第31話 光晶祭 -導きの遺言-

 教会内。私達はレオンさん達からあった事を聞きました。

 なんというか凄い事になってるみたいです。

 というのも、クレサン様がなんとイファブリーノ国王の幽霊に体を乗っ取られているそうなのです。


 イファブリーノ国王という人がどんな人かは分かりませんけれど、体を乗っ取られてるって大変な事ですよ!

 だって、知らない人に体とかに入られたら何されるか分からないですし。もしかしたら、誰かを傷つけられたり、誰かのご飯を奪うような行動をとらされたりして大変な事になったりしたりするんですよ!?


 で、レオンさん達はクレサン様とイファブリーノ国王を離す事が出来ないかって思いながら戦ってる最中に街にキングゴーレムさんを出現させられて、それに気をとられた一瞬にあの呪いを発動させられたんだそうです。


 その時に呪いの不穏な魔力を感じ取ったルーファンさんがレオンさんをかばって呪いにかかり、ルーファンさんはそこで気を失ってしまったらしくて、そこから先は覚えてないそうです。


 そして、体を乗っ取られたクレサン様の魔法で吹き飛ばされてキングゴーレムさん達が暴れていた場所まで吹き飛ばされたんだそうです。


 レオンさん達、吹き飛ばされたのによく無事ですね。


「それで、クレサンは、どこに?」

「推測ですが、クレサン様。もとい、イファブリーノ国王の調べていた資料から昔の王家の眠る霊廟れいびょうに向かっているんだと思います」


 トパーズサイト様の言葉にディアナさんが丁寧に説明してくれました。

 霊廟って、確か古いお墓の事でしたっけ?

 私の家にあった本にそう書いてあったと思いましたけど。


「ねえねえ、れしあさん」


 思い出しているとクリスタ君に服をくいくいって引っ張られました。

 どうかしたんでしょうか?


「なんですか? クリスタ君」

「れーびょーってなーに?」


 どうやら霊廟について知らなかったみたいです。

 であれば教えてあげましょう。丁度思い出してきましたし。


「霊廟っていうのはですね、昔の人のお墓ですよ」

「お墓?」

「そうです。お墓です」

「お墓ってなーに?」

「え? クリスタ君、お墓知らないんですか?」

「うん」


 こくりと頷くクリスタ君。

 どうやら本当に知らないみたいですねこの反応。……って、クリスタ君、お墓を知らないんですか!?


「それで、お墓ってなーに?」


 クリスタ君の言葉に驚いていたらクリスタ君から質問が。


「えーと、お墓って言うのはですね、亡くなった人を埋葬まいそうした場所の事を言うんですよ?」

「まいそー? まいそーってなーに?」


 へ?


「埋葬ですよ? 亡くなった方を埋めるんです。知らないんですか?」

「うん」


 ええ、埋葬を知らないって。


「それで、まいそーってなーに?」

「えーと、埋葬っていうのは無くなった方の体を埋めて土に返すんですよ」

「なんで?」


 え。な、なんでって。

 確か魂は神様によって体に入れられるもので、亡くなったら魂は天にいる神様の元に返して、体は天からきた魂を受け取る大地からの器だから大地に返すみたいな感じってお父さんが言ってたような。

 確かそう言ってましたね。

 思い出したのでクリスタ君に説明してあげましょう。


「体が大地の器だからですよ」

「?」


 あ、あれ? クリスタ君、首を傾げちゃいましたよ?

 何か分からなかったんでしょうかね?

 凄く分かりやすく説明したんですけど……。


「二人とも、話はそれくらいにして」


 それを説明しようとしたらコロンさんに止められちゃいました。

 って、あれ? コロンさんとトパーズサイト様、そしてコクヨーちゃんとシスターさんしかいです。レオンさん達とオーラ様達、マイティアちゃんがいなくなってますよ。

 どこに行っちゃったんでしょうか?

 うーん? あ、そうです。コロンさんに聞けば分かりますよね。


「あの、コロンさん。レオンさん達、見当たらないんですけど」

「レオン様達は霊廟に行くって、マイティアとオーラ様達はフクゥダ伯爵様のところに行くって言って出て行ったよ」


 セナさんにした質問だったんですけどコロンさんが答えてくれました。

 ふむふむ成る程。そうなんですか。

 いつの間に行ったのかは分かりませんけど、というか気付かないかったですけど……。


「で、私達は引き続き宝晶族様の護衛だから宿に戻って色々物持ち出して避難場所に行くから」

「了解です」


 コロンさんの言葉にそう返答すると、コクヨーちゃんも続いて「了解です」って返答しています。

 そういう事でとりあえず教会を後にして移動です。


「そういえばれしあさん」

「ん? なんですか?」

「なんでそのおー様、お墓に行ったんだろーね?」


 ふとクリスタ君がそんな事を聞いてきました。

 そんなの決まってますよ


「お墓に行くって事はお墓参りですよ」

「お墓参り?」


 そこでまたもや首を傾げるクリスタ君。

 まあ、お墓自体知らないみたいですし、行く理由も分からないんでしょう。

 ふふ、ならば教えてあげましょう! レシア先生大活躍です!


