第30話 光晶祭 ー光の祝詞ー
私、どうなったんでしょうか?
確か、キングゴーレムさんの攻撃が放たれて、その時クリスタ君が何かを言ったような。
でも、お空がこんな近くに見えるって事は、私、死んじゃったんでしょうか?
ああ、まだ旅の途中だったのにこんな結末になるなんて。
でも、私、お父さんとお母さんに会いに行けるんですね。
それはとても嬉しい事です。けど、クリスタ君と旅をするっていう約束果たせませんでした。
ごめんなさい。クリスタ君。
でも、クリスタ君と旅して過ごした日々、凄く楽しかったで―――
「ぶれいく!」
「へ?」
私の腕の中でそんな声が聞こえたかと思うと、急に下の方で爆発音が。
な、何があったんでしょうか!?
確認のため視線を移そうとした瞬間、すぐ真横をあの光線が通り過ぎていきました。
って、す、凄いギリギリでしたよ!?
「ぶれいく!」
驚いているともう一回クリスタ君のブレイクが下で炸裂。
爆発音が聞こえて、その後に凄い音が聞こえてきました。
な、何が起こってるんでしょう?
再度視線を移すと、そこには頭が中途半端な形で壊れたキングゴーレムさんが近くの家を押しつぶす形で倒れている姿が。
右足をバタバタさせて立とうと動かしているのが見えますけど、腕も左足も無いため起き上がれない様子です。
それを見ていて気付いたんですけど、私、動いてますね。
まるで飛んでるみたいに。
いえ、これは、飛んでますね。
凄い勢いでブッ!!?
何かにぶつかって、そのまま地面に落ちました。
うう、色々と痛いです。
「れしあさん、だいじょーぶ?」
私の腕の中で再度クリスタ君が心配してくれました。
「な、なんとか。生きてます」
色々痛いですけども。
と、クリスタ君が私の顔を覗き込んできました。
どうかしたんでしょうかね?
「れしあさん、お疲れ様~」
そう思っていると、クリスタ君が手を伸ばして私の頭を撫でてくれました。
まさか撫でられるとは思ってなかったですけど、まあ、これも悪くは無いですね。
というかクリスタ君の力弱いのでちょっとくすぐったいですけど。
「二人とも大丈夫!?」
そうしていると私達にかかる声が。
見ればコロンさんです。凄く心配したような様子で聞いて来ます。その後ろには同じように心配そうに見ているオーラ様とトパーズサイト様、セナさんの姿が。
正直痛いですけどでも、一時的なものでしょうし、ダメなら回復魔法使えば良いですし。
「僕はだいじょーぶだよ!」
「わ、私も大丈夫です」
クリスタ君に続く形になっちゃいましたけど、無事な事を報告です。
とりあえず起き上がりましょう。クリスタ君は傍において。
「まさか、お二人で三体も無力化するなんて凄いですわね」
と、コロンさんの後ろでオーラ様がそう言います。
でも、実質クリスタ君がブレイクしてただけなんですけど。
「れしあさんがね、凄くぶれいくしやすいように動いてくれたんだよ!」
私がそう思っているとクリスタ君が笑顔でそう答えました。
そ、そう言われると少し照れますね。
って、そういえば
「あの、マイティアちゃんは? 見かけませんでしたか?」
私がそう問いかけるとコロンさんから見てないって言われちゃいました。
うーん、見てないって事はまだここに来てないんでしょうかね?
「……私なら、無事。お陰で助かった」
不意に声がして見ると、少し服とかすり切れている姿のマイティアちゃんが立っていました。
いつの間に来たんでしょうか?
でも、無事で安心しましたよ。
「そういえば、途中でレオンさん達に会ったんですけど、向こうは大丈夫でしょうかね?」
確か、ルーファンさんが呪いにかかってましたけど。
「え? レオン様達に会ったの!?」
「はい。宿に吹っ飛ばされて、この剣をもって出てきた時ですね。その時、ルーファンさん呪いにかかってました」
「「「え?」」」
私の言葉にその場にいた全員が声を揃えてそんな声を。
少しびっくりしちゃいました。
「の、呪いって、なんの呪い!?」
その勢いのままコロンさんが詰め寄ってきました。
ええ、どんな呪いと言われても。というかコロンさん少し怖いです。
「えー、えーと、確か黒いモヤモヤが出てる感じの呪いなので、えーと」
なんでしたっけ?
