第33話 光晶祭 ー霊廟ー

「あなた達、無理に来なくても良かったのよ?」

「いえ、私達もお手伝いしますよ! ね、クリスタ君」

「うん!」


 凄く良い返事を返してくれたクリスタ君と共に、私はカリンさんの後をついて広場を目指しています。

 それ以外の皆さんも最初は行こうとしたんですけれど、お屋敷にフクゥダ公爵様とオーラ様が来て、犯人が分かった以上はトパーズサイト様を屋敷に置いておいた方が安全っていう感じの話になって、コクヨーちゃんもそこに残った方が良いとの事で残りました。


 その時コロンさんが「私も残りたい」って言って、フクゥダ公爵様もコロンさんは残った方が良いという話になって、今、私とクリスタ君、カリンさんが向かってるって感じですね。


 そういえば私が行くって言ったら皆さんに止められちゃいましたけど、私も何か力になりたいんですって言ったら、危なくなったら引き返してくるようにって言われて許可が出ました。

 その時はクリスタ君は何も言いませんでしたけど、私が部屋を出たらクリスタ君が後ろからやって来て「行く」って言ってくれてついて来てくれたんです。


 そして、フクゥダ公爵様から勇者さん達に場所を教えてもらったらしい入り口の詳しい場所を教えてもらえたのでそこに向かっている訳です。

 すぐにその場所に向かったはずの勇者さん達にいつ出会ったのか分からないですけど、これで私達もすぐに追いつけますね!


「それにしても、霊廟の場所があの会場の所にあったなんて。誰も気付かなかったのは不思議だわ~」


 カリンさんは走りながら頬に手を当ててそう言いました。

 凄く器用な感じですけど、いえそれよりも、何が不思議なんですかね?


「何が不思議なの?」


 と、私が疑問に思っていたら抱えていたクリスタ君が先にカリンさんに問いかけました。

 クリスタ君も疑問に思ったみたいですね。


「だって、あそこは元々広場だったんですもの。今と変わらず、行商人の露店もあったし、子供達とかよく遊んでいたの。それに、お祭りなんかの行事もそこで行っていたのよ。なのにそこに入り口があって今まで見つけられていないなんて不思議だわ。誰かがふとした拍子に見つける可能性だってあるでしょ?」


 確かに。そう言われて見ればそんな気もしますね。

 あ、なんだか私も不思議に思えてきましたよ!


「でも、そうよね。当時もいた岩食族達も、そのオリナーでさえ分からないように隠されてたんだもの。普通じゃ見つけられないわよね」


 あれ? なんかカリンさんが何故か納得しちゃいましたよ?

 むむむ、謎です。というかカリンさんの口ぶり、クリスタ君が呼ばれてるオリナーっていうものの事を知ってるみたいですね。

 あ、じゃあ、聞いてみるのも良いかもしれません。


「あのー、カリンさん」

「何かしら?」

「オリナーって何なんですか?」

「え?」


 問いかけたらカリンさんが急に止まっちゃいましたよ!?


「カリンさん、どうかしましたか?」


 立ち止まって声をかけます。

 あ、もしかして私、変な事言っちゃいましたかね……?


「あー、まあ、そうね。知らなくても仕方ないのかしら。岩食族自体今では絶滅種族扱いですものね。だからトパーズちゃんは新しく宝晶族なんて呼ばれ方してるんですもの」


 うんうんとカリンさん納得しちゃいましたけど、えーと、何に納得してるんですかね?

 むむむ、謎が謎ですよ。


「まあ、良いわ。とにかく走りながら説明するわね」

「はい。お願いします」


 そういう訳でまた走って移動を開始です。


「まあ、それで、種族関係に詳しいのはフクゥダちゃんだけれど、そうね。私が知ってる限りだと、オリナーっていうのは、岩食族の種族特技『爆破ブレイク』を持ってる子の事ね」