「お墓参りって言うのはですね、亡くなった方の体を通り道に現状報告とかを天に昇っていった魂に伝えるための行為なんですよ」

「へー?」


 わあ、なんか凄く伝わってないって感じが伝わってきますよ。


 あれ? でも言ってて思ったんですけど、なんでクレサン様、もといイファブリーノ国王様は霊廟に行ったんでしょうかね?

 ファブリーノ国王様、お墓参りに行こうとしてるんでしょうかね?

 でも、その方亡くなってるんですよね? だったらお墓参りっていうのも変な気はしますけど。


「ねえねえ、れしあさん。立ち止まっちゃってどうしたの? 皆行っちゃうよ?」

「へ?」


 クリスタ君にそう言われて見ると、皆さんと結構距離開いちゃってます!


「レシアー、何してるの? 早くー」

「あ、ま、待って下さーい!」


 皆さんの元に行こうとしたその時、急に凄い寒気が!?


「レシアー? どうかしたー?」


 その寒気に立ち止まるとコロンさんから声がかかります。

 あれ? コロンさん平然としてますけど、何も感じないんでしょうか?

 なんか凄く良くない感じがしてるんですけど。


 うう、でもこの感じ一人でいるのはなんか不安です。

 早く皆さんと合流しましょう!

 そう思ってコロンさん達の所まで向かうと、私達が向かおうとしている先から声がかかりました。


「あら、皆ここにいたのね」


 見やると、凄い大きな方がこちらに向かってきました。カリンさんです。

 というか凄い大荷物ですよ。


「あれ? カリンさん。どうしてここに?」

「ふふ、それはね。一般市民だから避難しろーってギルシュちゃんに言われちゃったからよ。だからお店を閉めて来たから置いていった皆の荷物持ってきたの。避難所に置いておけば来ると思ってね」


 カリンさんはそう言って大荷物を持ちながら笑顔で片目を瞑りました。


「でも、良かったわぁ。あなた達に出会えて。私一人でこの大荷物だもの。乙女には凄く荷が重かったから」


 カリンさんはそう言うと、荷物を地面の上に置きました。

 その時、さっきの嫌な感じがさっきよりも強く感じてゾクゾクってきました!

 なんでしょう。凄く嫌な感じです! 嫌な感じが凄く嫌な感じになってきましたよ!?


「ねえねえ、れしあさん」


 それを感じ取っているとクリスタ君に袖を引っ張られました。

 凄く暢気な声で少し嫌な気持ちが和らぎましたけど、どうかしたんでしょうかね?


「クリスタ君。どうかしましたか?」

「あれ、なーに?」


 クリスタ君に問いかけると、クリスタ君は私の後ろ。

 今来た道の方を見て指を向けていました。

 何かあるんでしょうか―――ッ!??


 そ、そう思って、見たらそこには、地面から手が出ていたり、顔が出てきていたりしてますよ!

 それに、動いています!

 ですけど、顔は骨が剥き出しだったり、そうで無かったりって感じです。でも、全員干からびています。

 というか、あれ完全に!


「あ、アンデットじゃないですか!?」

「あんでっと?」


 クリスタ君、キョトンとしてる場合じゃ無いですよ!?

 あれは大変な大変なんですよ!? あわわわ!


「いやいや! 昼間にしかも街中にアンデットっておかしくない!? ねえ! おかしくない!?」


 コロンさんそう言ってきますけど、知らないですよ!

 そんな事よりも、クリスタ君は抱いておきましょう!

 いざとなった時に逃げ遅れたら大変ですから!


 ふう、少し落ち着きます。


 と、アンデットの方々は次々に地上に出てきました。

 ざっと、五体くらいです!

 そして出てきて分かったんですけど、皆さんボロボロの鎧とかボロボロの服とか着てます。

 でも、所々にキラキラ光る宝石がある装飾品も見られます。


「あの鎧。イファブリーノ国親衛隊の鎧じゃない」


 するとカリンさんが突然そんな事を言いました。

 親衛隊の鎧ですか?


