第35話 光晶祭 ー力不足ー

「そう、魔王……。正直信じられないけれど、この状況的に事実なのね」


 カリンさんにここであった事とかを説明したら、カリンさん少し困った顔をしましたけど納得してくれたみたいです。

 でも、なんとなくまだ納得してない感じがしますけど。


「んー、聞きたい事は色々あるけれど、とりあえず皆を連れて帰った方が良さそうね。私もここに来るまでに出てきた同僚とかと抗戦して魔力使って、疲れたわ~」


 ふぅーと溜息をついてカリンさんは頬に手を当てました。

 なんというか疲れたーって感じです。


「ねえねえ、かりんさん」


 と、そんなカリンさんにクリスタ君がいつもの質問をする口調で話しかけました。

 どうかしたんでしょうかね?


「ん? 何かしら?」

「どーりょーってなーに?」


 どうやらクリスタ君、同僚って言葉を知らなかったみたいです。

 ふふ、ここは本で知った知識を私が教えてあげましょう!


「え? あ、その。それに関しては知らなくて良いのよー? クリスタちゃんにはまだ早いわ」

「そーなの?」

「そうよ」


 え? 同僚って言葉、クリスタ君が知るには早いんですか?

 うーん、言葉を知るのに早いとか遅いとかあるんでしょうかね? むむぅ、謎です。


「それよりも、早く皆を連れて帰った方が良いわね。ほら、レシアちゃんも頑張って運ぶわよ!」


 カリンさんのその言葉に咄嗟に「はい」って言っちゃいましたけど、なんでしょう? 雰囲気的に私、クリスタ君に教えるタイミング逃した気がしますよ!?

 でも、確かに皆さんの事はお外に連れて行った方が良いですよね。


「それじゃあ、私はレオンちゃんとクレサンちゃんを連れて行くからレシアちゃんは他の子達をお願いするわね」


 カリンさんはそう言うとレオンさんとクレサン様を担ぎます。

 えーと、なら。


「私は、ルーファンさんとディアナさんを連れていきますね」

「じゃあ、僕、まいてぃあさん連れてくー」


 私が二人を担ごうとしたらクリスタ君がそう言ってマイティアちゃんの元へ。

 んー、でも、マイティアちゃんも結構身長低いですけどクリスタ君より大きいですから、クリスタ君大丈夫ですかね?


 そう思って見ていたら、思ったよりもあれでした。その、クリスタ君、頑張っている様子ですけど全然マイティアちゃんの事持ち上げられていません。

 というか、手を上に引っ張っても腕が上がるだけですよクリスタ君。

 って、ああっ!

 クリスタ君引っ張って、勢い余って転んじゃって、その上に引っ張られた勢いでマイティアちゃんが乗っかっちゃいました!


「クリスタ君、大丈夫ですか!?」


 慌てて二人を担ぎながらクリスタ君の元へ行くとクリスタ君は「だいじょーぶ」って返答してくれました。

 でも、自分より大きい人乗ってたら重いですよね。

 とりあえず担いでいた二人を降ろして、マイティアちゃんを持ち上げないといけないですね。


 ということで担いでいる二人を床に寝せる形で置き、マイティアちゃんを持ち上げます。


「ありがとー、れしあさん」


 マイティアちゃんの下にいたクリスタ君はそう言うと、よいしょっと起き上がります。


「もう、クリスタ君。びっくりしましたよ。気を付けてくださいね?」

「はーい!」


 元気な返事が聞けたので次は大丈夫だと思いますけど、マイティアちゃんは私が持った方が良いかもしれませんね。

 ……あれ? そういえば。

 マイティアちゃん、さっきまで使っていた私の武器持ってないですね。

 うーん? どこかに落としたんでしょうか?