確か黒いモヤモヤの出てる呪いは結構凄いやつだってお父さん言ってましたけど、でも、黒いモヤモヤの呪いの解呪の方法は一応知ってますし、私が出来るなら他の人も出来ますから大丈夫だと思いますけど。
「黒いモヤモヤ、ですか」
「……モヤモヤが何かは分からないけど、黒い呪いは生命力に関する呪いだったと思う」
マイティアちゃんが言いました。
あ、確かそうでしたね。お父さんもそう言ってたと思います。
あ、そうですそうです。思い出してきましたよ。
「確か、生命力低下の呪いです。思い出せて良かったですよ」
「いや、良くないでしょ!?」
「え!?」
急にコロンさんが大声で言ったのでびっくりです!
よ、良くなかったんですか!?
「生命力低下の呪いって言ったら強力な呪いですわ。時間が経つにつれて命が削られていく呪いですし、下手したら一日もしないうちに死に至る呪いだったはずです」
するとオーラ様が顎に手を当ててそう言いました。
あ、確かにお父さんもそう言ってましたね。
って、そういえば死んじゃう系の呪いでした!
「それじゃあ、今頃ルーファン様は大変な事になってるんじゃ!?」
「そうですわね。この呪いを受けたのがいつかは分かりませんが、かなりやばい状態のはずですわ」
コロンさんとオーラ様がそんな不穏な話をし始めました。
聞いてて凄く怖いですよ!
で、でも、そうです!
こういう時こそ安心させないといけないですよね!
「で、でも、教会に行けば解呪してもらえるものだってお父さん言ってましたし、私でも解呪出来る呪いですから大丈夫だと思いますよ?」
教会ってどういうものかよく分かりませんけど、街には必ずあるってお父さん言ってましたし。
って、あ、あれ? 皆さんの視線が。
「……その呪いはそこら辺の教会で解呪は出来ない。生命力低下の呪いは強力だから、出来るとしたら
「え? そ、そうなんですか!?」
な、なんですかその凄そうな場所。
というか、お父さん。教会なら大丈夫って言ってたから、どこにある教会でも大丈夫だと思ったんですけど。
「……それよりも、レシアさん。なんで、出来るの?」
呆然としていたら、マイティアちゃんが不思議そうに聞いてきました。
何でって言われても。
「なんでって言われても、お父さんに教えて貰ったとしか言えないです、けど」
「レシアのお父さんって、何者?」
続いてコロンさんが。
でも、何者って言われてもお父さん、ただのエルフでしたし。
そう思っているとオーラ様がパンパンと手を叩きました。その音に少しびっくり。
「皆さん、レシアさんの言ってる事が本当なのでしたら、ここで議論してる場合じゃ無いと思います。早くレオン様達を見つけないといけないと思いますわ」
凄い真剣な表情でオーラ様が言いました。
確かにそうですね。
「レシア、どこで見たの!?」
「……レオンさん達の事、どこで見かけた?」
レオンさん達と出会った場所を思い出そうとしたら、凄い勢いで二人に聞かれました。
えっと、えーと―――
「えーと、確か宿の方から来て出会ったので、えーと」
って、あ、あれ? どこで出会ったんでしたっけ?
確かキングゴーレムさんを倒すために走って出会ったんですけど、あ、あれ? どのキングゴーレムさんの所でしたっけ? えーと、えーと、ああ! 分からなくなってきました!
「あのね、宿から出たところの近くにいたごーれむのいたところだよ」
頭が爆発寸前だったところでクリスタ君がそう言いました。
あ、確かにそこで出会いましたね。
「宿の近く?」
「あのね、こっちー」
クリスタ君はついて来てと走って行きます。後を追いかける私達。
そして辿り着いたのは、色々な建物がめちゃくちゃになってる場所でした。
んー、こんなところでしたっけ?
確か出会った所はもう少し建物あったような。
「ここで会ったの?」
「うん! そーだよ」
コロンさんの言葉に元気に頷くクリスタ君。
クリスタ君が言うなら本当だと思いますけど、んー? 私にはよく分かりませんね。
「流石にレオン様達がここでジッとしてるとは思いませんけれど」
「……解呪が目的なら、ここから少し離れた所にある教会?」
「多分、そこ。そこにレオン様達がいるんだよ。きっと」
「行ってみましょう」
三人の提案で私達はその教会に行く事に。
うう、もう少し早く思い出してれば。待っていて下さいルーファンさん。今、行きますよー!