「そうなんですか」

「そーなんだ」


 カリンさんの言葉に感心しましたけど、そういえばコクヨーちゃんもブレイク使えるって分かった時にオリナーって言ってましたね。


「あと、そうね。オリナーは普通の子よりも身長が大きいわよ」

「え? そうなんですか?」

「ええ」


 身長が大きいんですか。

 あー、でも、確かにコクヨーちゃんより少し大きいですね。クリスタ君。


 まあ、私に比べればお二人ともまだまだ小さいですけど。


「私が知ってるのはここまで。あとはこの事これが終わってからゆっくりフクゥダちゃんに聞くと良いわ。こんな街の様子じゃ光晶祭なんて続けられないもの」

「分かりました」


 そんなやり取りをしているうちに広場へと辿り着きました。

 えーと、確か。


「フクゥダちゃんの話だと、ステージの裏側ここら辺に入り口があるのよね?」


 私が動く前にカリンさんが思い出しながらステージの裏へと進んでいきました。

 私もクリスタ君を抱えてそれについて行きます。

 その時、ふと胸元で動いた感じがして、見るとクリスタ君が少し視線を向けたり引っ込めたりしています。


 その場所を見てみると、あの魔法石の結晶でした。


 やっぱり怖いんですね。まるであの青い魔法石の結晶に見られてるみたいに、その視線から外れるように自分を隠すようにしています。

 うーん、さっきここに落ちた時は近くだったのに怖がってませんでしたけど。

 でも、クリスタ君怖がってるなら早めに移動した方が良いですね。

 という訳で移動すると、


「ここね」


 地面のレンガを退けて、入り口を見つけたみたいでカリンさんがそんな声を出していました。

 よぉーし、これでレオンさん達をお手伝いしに行けますね!


「それじゃあ、出発で―――」

「ちょっと待って」


 気合いを込めようとしたらカリンさんにそう言われちゃいました。

 どうかしたんでしょうかね?


「カリンさん、どうかしましたか?」

「あなた達にはここで待っててもらいたいの」

「へ?」


 待っててって……え?


「なんでー?」

「何でですか!?」


 カリンさんの言葉に驚いて問いかけます。

 でも、そうですよね!?

 ここまで来て外で待っててなんて!


「この先は何が起こるか分からないの。だから私に何かがあった時とか戻ってきた時に万全に動ける人が必要なの。分かるわね?」


 カリンさんはそう言って少し怖いような顔をします。

 なんていうか、今のカリンさん、ギルシュガルデさんみたいです!

 で、でも―――


「うん。分かったー」

「え?」


 私が返事に迷っているとクリスタ君がカリンさんに笑顔でそう言いました。

 って、分かったって……っ


「ふふ、それじゃあ何かあったら連絡するから。これを持ってて」


 そう言ってカリンさんは黒い石をクリスタ君に渡します。

 って、私はまだ了解してないんですけど!

 でも、カリンさんは地面の穴に入っていきました。その背中が見えなくなるまで私はただ見ていました。

 うう、もう。クリスタ君―――


「なんで分かったって言ったんですか!」

「だってね。皆がね。れしあさんに用事があるんだって」

「もう、何訳の分からないことを……へ?」


 えっと、皆が用事があるって……。


「クリスタ君、皆って、もしかしてコロンさん達ですか?」

「違うの。皆、だよ?」


 私が問いかけると、クリスタ君が指しました。

 そこはあの青い結晶です。というかクリスタ君、怖いみたいで少し声が震えてますけど……。


「そこにね、手を当ててって、皆言ってた」


 クリスタ君がそう続けました。

 手を当ててって――……。


「ただ、当てるだけで良いんですか?」

「えっと、分からないけどね。当ててって言ってた」


 いや、そこで分からないって言われても……

 うーん……。

 って、悩んでる場合じゃ無いですね。


「分かりました。それじゃあ、当ててみますね」

「うん」


 私の言葉にクリスタ君が頷きます。

 頷きますけど、少し元気が無いです。

 うーん、そういえばクリスタ君、これ怖いって言ってましたし……。


「クリスタ君、怖いなら待ってますか?」


 私がそう問いかけると、クリスタ君は首を横に振りました。


「僕も、頑張る」


 クリスタ君が震えながらそう言ってきます。

 震えてますけど、目は真剣です。なんというかあのコーメインでのゴーレムが出てきた時とは少し違って、更に真剣な表情です。


「分かりました。クリスタ君。行きましょう!」

「うん!」


 強く頷くクリスタ君。それと同じくらい、私の服を握る力が強いですけどね。


「クリスタ君、もしダメなら言って下さいね?」

「だ、大丈夫! 頑張る!」


 そんな話をしつつ、結晶へと近づき、私は手を触れてみました。

 冷たい感触が手に伝わって、それと、なんでしょうこれ。

 悲しいとか、苦しいとか、後悔とかそんな感じが何故か伝わってきます。

 なんでそんな感じが伝わってくるんでしょうか? この結晶には何かあるんですかね?