 って、そうです。私のもう一本の剣は……。

 と周囲を見渡すと、ありました。

 とりあえずこれは今のうちに回収した方が良いですね。


 そういう訳でマイティアちゃんを一旦床に降ろして剣を回収です。

 でも、皆さんを運ぶとき邪魔になると思うのであのいっぱい入る鞄にしまっちゃいましょう。


 そうして私は剣をいっぱい入る鞄の中に入れて、ルーファンさんとディアナさんを担ぎ直します。


「んー!」


 そんな声が聞こえて見るとクリスタ君が今度はマイティアちゃんの足側から両手を引っ張っています。

 けど、全くでは無いですけど上半身が少し浮いてるくらいしか動いてないですよ。クリスタ君。


「クリスタちゃん、無理はダメよ?」


 そんなクリスタ君にカリンさんが優しく話しかけます。


「頑張るのは良いのだけれど、クリスタちゃんとマイティアちゃんがお互いに怪我したら大変だもの。だから、二人はここで待っててちょうだい。私が今からこの二人を運んで戻ってくるから」


 と、カリンさんはそう言うと入ってきた扉から出て行っちゃいました。

 うーん、私も一緒に行った方が良かった気もしますけど。

 でも、待っててと言われたのでクリスタ君と待ってましょう。


「待っててって言われたので、クリスタ君。カリンさんが来るまで待ってましょうか」

「うん」


 私の言葉に返答するクリスタ君ですけど、少しシュンってしてます。

 クリスタ君、頑張りたかったんですよね。分かります。その気持ち。

 どうにかしてあげたいですけど、どうにも出来ませんし。

 うーん、ここは気分転換をした方が良いかもしれません。

 何かー、何かありますかね?


 そう思って辺りを見渡しても、んー、特に何も無いです。

 あるのは見るからに棺って感じのものですし。

 うーん、とりあえずルーファンさん達を近くにまとめておいた方が良いですね。


 ということで私はルーファンさんとディアナさんとマイティアちゃんを近くにまとめて、そうですね。あとは……。


「クリスタ君、座って待ちましょうか」

「うん」


 という事でクリスタ君と座ってカリンさんを待つ事に。

 でも特に何かする訳でもないので、私の隣に座ったクリスタ君まだ落ち込んでますね。

 うーん、どうしたら良いでしょうか?


 何か良い方法があれば良いんですけど、全然思いつきません。

 むむう。こういう時、何か話題があれば良いんですけど。

 うーん……。


 考えているんですけど、全く思いつきません。


「れしあさん、どうやったら力持ちになれるの?」


 そう考えていたらクリスタ君からそんな言葉が。

 その状況に私の頭がピピピンッと反応します。これは、このタイミングに乗るしか無いですね!


「クリスタ君は今は小さいから無理ですけど、いずれ大きくなったら力持ちになれますから焦らなくても大丈夫ですよ」

「そーなの?」

「そーなんですよ。私も小さい頃、その時重たかった物持てなかったですけど、大きくなったら持てましたから」

「そーなんだ」

「そうなんです」


 ふふ、私の言葉にクリスタ君は目を輝かせてくれました。

 これは良い感じですね! やっぱりこういう経験があってって言われると少し安心しますよね。

 私も小さい頃、あんまり力持ちじゃ無くて、両手で半分の長さの丸太しか持てなかったですし。

 ふふ、少し懐かしいです。


「じゃあ、僕も大きくなって力持ちになれるように頑張る!」

「はい。頑張って下さいね」

「うん!」


 ふふ、どうやらすっかり元気になったみたいです。


「でも、どーやって大きくなれば良いの?」


 と、クリスタ君が訊ねてきました。

 ふふ、ここはいつものように教えてあげましょう!


「いっぱい食べて、いっぱい動いて、いっぱい寝ると良いんですよ!」

「そーなんだ!」

「そうなんです」

「じゃあ、いっぱい食べるー!」


 クリスタ君は元気にそういうと、ベルトに付けた鞄から石を取り出してボリボリと食べ始めました。

 ふふ、もう完全に元気いっぱいですね。

 って、今、石を取り出した時、黒い物が鞄から落ちましたけど。


「クリスタ君、何か落ちましたよ?」

「んう?」


 私が指さしてクリスタ君がそれを見ると、黒い石みたいなのが転がりルーファンさん達の方へ。


「あ、かりんさんからもらった石―――」


 クリスタ君がそう言った時、黒い石がマイティアちゃんに触れ、その瞬間なんというかボワッて感じの魔力が出て、マイティアちゃんがそのボワッて感じの魔力に包まれて、近くにいたルーファンさんとディアナさんも同時に包まれて、シュンって消えちゃいました。


 一瞬の事で呆然としてましたけど、これ、あれですよね?

 なんというか、こう、まずいですよね。


「凄ーい! 皆、急に消えちゃった!」

「そんな場合じゃ無いですよクリスタ君! 皆さん、どこに行っちゃったんですかー!?」

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