そうして街の中を移動して、ゴーレムさん達が暴れていた場所から離れている教会の前で俯いたレオンさんとその傍にある長い椅子に腰をかけて座り、凄く悩んでいる様子でいるディアナさんの姿を発見しました。
「れ、レオン様!」
そんなレオンさんにコロンさんが声をかけます。
「ああ、君達。と、子爵様に宝晶族様」
凄く元気の無い声でレオンさんが声を発しました。
こんなに元気が無いなんて、まさか―――
「レオン様、このような所で俯いてどうされたのですか?」
そんなレオンさんにオーラ様が質問します。レオンさんは静かに答えました。
「実は、ルーファンに呪いがかけられてしまっているとレシアさんから聞いて、今、教会のシスター様に見て頂いたら生命力低下の呪いをかけられていると告げられたのです」
「ルーファンはエルフだから生命力はある。が、それでももって二日だそうだ。その間に教法街に行き最高司祭様に会うなど、不可能だ」
レオンさんの言葉に続いてディアナさんが悔しそうにそう言いました。
二人とも凄く落ち込んでます。というか、ルーファンさんエルフだったんですか。
いえ、そんな事よりも、今はルーファンさんの解呪ですよ!
「レオンさん、ディアナさん! ルーファンさんに会わせて下さい!」
「え?」
私がそう言うとレオンさんは顔をあげました。
なんというか凄く疲れている顔です。
「この呪いは呪いの中でも特に強いやつだ。教皇様でも無い限り解けない。会ったところでルーファンの苦しむ姿を見るだけだぞ」
そしてディアナさんも疲れた声でそう言ってきます。
って、
「いやあの―――」
「もし、解呪が出来る方がいるとしたらどうしますか?」
私の言葉を遮ったオーラ様の言葉に二人は顔を上げた。
「いや、もしいたとしても強力な呪いの解呪だ。教皇様でも無い限り、色々準備に時間がかかるだろう。ここは中央教会では無く普通の教会だ。必要な導具類も無ければ―――」
へ? 何言ってるんでしょうか?
「準備って、特に何もいらないですよ?」
「は?」
私の言葉にディアナさんが目を丸くして顔をあげました。
「いや、要らないって―――」
「だから、いらないですよ? 日の当たる所でやれば良いだけですし」
私の言葉に二人は顔を見合わせました。
あれ? 私、何か変な事言いましたかね?
「レシアさん、とりあえず行きましょう。ルーファン様の所へ」
首を傾げているとオーラ様にそう言われました。
でも、そうですね。早く行って楽にしてあげましょう!
そうして私達は教会に入りました。そこには黒い服の方がいました。多分、この人がシスターさんって人だと思います。
だって、その他に見当たりませんし。
すると、オーラ様はシスターさんに声をかけて、言葉を交わし私達はルーファンさんの元へ通されました。
それにしても、シスターさんの格好。よくお母さんがお出かけする時に着てたのと同じの着てますね。
と、それよりも。ルーファンさんは、ベッドの上で唸っていました。その顔には汗。そして全身に黒いモヤモヤが。
「それで、レシアさん。どうすれば良いですか?」
ルーファンさんの様子を見ている私にオーラ様が声をかけてきます。
そうですね。
「えっと、ルーファンさんをこの日の光が当たる場所に横にして頂ければ出来ますよ」
あ、ならベッドごと、移動させちゃった方が早いですね。そんな事思いつくなんて流石、私。
でも、安全は大事ですよね。なら!
「あの、皆さん下がっていてくださいね」
私はそう言ってベッドの端を掴んで持ち上げます。
そうして光が差し込む場所にベッドをゆっくりと置きました。
よし、ここまでしたら後はお父さんに教わった通りにやれば大丈夫ですね。
「あの、一体何を?」
そんな私にシスターさんが声をかけてきました。
何をって。
「あと
「え? あ、あの?」
何故か戸惑うシスターさん。どうしたんでしょうか?
「ねえねえ、れしあさん」
と、クリスタ君が私の袖をクイクイ引っ張ってきました。
どうかしたんでしょうかね?
