第38話 光晶祭 ー喪失ー

 私の予想、当たってしました。

 彼の掲げた私の剣はキィィィインって感じの甲高い音みたいなのが鳴り、剣にヒビが入ると同時にそのヒビからパラパラーって崩れて、あの、マイティアちゃんがやっちゃった感じで、輝く剣が彼の手にって―――。


「ええー!? ちょっと、私の剣が、私の剣がー!」


 マイティアちゃんの時みたく、剣が全く違う感じの剣になっちゃいました! それ私のお母さんの形見なんですよ!?

 それなのに、それなのに!!

 全く完全に別の剣になっちゃってるじゃ無いですか!!


「そ、それは、古より伝わる聖剣ステラーダではないか!?」


 嘆く私の横でフクゥダ公爵様が驚いた様子です。

 でも、そんな事より私の大事な形見が、なんか見たことも無い形になってますよ。って、あれ、もしかして、というかもしかしなくてもマイティアちゃんの時みたくその剣は光になって消えちゃいました。消えちゃいましたよ!!?


「す、ステラーダ? 確か遙か昔のおとぎ話に出てくる英雄が持つとされた物ですよね? 何故そのようなものが?」


 オーラ様が驚いている声が聞こえます。

 聞こえますけれど、私のお母さんの形見が二つとも消えちゃいました!

 え? なんで、こんな事が。いえ、こんな事に?


「いや、分からぬ。分からぬ事が色々多すぎる。それに、この剣を持っているとは、うーむ、レシアお前さん一体何者なんじゃ? 教会本部から持ち出されたという記録も事件も無いというのに、何故剣がお前さんのバッグから出てくるんじゃ?」


 フクゥダ公爵様が問いかけて来ますけどっ

 そんな事知りませんよ。知りませんし、そんな事よりも、お母さんの、お母さんの形見だったんですよ? 私のお母さんの剣が。

 その気持ちが心の中でグルグルして―――


「知りませんよ! それにあれはお母さんの形見だったんです! もう、なんでこんな事になるんですか!!」

「う、うむ、そ、そうか。まあ、そんなに興奮するな」

「興奮するなって、私、これでお母さんの形見無くなっちゃったんですよ!? どうすれば良いんですか!? それに、どうやってこれから旅での危険を倒せば良いんですか!?」

「いや、それをワシに言われても―――」

「ちょっと、レシア」

「なんですか!」


 コロンさんに反論しようとしたら急に私の袖が引っ張られました。

 誰ですか! こんな時に!

 そう思って見ると、クリスタ君がなんとも言えない様子で私の顔を見ています。一瞬、そんなクリスタ君にムッとしちゃいましたけど、クリスタ君の少し怯えた様子に少し冷静になれました。

 そうです。誰に当たったところで解決なんてしないですよね。もう、目には無い事が証明されたんですから。お母さんの形見。でも、でも、お母さんの形見、もう無いんですよね。

 ああ、もう、色々訳が分らないですッ!!!


 気がついたら私はしゃがみ込んでクリスタ君に泣きついてました。

 そんな私をクリスタ君はなでなでしてくれてます。

 正直普段だったら、恥ずかしいです。恥ずかしいですけど、なんでしょう。今は頭の中が色々こんがらがってて、訳が分らないです。


 優しくて、強くて、怖くて、でも、憧れだったお母さん。

 剣が光になった瞬間、それがなんだか消えてしまった様な気がしてしまって。

 でも、お母さんはもう既にいないんです。分ってます。お母さんは空の上にいるんです。

 でも、でも……。


「れしあさん、だいじょーぶ?」


 頭の中で色々浮かんできた時、かかる言葉に顔を少し上げるとクリスタ君の顔が見えました。その表情は少し不安そうにしています。

 ああ、私、しっかりしなきゃいけないのに、クリスタ君を不安にさせちゃったみたいです。

 これはしっかりしなきゃですよ!


「クリ、スタ君。ごめん、な、さい。もう、大丈夫です、よ。ありがとうございます。クリスタ君」


 立ち上がってクリスタ君にお礼を言いますけど、クリスタ君は凄く心配そうに私の方を見ています。

 ですけど、お礼と一緒に頭を撫でてあげると、目を細めて気持ちよさそうにすると彼も不安な顔からいつも通りの表情に戻りました。


「落ち着いたようで何よりじゃ」


 と、声がかかり見ればフクゥダ公爵様とオーラ様が傍に立っています。

 って、そういえば、フクゥダ公爵様には急に取り乱して色々言っちゃって迷惑かけちゃいましたし、それに、私、急に泣いてしまいましたし。

 うう、申し訳ないですし、恥ずかしいです。


「先程は失礼しました」

「よいよい。……しかし、色々聞かねばならぬ事が出来たな。もし良ければじゃが、その、母親、というよりもレシア。お前さんの家族について教えてくれぬか?」

「私の、家族ですか?」

「うむ。できれば、クリスタと言ったな。お前さんに関しても色々聞きたい」

「僕も?」


 私達の家族のことを聞いてどうするつもりなんでしょうかね?

 よく分かりませんけど―――


「私は大丈夫ですよ」

「僕も!」


 私とクリスタ君が頷くとフクゥダ公爵様は「そうか」と言うと付いてくるように言われたのでついていきます。

 あと、ついでにオーラ様とセナさんとあの遺跡にいたあの人も呼ばれて一緒についてくる事になりました。ですけど、コロンさんだけ他の方に話しかけられて別の方へと行っちゃいました。

 そうしてコロンさん以外の私達はフクゥダ公爵様の部屋らしい場所へとやってきました。

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