 むむむ……。謎です。

 そう思って、クリスタ君を見た私の腕の中で見ないように顔を埋めちゃってます。


 そんなクリスタ君に頑張りましたねって声をかけようかなと思っていたら突然、私の触れている場所が光始めてびっくりしちゃいました!


 驚いて咄嗟に手を離したら、その光は結晶を通るように上がっていきます。

 そして光は結晶の先端まで行き、光晶の儀の時のように上に光の球になって―――


 はっ!? また襲ってくるんでしょうか!?

 あの時はマイティアちゃんが助けてくれましたけど、今はいませんよ!

 あわわわ、ど、どどど、どうしましょう!


 あ、でもあの時は避けれたので、そ、そうです! 今度も避ければ良いんですよ!


 そう考えて身構えつつ光を見ていると、光はあの時とは違ってゆっくりと移動するじゃないですか。

 そして、光は私がいるところの横に来ると、光の粉を散らすような動きをして、なんと、人の形になっちゃいました!

 でも、私よりも小さくてまるでコクヨーちゃんくらいの大きさですね。

 って、あれ? この光の人型どこかで見たような……?


 あ、そうです! 確かマイティアちゃんが守ってくれた時にマイティアちゃんが出した透明な壁に手を触れてた光ですね。

 思い出せて少しすっきりしましたけど、その光が出てきた理由は何でしょうかね?


 そう思っていたら光は動き出して、振り返ると手でおいでおいでってやり始めましたよ。

 もしかしてついて来てって事なんでしょうか?

 クリスタ君の言ってた皆ってこの光の事なんでしょうか。

 うーん、悩んでいても仕方ありません。


 そういう訳でとりあえず、その光の下へと進んでいきます。

 私が光にある程度近づくと、光は歩いているかのように、というか歩いてますね。腕を振って足を上げて進んでいきます。

 まるで光の人って感じです。


 そんな光の人について行くと光の人は会場から少し離れた場所。

 トパーズサイト様のティアラを奪うために来た時に道が封鎖されて止められてしまってコロンさんとどうしようかって話していた建物の影へとやってきました。

 ここは建物が壊れて無くて分かりやすかったです。


 そしてここにやって来る頃には、クリスタ君も顔をあげて、先導をしてくれている光を見ていました。


 すると光は丁度私達が立って相談していた場所でぴょんぴょんと跳ねて、腕を大きく回し始めるじゃないですか。

 んーと? えーっと、なんでしょうかね?

 見ている分には可愛らしいって感じがしますけど……。

 何か伝えたいんですよね? むむむ……? なんでしょうか?

 ぴょんぴょんして腕を大きく回す。やってみれば分かりますかね?