「……その声、……バル、カクス、殿、か?」


 え? い、今。


「今、アンデットが喋りました!?」


 聞き間違いじゃなければ完全に喋りましたよ!?


「……バル、カ、クス殿。」

「我等が王、苦し、助け」

「王、我、等、誤る。バル、カ、スど」

「ヌ」


 声が聞こえたと思ったら鎧の人達が一斉に言い始めました。

 皆さんそれぞれ色々言ってる感じですけど、一斉に話しすぎていて訳が分からないですよ!?

 というか、バルカクスさんってどちら様でしょうか?


「あなた達」


 そんなアンデットの方々にカリンさんが凄く辛そうな表情をしています。

 ど、どうかしたんでしょうかね?


「バル、カクス、殿。王は、あの時、から、つか、れてい、る」

「王、眠り、つけない」

「神官、殿も、お連れ、ご、様子」

「王を、王を」

「ヌ」


 今度は一斉にじゃなく話してますけど、えーと、な、なんでしょう?

 何を言ってるんでしょう??

 というか最後の方のヌってどういう意味があるんでしょうか?


「襲ってくる気は、無い?」

「ええ、その様ですけど……」

「あんでっと初めて見たです」


 私の後ろで、コロンさん達がアンデットさん達の様子を伺っています。


「あなた達、しっかり説明してちょうだい」


 そんな中、凜とした声でカリンさんがそのアンデットさん達に声をかけました。


「時間、が、無い。バル、カ、クス殿」

「王、呑まれ、る」

「今、し、無い」

「ける、今、もうひ、も、れる」

「ヌ」


 そんなカリンさんに答えるアンデットの方々。

 凄く何かを訴えていますし、色々気になりますけど、最後の方のヌってなんなんでしょうか?

 気になります!


「もしかして、霊廟に行けって事?」

「そうなのでしょうか?」


 そんな中、コロンさんとトパーズサイト様が言いますけど、なんでそういう解釈になるんでしょうか?

 むむむ? まさか、あのヌの意味が分かったんでしょうかね?

 あ、でも、コロンさんはあの博物館で文字読めてましたから多分分かったんですよきっと!

 それなら納得です。


「あなた達、霊廟ってどういう事?」


 そんな二人にカリンさんが問いかけます。

 まあ、カリンさんさっきいませんでしたし、ここは私が教えて―――


「え。いえ、その。レオン様達が調べた結果で、その王は霊廟に向かって行っているって話ですけど」


 って、コロンさんに先を越されてしまいましたよ!


「霊廟。王族のみが行く事を許され、場所は秘匿されている王族の墓所。それはどこにあるのかしら」


 カリンさんがアンデットさん達にそんな事を問いかけました。

 するとアンデットさん達は「我々、も、分から、ない」みたいな感じで答えます。

 答えますけど、やっぱり最後の方がヌってしか言わないので気になって仕方ないです!


「もしかして、カリン様。行かれるのですか?」


 そんな中、トパーズサイト様がカリンさんに問いかけます。

 するとカリンさんは、静かに頷いて艶々つやつやの口を開きました。


「当然じゃない。昔の仲、いえ、この方達が死してなお伝えてくれた事、ないがしろに出来ないわ」


 おお、カリンさんのその台詞。なんだかかっこいいです!


「して、神官、殿」

「へ?」


 カリンさんの言葉に感動していたらいつの間にここまで来たんでしょうか?

 アンデットの方々が私の傍までやって来ました。って、うえぇえええ!?

 流石に危険性は無いようですけど、近くで見たくは無いですよ!!

 特に、ヌの方なんて顔の肉とか剥がれ落ちて骨見えちゃってますし!

 に、臭いががが!


「我々、が、欲に、呑まれる、前に、浄化、を、しては、頂けぬ、か?」

「岩、しょ、ぞ、を、つれ、神か、ど、お願、する」

「先、の、いの、官、殿、とお、う、る」

「ヌ」

「ヌ」


 な、なんかお願いされてますけど、ヌって言う方が増えたんですけど!?


「レシアちゃん、あなた神官なの?」


 喋れていた方がヌの方になって困惑していたら、カリンさんにそう問いかけられました。

 神官じゃ無いですけど、というか―――


「あの、神官ってなんですか?」

「「「 え? 」」」

「「「「「 ヌッ 」」」」」


 私の言葉にクリスタ君とコクヨーちゃん以外の方々が声を揃えました。

 というか、びっくりしている様子ですけど、アンデットの方達は固まってますし。

 というか、え? 何か私、変な事言いました?


