第27話 光晶祭 ー追い詰められたネズミと消えるものー

ど、どうしましょう!?

私は今ピンチです! はわわ、危険が危ないです!


私達に向かってゆっくりと歩いてくるギルシュガルデさんと、クレサン様と、私衛兵の皆さん。

こ、これってどうしてこうなったんでしょうか!?

というか、ええ。どうしましょう!?


「ど、どどど、どうしましょう! コロンさん!」

「ええ!? ここで私に振られても!」

「ギルシュガルデさん、これはどういった行動でしょうか?」


あわあわしていたらオーラ様が言いました。


「オーラ子爵様!? 貴様ら、この街の客人にも手を出そうというのか!」


うひゃー! 凄い怖い顔でギルシュガルデさんが怒鳴ってきます。凄く怖いですよ!


「ギルシュガルデさん、質問に答えて頂けませんか?」


そんなギルシュガルデさんに対してオーラ様は凄く凜とした声色で話しかけます。

こ、怖くないんでしょうかね?

そう思っていると腕の中でクリスタ君が私にねえねえって言ってきます。

もしかしてクリスタ君、何か良い案が浮かんだんですかね?


「ど、どうかしましたか? クリスタ君」


私が問いかけるとクリスタ君は目を輝かせていますよ。というか涎が!


「れしあさん、れしあさん! ごーれむ! あれ、ごーれむ!」


へ? あれって?

そう思いクリスタ君が指さした方向を見るとクレサン様と私衛兵さん達です。

……んん? どういう意味でしょう?

あ、もしかして。

あの後ろにゴーレムも控えてるって事でしょうかね?


「おりなー! ごーれむです!」


私がそんな結論を出しているとコクヨーちゃんも同じように目を輝かせて話しかけてきました。

や、やっぱりゴーレムがいるんでしょうかね?


「何を訳の分からない事を言っているのですか! 早くそこにいる宝晶族様を解放しなさい!」


そんな二人のやり取りを見ていたら、クレサン様が怖い表情で言ってきます。

これは、ごめんなさいした方が良いですよね?


「……ちょっと、待って」


急に、マイティアちゃんが声を出しました。び、びび、びっくりしましたよ!


「……クレサン様、お言葉ですがどこに宝晶族様がいると?」

「そこにいるじゃないですか? 何を言って」


その言葉に何故か回りの私衛兵さん達が顔を見合わせたり辺りを見たりしています。

ギルシュガルデさんも顔をある意味怖くしていますよ。


「ねえねえ、れしあさん、ごーれむ食べたーい!」

「私も食べたいです!」


そんな様子を見ていたらクリスタ君とコクヨーちゃんが目を輝かせて言ってきます。

でも、今、それどころじゃないんですから!


「ダメですよ! 今、私達はピンチなんですから!」

「えー、食べたいのにー……」

「私も食べたかったですー……」


あうう、凄くシュンとしちゃいました。

でも、今はダメです。危険ですから。


「先程からゴーレムゴーレムと。何を言っているのです!?」


そんな二人に向かってクレサン様が怖い様子で言います。


「ふえ? ごーれむだよ?」

「です。どう見てもごーれむです」


んん? なんだか二人が言ってる事がよく分からないんですけど。


「あのさクリスタ、何がゴーレムなの?」

「あのね、あそこにいるのね、お姫様の隣にいた人みたいなごーれむなんだよ!」

「です! ごーれむです! 食べたいです!」


コロンさんの言葉に二人は答えます。

えっと、つまりあのクレサン様がゴーレムだって言うんでしょうか?

んー? ですけどどう見てもクレサン様ですよね?


「あの、オリナー。私にはクレサンにしか見えないのですが……」

「そうです。何を変な事言っているのですか!? 私は正真正銘クレサンです」


相手の方はそう言って更に睨んできます。

うひゃー! 顔怖いです!


「レシアさん」

「え?」


クレサン様の顔に怖がっていたら、オーラ様が優しく声をかけて下さいました。

な、なんでしょうかね?


「クリスタさんのブレイクはゴーレムに効くのではないでしょうか?」

「へ?」


あ、そういえばコーメインでゴーレム出てきた時、ブレイクでゴーレム倒してましたね。あ、そうですよ! そうすれば本当かどうか確かめられますよ!