「えっと、そこをぶれいくすれば良いの?」


 そう考えていたらクリスタ君が光に問いかけました。

 すると、光は頷きます。

 あ! ふふ、そういう事ですか。そこをブレイクして欲しいって事だったんですね。

 私は二人の会話から内容が理解できました。

 というか、クリスタ君、よく分かりましたね。

 それに光もクリスタ君がブレイク出来ることよく知ってますね。


 そうしてクリスタ君がブレイクって言うといつもの爆発音がして、地面に大きな穴が開きました。

 見下ろすと結構深そうです。というか深いですね。穴の下の地面が結構遠く感じるので。

 でも、なんというか私達の立っている地面と同じ感じでレンガが敷かれていますね。

 その穴の観察をしていると、穴の上に光が移動して、その穴を指さします。

 動作的に多分、ここに入れって事なんでしょう。

 というか、この穴、さっきまではそうでも無かったんですけど、少しずつですけど凄く嫌な雰囲気が漂ってくるのを感じます。

 明らかに何かあるのは確実ですね。


「えっと、クリスタ君。とりあえず行きましょうか」

「うん」


 クリスタ君が頷き、私はクリスタ君と一緒に穴の中へと落ちました。

 着地の際にはエアーフローで衝撃を緩和してですけど。


 そうして周りを見渡すと、私達が開けた穴からの光で少し見えにくいですけど、壁に光る石がありますね。

 そして道が左右に広がっていて、って、右を見たらなんか扉が見えます。

 しかもそこから嫌な雰囲気が凄く伝わってきて、なんというか背筋が寒いです。

 多分あの先に何かいたりあったりするんですよね。凄く、凄いものが。

 どうしましょう? 行くべきでしょうけど、何というか今までに感じたことの無い雰囲気が凄くて。

 でも、何かあるなら行った方が良いですよね。

 よし!


 そういう事で私は意を決して扉の元へ。

 凄く大きくて重そうな扉はなんというか凄く怖く感じます。

 この先に何があるのか分かりませんけど、とりあえず開けてみましょう。


 そうして扉に手をかけて思いっきり開け―――

 開け―――……


 むぎぎぎぎっ!

 力一杯押しても、引いても、開かないですっ!

 何でしょうかこの扉。開いて下さいよー!!


「れしあさん、あそこの壁ぶれいくする?」


 そうして頑張っていたらクリスタ君が扉の横の壁を指さしてそう提案してくれました。確かにその方が良さそうですね。


「お願いします」

「うん!」


 頷いたクリスタ君はブレイクで壁を破壊してくれました。

 よし! これで先に進めますね!


「さあ、行きましょうクリスタ君!」

「うん!」


 こうして私とクリスタ君は壁の向こう側へ。

 そこはなんというか道ですね。その先には明かりが見えるんですけど、なんか下から光が来てるような明かりの感じです。

 私はそこまでゆっくりとクリスタ君を抱えて進んでいくと、橋みたいになってる道ですねこれ。その下に光があって照らされてる感じです。


 というか、そこまでいくと人の話し声みたいなのが聞こえてきました。

 何かを話してるみたいです。


 少し様子を見るために橋の端から下を覗くと、広い空間で、いっぱい松明があって、何か立派な祭壇のような物と古いですけど立派な棺が見えます。

 そして、な、なんと。

 レオンさん達とマイティアちゃんが凄く、なんか凄い化け物と対峙してるじゃないですか!

 あ、あと、クレサン様を見つけました。というか、ルーファンさんの後ろで壁に寄りかかって寝てるように見えます。

 って、それよりも。あれ、なんですか!? 凄く黒くて怖いような感じの四つ腕の化け物がレオンさん達に攻撃してますよ!?


 その攻撃をレオンさんは弾き、マイティアちゃんがかわしています。

 その後方では魔法の詠唱をしている様子のルーファンさんをディアナさんが盾を構えて守るように前にいます。

 なんというか完璧な感じに見えますね。


「小癪な勇者共め! 世界を手中に収める我が野望を止めさせはせぬぞ!」


 そんなレオンさん達にその化け物はそう言います。

 凄く怖い声です。


「そんな事はさせない! ハァッ!!」


 その化け物にレオンさんはそう言って、離れた位置から剣を掲げて振り降ろしました。そしたら、あの光るのがビューンって飛んでいきましたよ!

 あれは、そうです。あの時の光って飛んでくるやつです。

 レオンさんはそれを何度も行い沢山の光るのが飛んでいきました。


 あれなら結構痛いでしょうから、あの化け物を倒せるでしょう。

 そこに詠唱を終えたルーファンさんの光る魔法が飛んでいき、ぶつかった様子で凄まじい光を放ちます。

 正直眩しいですけど、これ凄い力なので多分倒したと思いますよ!


「ムアァァアアア!!」


 そう思ってたらそんな声が聞こえて、レオンさん達に向かってなんか凄い闇な感じの魔法が放たれました。

 その攻撃をくらってレオンさんが吹き飛ばされて、壁に叩きつけられちゃいました!