「どうかしましたか?」
「祝詞ってなーに?」
どうやら祝詞について知りたいみたいです。
って言っても
「神様にお願い事をする言葉ですよ」
「ほえー、そーなんだ」
「はい」
あ、そうです。祝詞をあげるなら一人よりも二人の方が良いですよね。
なら、
「クリスタ君も唱えてみますか?」
「うん! やってみたい!」
私の提案にクリスタ君は頷きました。
それじゃあ
「クリスタ君、こう言うんですよ?」
そうして私はクリスタ君に耳打ちをして祝詞を教えました。
「覚えましたか?」
「うん! 覚えた!」
流石クリスタ君、覚えが早い!
「じゃあ、こうやって手を組んで膝を床に着けて下さい」
「こう?」
「そうです。それじゃあ、一緒にいきますよ」
「うん!」
クリスタ君が頷いたのを確認して私は心を落ち着けるために深呼吸をして、クリスタ君が一緒に言い出せるように「せーの」と声をかけました。
「「 太陽に
そうして唱えると、ルーファンさんの体が光り始めてって、あ、あれ?
なんか私が練習でやった時より凄い光ってるんですけど!?
だ、大丈夫ですよね?
あ、でも、変な感じじゃ無くて凄く暖かい光です。
なので大丈夫だとは思いますけど、眩しくてルーファンさんの状態分かりませんけども。
そうしているうちに光が収まっていきました。
戻ってくる視界。
そこには先程と同じようにベッドに横になっているルーファンさんの姿。
でも、黒いモヤモヤはもう見えないですね。それにルーファンさんの顔色良くなってる気がします。
あれ? でも、体の傷とかも無くなってるんですけど。
この祝詞にそんな効果ありましたっけ?
「先程の光。まさか、教皇様でいらっしゃるのですか?」
首を傾げていたらシスターさんにそんな事言われちゃいました。
でも、私はその教皇様じゃないです。というか、教皇様っていうのがよく分かりませんけど多分『様』が付いているので凄い人だっていうのは分かりますね。
って、それよりも違うっていう事ははっきりさせないとですね!
「違いますよ? 私、普通のエルフとアルラウネのハーフですよ?」
私の言葉にシスターさんは目を丸くしました。
「え? あの、でしたら先程のは?」
「お父さんから教えて貰った解呪の方法です」
シスターさんはなんというか私の話を聞いて凄く不思議そうな顔してますよ。
「……解呪できたの?」
と、マイティアちゃんが恐る恐る訊いてきました。
「はい。黒いモヤモヤはもうありませんから出来ましたよ!」
「……そ、そう」
「えっ、まさか本当に出来るなんて」
「ふふ、流石レシアさんですわね」
三人がそれぞれの反応で言ってますけど、って、あ、あれ?
「コロンさん嘘だと思ってたんですか!?」
「え? いや、だってそんなの凄い人しか出来ない事、レシアが出来ると思わなかったし」
「ええ!?」
そう言われて少しショックです!
「もしかして解呪、出来たのか?」
と、その後ろからディアナさんが訊ねてきました。
これはちゃんと報告した方が安心できますよね!
「はい。バッチリです! 今、状態も落ち着いてますよ」
報告するとディアナさんが「そうか」と安堵した様子で一言。
と、私の耳に「んっ」という声が聞こえて振り向くと、ルーファンさんが目を覚ましました。
そして、辺りを見渡して「ここ、は?」と訊ねられました。
「ここは教会ですよ」
「教会? 私、なんで? それにあなたがいるって、レオン達は」
「えーっとですね、ルーファンさん呪いにかかってたので、私とクリスタ君で解呪しました。それにレオンさん達もちゃんといますよ」
そうしてルーファンさんにも見えるようにレオンさん達のいる方を指し示しました。
って、さっきまで後ろにいたのにいつの間にかお二人ともコロンさん達の前に来てます。
「ルーファン、無事か?」
「大丈夫かい?」
二人はルーファンさんに声をかけて近寄ってきました。
お二人とも心配そうですけど、安堵しているようにも見えますね。
「今は大丈夫。でも、何があったの? それに、解呪って。少し頭がこんがらがってる」
ルーファンさんはそう言って頭を抱えちゃいました。
何があったのかって言ってますけど覚えてないんでしょうかね?
と、考えていた私の横にオーラ様が立ちました。そして静かにゆっくりとした口調で訊ねます。
「レオン様、私も、いえ、私達も聞いてもよろしいでしょうか? 何があったのかを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます