第26話 光晶祭 ーお祭りの再会ー
あの後、早速私達はお部屋に戻って準備を整えています。
さて、私は準備完了ですね。っと、皆さんは。
見てみれば皆さんも準備が終わっている様に見えます。でも、確認は大事ですね!
「皆さん、準備は大丈夫ですか?」
「だいじょーぶ!」
「はい! だいじょーぶです!」
「うーん、まあ、大丈夫だけど」
「大丈夫ですけれど、やっぱり普通の格好ではありませんから落ち着きませんわ」
むむ! クリスタ君とコクヨーちゃん以外元気ない返事です。
それじゃあ、ダメです。といつもなら言っちゃいますけど、ですけど、まあ、そうですね。
楽しむのは今じゃなくて、これからですから良いんです。そうです。これから楽しむから良いんです!
「大丈夫なら早速出かけましょう。さあ、行きますよー!」
「おー!」
「おー! です!」
そういう訳で私達は部屋から出て、宿を後にしました。
お外は今日も快晴! お祭りを楽しむには絶好の日ですね!
そして広がるのは快晴の空だけじゃなくて、沢山の人の行き交う姿です。
いつ見ても多いですね。
あ、そうです。
「はぐれたら大変なので手を繋いで行きましょう」
私はそう言ってクリスタ君に手を差し伸べます。
「僕、お姫様と一緒に繋ぎたーい!」
「え?」
そんな事を言われちゃいましたよ!
まあ、でも、クリスタ君なら大丈夫ですよね。
……差し出した手が凄く寂しいですけど。
うう、でも、今日はトパーズサイト様に譲ります。譲りますよ。くぅっ……。
あ、そうです。それならコクヨーちゃんと手を――。
「私もお姫様と繋ぐです」
提案する前にコクヨーちゃんはお姫様の空いてる方の手につかまっちゃいました。
……ま、まあ、私は大丈夫です。そ、そうですよ。今日だけですからね。ふ、ふふ……。
「レシアどうかした?」
コロンさんが声をかけて下さいました。
あ、そうですよ。コロンさんがいるじゃないですか。
「コロンさん」
「何?」
「手繋ぎますか?」
「は?」
「はぐれたら大変なので、手、繋ぎませんか?」
「え?いや、私はぐれないから大丈夫だし」
あ、そうですよね。……はは。
「はあ、もう。クリスタ」
「なーに?」
「クリスタとコクヨーが
「えー……」
クリスタ君は残念そうな表情をしています。まあ、本人が張り切ってる事ですからそう言われたら残念でしょう。
と、そんなクリスタ君にコロンさんはヒソヒソと何かを話しています。
一体何を話しているんでしょうかね?
「うん!分かったー!」
「よし、じゃあ、早速動いて」
「うん!」
コロンさんの言葉にクリスタ君は頷くと私の所にやって来ました。
なんでしょうかね?
「僕、れしあさんと一緒に回るー」
「え?」
な、なんと!
「く、クリスタ君。良いんですか?」
「うん! れしあさんと一緒にお姫様守るの!」
そう言ってクリスタ君は手を伸ばしてきました。
ふふ、そうですか!
「じゃあ、頑張りましょう!」
「うん!」
こうして私はクリスタ君の手をとります。
さあ、お祭りの会場へ出発ですよ!
そうして私達ははぐれないように先頭を私とクリスタ君。後方をコロンさん。その間にトパーズサイト様とコクヨーちゃんとしてお祭りの会場へと向かいました。
そこはもう既に沢山の人がいて、ステージ上で踊っている人達がいますね。
あの踊り、なんていう踊りなんでしょうね?
男の人も女の人も凄くキラキラしていて凄いですよ。
見とれていたらクイクイとクリスタ君に手を引かれました。
なんでしょうかね?
「どうかしましたか?クリスタ君」
「僕も見たーい」
あ、どうやら身長が低くて見えてないみたいです。
という訳で私はクリスタ君を掲げるように持ち上げました。
「わー!」
「どうですか?クリスタ君。見えますか?」
「うん!」
凄く喜んでいるのが伝わってきます。ふふ、良かったですね。
「あ! れしあさん。あれ」
急にクリスタ君が何かを見つけたように指さしました。なんでしょうかね?
そう思って見てみるとそこにはこちらに向かって移動している人が見えます。
あ、あれ、マイティアちゃんですね。
クリスタ君、目が良いですね。
「……宿にいなかったから驚いた」
そうして来るのを待っていたら、到着したマイティアちゃんにそう言われちゃいました。
そこはごめんなさいです。
「マイティアちゃんには言っておけば良かったですね」
「……そうしてもらえると助かった。けど、連絡手段持ってる?」
「連絡手段ですか? 普通にマイティアちゃんのお家に行って伝えれば良いんじゃないですかね?」
「……寮だから学園の生徒しか入れない」
「え? そうなんですか!?」
それじゃあ私達入れないじゃないですか!