 あわわわ!!

 というか、何ですかあれ!? 何ですかあれ!?

 凄く、凄いです! なんというかこの心のどろっとしたような感じの塊でしたよ!?


「レオン!」

「大丈夫か!?」


 そんなレオンさんにルーファンさんとディアナさんが声をかけると、レオンさんは剣を杖にして立ち上がりました。

 でも、結構ふらふらに見えますよ。大丈夫なんでしょうか!?


「ああ、そうだ。そうだな。早くここで勇者を片付ける事を優先した方が良いな。であれば我も全力で参ろう」


 凄く怖い声で化け物はそう言うと、なんか凄いモヤモヤした力が化け物の周りに渦巻いて化け物がなんかこう、もっと大きな化け物になりました!

 しかも、なんか凄い呪素を纏っててやばいですよ!


「ようやく、邪魔な種、邪魔な者を始末できたのだ。後は、勇者の血を消すだけだ!」


 その化け物はそんな事を言って手を広げるとそこに黒いモヤモヤの魔術と呪いの混合した塊が生成され始めました。

 あれは危険です!


 マイティアちゃんが皆さんの前に立ってあの薄い魔法の幕を出してますけど、あれじゃ簡単に壊されてしまうくらいの威力じゃ無いでしょうか!?

 こうなったら、というか、行かなきゃ行けないですね!!


「クリスタ君、ここにいて下さい!」

「や、僕も行くの!」


 クリスタ君をこの橋みたいな道に置いて二本の大剣を抜き、咄嗟にかけだそうとしたらクリスタ君が私の服を掴んでついて来ちゃいました。

 ああ、もう!

 今はそんな場合じゃ無いんですけど! でも、もう跳び降りちゃったので引き返せません!

 ええい! このまま剣を振り下ろします!!


「ていゃあ!!」

「ぐうっ!?」


 私の渾身の大振り攻撃で化け物の腕に剣が深く刺さります。

 そして化け物の生成していた黒い塊は霧散していきました。

 とりあえず一安心でしょう。って、あ、あれ? 刺さって抜けないんですけど、この後どうしましょう!?


「ぐぎ、貴様っ!」


 凄く怒ってます。あわわわわ!!


「ぬるぅぅああああ!!」

「わひゃー!!」

「わー」


 化け物が私のいる方の腕を思いっきり振った事で振り落とされてしまいました。

 うう、痛いです。


「れ、レシアさん、なん、どうしてここに?」

「お前達、何をやっているんだ!? 今すぐ安全な場所に逃げろ」


 どうやらレオンさん達の近くに落とされたみたいで、レオンさんとディアナさんからそう言われました。

 でも、


「いえ、逃げませんよ! 私達も何か手助けできないかと思って来たんですから!」

「うん! 僕も!」


 そうです! お手伝いのために来たんですから帰る訳にはいきません!


「残念だけど、戦闘経験の無いあなた達が同行できる場所でも場合でも無い。早く逃げて」


 そしたらルーファンさんがそう言って、あの化け物に向き直りました。

 た、確かにそうかもしれませんけど。

 でも、


「……レシアさん達にはそこのクレサン様を外に連れて行ってもらった方が良いと思う」


 私が言うよりも早くマイティアちゃんがそう言って、クレサン様の方へ視線を向けます。

 確かに何かあったら大変ですけど、でも―――


「危ない!」


 急にそんな声が聞こえてたかと思ったら、ディアナさん達が驚いた様子でこっちを見ていました。え? な、なんですか?

 そしたら急にマイティアちゃんの体勢が崩れてしまいました。というか、え?

 倒れたマイティアちゃんの背中からお腹を貫く形で私の武器の剣が刺さってます……。

 え? な、なんでですか?

 というか、血、血が……。


「ま、マイティア、ちゃん?」


 声をかけましたけど、返事がありません。

 でも、どうして。なんで、私の剣が?


「貴様の武器、丈夫で良いものだ。投げただけで人を簡単にやれる」


 頭が真っ白になる中、私の耳に化け物のそんな声が聞こえてきました。

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