゃが、良いかの?」


 と、フクゥダ公爵様がそんな頼みをしてきました。

 ふふ、それなら―――


「任せて下さい! 私、頑張りますよ」

「ああ、うむ。レシア、お前さんでは無い」

「え? 私じゃ無いんですか!?」

「いや、まあ、人は多い事に越した事は無いが、協力して欲しいのはクリスタとコクヨーお前さん方だ」

「ふえ?」

「私とおりなーです?」


 え? なんでクリスタ君とコクヨーちゃんなんでしょうか?

 私の方が力持ちですし良いと思うんですけど……?


「よくわかんないけど、お姫様をえへへーってしたいから頑張るー!」

「です! お姫様のために頑張るです!」

「そうか。では、よろしく頼むぞ」

「ちょっと待って下さい!」

「きゅ、急にどうしたのじゃ。レシアよ。勢いよすぎて心臓―――」

「私もトパーズサイト様を笑顔にしたいので協力します! いえ、させて下さい!」


 そうですよ! 私もトパーズサイト様を笑顔にし隊なんですからお手伝いしたいんです! 

 いえ、しなきゃいけないんです!


「いや、しかし、これからするのは補強のための材料運びとかになるから、お前さんはゆっくりとしておって良いんじゃぞ?」

「私も運びますよ! 私、こう見えても薪とか運ぶの得意だったんですから!」


 そうです。薪にする木とか丸太とか良く運んでましたし。


「いや、薪程度の重さの比では無いからのぅ」

「そ、そうなんですか?」

「そりゃそうじゃろう。家ひとつを支えるための資材運びになるんじゃから」


 フクゥダ公爵様の言葉に確かにって思いました。

 うう、それじゃあ、私、お手伝いする事出来ないんですかね?


「あ、そーだ! あのね、れしあさんね。こうね、びゅーんってする魔法まほー得意なんだよ!」


 私が落ち込みかけたその時、クリスタ君がそう言いました。

 びゅーんってする魔法ってなんでしょう? 飛行魔法の事でしょうかね?


「びゅーんとする魔法? なんじゃそれは?」

「えーとね、えあーくいっくって魔法だよ!」


 あ、そっちの事でしたか。

 確かに走ってる速度上げるのでびゅーんって感じになりますね。


「ほほう。エアークイックか。 それは今のこの状況ではありがたい魔法かもしれぬな」


 と、フクゥダ公爵様が私の方へ視線を向けてきました。


「レシア。お前さん、何人にその魔法をかけられる?」

「え? えーと、わかんないですけど、三人にはかけた事ありますよ?」

「そうか。であれば、魔宝石を使えばおつりが来るくらいか。うむ、良し。レシア、お前さんにも協力してもらっても良いか?」

「はい。勿論です!」

「うむ。であれば、早速出発じゃ!」

「はい!」

「うん!」

「です! 頑張るです!」


 こうして私達は建物の補強の協力に出発です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る