「いやいや、レシア。流石に祝詞をあげられるのに神官を知らないって事は無いでしょ?」


 コロンさんがそう言ってきますけど、全く分からないんですけど……。

 神官ってなんでしょう?


 って、皆さん。なんで固まって話し合ってるんですか!?

 アンデットの皆さんも一緒になって!

 というか何の話してるんですか!?

 私も仲間に入れて下さいよ!


 そう思った瞬間、ゾクッて感覚がまた来ました!

 すると立て続けに地面がゴゴゴって音を立てて揺れ始めましたよ!?


「な、何!?」

「地震みたいですわ」

「揺れてるです」

「なんなの一体」


 皆さんが一同にどんな事を言ってます。

 けど、アンデットの方々が突然「グガッ」みたいな声を出して、頭に手を当てて苦しみ出しました。

 ど、どうしたんでしょうか?


「神、か、殿。時間、無い、早く」


 そんな苦しみだしたアンデットさん達に私含めて皆さんが驚いているとその中の一人が私の方を見て、そう言ってきました。

 は、早くって!?

 あ、さっき浄化って言ってたので、浄化ですね!

 えっと、じょ、浄化。浄化って、えーと、ど、どうやるんでしたっけ!?

 ええっと、確か、お父さん曰く、気持ちを込めて、神様に願いを込めて、


「う、ウガァ!」


 突然そんな声が聞こえて見たら、アンデットさん達の三人くらいが凄い黒いモヤモヤしたのを体から出しながら、凄い剣幕で私の事を見てきましたよ!

 あわわわ! 凄く怖いです!


 というか、「ヌヴォア」って言いながら、一人が凄い勢いで剣を抜いてこっちにきましたぁ!


 えーと、えーと!

 思い出せませんよぉ!

 う、うう、迫ってきてます! あ、ああ、死ぬのは、死ぬのは嫌ですぅ!!

 助けて下さい!


「神様ー!」

「グゲラッ!」


 凄い咄嗟に拳を突き出したら、何かが弾けるような感触と、不気味な声が聞こえてきました。

 目を開けてみると、先程向かってきたアンデットさんが地面に倒れていて、徐々にサァ……って黒い砂になって風に乗って天へと昇っていきました。

 なんでか浄化されちゃったみたいです。


「わぁ、れしあさんのお手々光ってるよ」

「へ?」


 呆然としていたらクリスタ君にそう言われ、見ると、確かに手が薄ら光ってますね。

 えーと、何ですかこれ?


「ウヴォア!」

「ヴァー!」


 って、そんな事考えてる暇じゃ無いですよ!?

 え、えーと、とりあえず皆さんにこの光ってる手で応戦です!


「てい!」

「ヴァア!!」


 何でか一回殴っただけで、アンデットさんが吹っ飛び浄化されていきます。

 これは、いけますよ!

 なんか予定とは違いましたけど、ちゃんとした祝詞をあげてあげたかったですけど。

 ですけど、今は仕方ないです!


「皆さん、浄化して行きますよ!」


 こうして私は、残ったアンデットさんを浄化するために向かってきたアンデットさんに拳で応戦します。

 って、言ってもアンデットさんは剣を振るのが大振りなのでその隙に懐に入り込んでパンチです!

 こうして三人のアンデットさん達を浄化しました!

 さあ、後は―――


「そ、の、神官、殿。なん、と、か、持ち、こ、たえ、させ、る故、ちゃ、んと、祝詞、を、あげ、て欲、しい」

「おね、ヴァ、いす」


 と思って二人のアンデットさんを見たら、正座していました。

 というか、そ、そうですよね。襲われたから応戦しただけなので、ちゃんと祝詞をあげるのが普通ですよね!


 そういう事で、私は祝詞を思い出します。

 えーと、確か。あ、そうです。確か―――。


「ねえねえ、れしあさん」


 丁度思い出した所でクリスタ君に袖を引かれました。

 どうかしたんでしょうかね?

 あ、もしかして。


「一緒に祝詞をあげたいんですか?」

「うん!」


 元気に頷くクリスタ君。

 なら、また教えてあげましょう。


 という事でクリスタ君にも祝詞の中身を耳打ちしました。


「覚えましたか?」

「うん」


 確認にちゃんと頷くクリスタ君。ふふ、ちゃんと覚えられて偉いですねクリスタ君。


「それじゃあ、いきますよ」

「うん!」


 そうして私とクリスタ君は教会でやったように手を組んで二人のアンデットの前で祝詞を口にします。


「「 太陽に御座おはします神の王よ。我が声に耳を傾けて下さい。不浄なる肉体に戻されし魂魄へ光の導きをお与え下さい 」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る