「クリスタ君」

「なーに?」

「食べてきても良いですよ」

「いーの!?」


私の言葉にクリスタ君は目を輝かせました。


「あ、でもちゃんとブレイクしてからですよ?」

「うん!」


私の言葉にクリスタ君は元気に頷きます。


「おりなーだけです?」

「コクヨーちゃんも食べたいんですか?」


私の言葉にコクヨーちゃんも頷きます。

うーんとそれじゃあ。


「クリスタ君、コクヨーちゃんと一緒に行ってきて下さい」

「うん! こくよーさん行こー!」

「はいです! おりなー!」


そうして二人は手を繋いで一緒にクレサン様の元にまっしぐらです。

そして走りながらクリスタ君のブレイクが聞こえてきて


「ぐっ!?」


クレサン様の右肩が爆発してその右腕が床に音を立てて落ちました。

その様子に傍にいた私衛兵さん達が動揺してます。というか、どう見ても人ですから私もちょっと、はわわって感じです。


「……? 腕が、再生しナい?」


そしたらなんだかそんな事をクレサン様は言います。

え? 普通しませんよね?

というか? あれ? 違和感がありますけど。んー?


「血が出てませんわ」

「あ、そうですね」


そうです。血が出てないですね。普通、腕取れたら血出ますよね。

……考えたらちょっと食欲が。


「ブレイク!」

「ヌグッ!?」


そう思っていたら第二回目のブレイクが聞こえ爆発音と共に今度はクレサン様の体が横に倒れます。

見れば今度は左足をブレイクしたみたいですね。


そうしているうちにクリスタ君とコクヨーちゃんはてってってーとそんなクレサン様に近寄っていきます。


「ぐ、来るナ!」


明らかにクレサン様、動揺してる様に見えます。というかしてますね。


「あなタ達、私ヲ守りナサい!」


クレサン様がそう私衛兵さん達に言います。

ですけど、私衛兵さん達は動揺して動けずにいるみたいです。


「ギルシュがるデ!」

「――ッ」


名前を呼ばれてギルシュガルデさんが固まりました。

するとギルシュガルデさんは無言で剣を構えてクレサン様の前に飛び出します。


「ギルシュガルデさん、良いのですよ!? そこにいるのはクレサンでは無くゴーレムなのです! 守る必要など」


そんなギルシュガルデさんにトパーズサイト様が声をかけます。

ですけどギルシュガルデさんは剣を構えたまま動きません。

クリスタ君達が通り過ぎても動きません。

って、あれ?

普通にクリスタ君達通り過ぎちゃいましたけど?


「ギルしゅガるデ、何ヲしてイる?」


そんなギルシュガルデさんにポカンとした様子でクレサン様が問いかけます。


「私はこの――、平――め―、―――いーき―。―――――、――らい」


ギルシュガルデさんは静かに言っているようで、クリスタ君達の食べてる音で何言ってるが分からないです!

ちょっと、クリスタ君達静かにしてくれませんかね!?


「おりなー、そこぶれいくして下さいです」

「うん! ぶれいく」


最早爆発音とかゴリゴリっていう音で全く声聞こえないんですけど。


「オリナー、私にもその足の方いただけませんか?」


って、トパーズサイト様!?

何してるんですか!? さっきまでここにいたのに。

というか、見てみると、な、なんか凄い光景ですね。

キョトンとしてる皆さんを尻目に三人にクレサン様食べられちゃってますよ。


「……でも、そうすると本物はどこに?」


様子を眺めているとマイティアちゃんがそう言いました。

確かにそうですね。

本当のクレサン様どこに行ったんでしょうかね? んー、謎です。


「それもそうだけど、結局、あのゴーレムクレサン様食べられちゃってるから、犯人の手がかりなくなっちゃったんじゃない? これ?」


コロンさんの言葉に何か嫌な予感がします。


「えーっと、どういう事ですか?」

「いや、あのゴーレムに誰に作られたか言わせれれば犯人分かったと思うんだけどね」

「あー、なるほどー……」


私が再度見た先ではゴーレムクレサン様はもうほとんど食されていて頭とか無くなっていました。

あはは~。皆さん、凄い食欲ですね。

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