「……とりあえず出会えて良かった」
私がどうすれば良いのか考えていたらマイティアちゃんはそう言って安堵した様子です。
でも、安堵した様子ですけどいつも通りあんまり表情が変わっていないです。いつも思いますけど表情泣き顔とか照れ顔以外、なんというか寂しそうな表情に見えるんですよね。
あ、この際ですからマイティアちゃんも笑顔にしましょう!
そうです。それが良いですね!
「……これからの予定はどんな感じなの?」
とと、私が意気込んでいたらマイティアちゃんが質問してきました。
ふふ、それはですね。
「トパーズサイト様を――」
私が説明しようとしたらマイティアちゃんに口を塞がれてしまいました。
「……一応、宝晶族様の事は誤魔化すか伏せて話して」
抗議しようとしたらマイティアちゃんがそう耳打ちしました。
えーと
「何でですか?」
「……貴女、フクゥダ公爵様からの言葉忘れたの?」
え、えーと
「トパー――……」
って、伏せるんでしたね。えーと、それじゃあ。
「お姫様が命を――」
そこまで言ってまた塞がれちゃいましたよ。
一体、なんなんでしょうか!?
「……そこまで分かってるなら分かるはず。誰が敵か分からないから言葉は慎重に選んで」
マイティアちゃんは静かにそう告げます。
た、確かにそうでした。って、あれ?でも、カリンさんはそれは嘘で本来の目的は別って言ってたような?
うーん? あ、もしかして。この騒動の犯人って。
「……ところで、例のお姫様は?」
私がある事を思いついたらマイティアちゃんが問いかけてきました。
「お姫様ですか? それならこちらです」
ちゃんといつもと違う服装で変装しているトパーズサイト様をマイティアちゃんに紹介します。
そしたらマイティアちゃんはジーッとトパーズサイト様を見ていますね。
「……認識変更の魔法でもかけてる?」
そんな事を言うマイティアちゃん。
何でしょうその魔法? なんだか凄そうな魔法みたいに感じますけど私達はただあの黒い布を使っただけですけど。
「あの、そんなに見られると困りますわ」
そんなマイティアちゃんの行動にトパーズサイト様は視線を逸らしてちょっと照れてるみたいですね。
ですけど、それを見ているマイティアちゃんはなんだか凄い顔を顰めています。どうかしたんでしょうかね?
「それにしても、マイティア良くここが分かったね」
「……カリンさんに祭を見に行ったって聞いたから、とりあえずここだと思って」
なるほどー。でも、こんなに人がいる中で良く見つけられましたねマイティアちゃん。
「あ、れしあさん」
感心していたら上から声が聞こえます。
「どうかしましたか? クリスタ君」
「あれ、見てー」
「あれ?」
クリスタ君の指さす方向を見やると、会場の舞台の上で踊っている人の上を真っ白な花びらがひらひら舞い落ちています。
それが太陽の光でキラキラと輝いてます。
はわ~、凄く綺麗です。
「綺麗ですね。クリスタ君」
「うん! きれー!」
本当に綺麗です。
「二人とも、見入ってる場合じゃないでしょーが。トパーズ様を笑顔にするんでしょ」
って、見ていたらコロンさんにそう言われちゃいました。
そうでした。
「あ、そーだった」
クリスタ君も思い出したみたいです。
それじゃあ、早速と行きたいところですけど、うーん、どうしましょうかね?
「ねえねえ、れしあさん。あそこ行こー!」
そう考えていたらクリスタ君が不意に指さしました。
見ると、なんでしょうあれ?
他の屋台と一緒ですけど、他の屋台とは違ってお客さんあまりいないみたいです。
それに、看板には出来たて煉瓦って書かれてますね。
「あそこ行こー。あそこ行きたい!」
私が注意深く見ていたらクリスタ君はわくわくした様子で言います。
もう、クリスタ君は。
「クリスタ君、今は行きたいところじゃなくてお姫様を元気にするのが最優先ですよ?」
「僕も行きたいんだけどね、あのね、煉瓦食べたらお姫様も美味しいってなると思うの」
まさかそう考えていたとは! そういう事なら良いですよ。
「なるほど、分かりました。それじゃあ、行きますか」
「うん!」
という訳で皆さんにも言わないとですよね!
「という事で皆さん行きますよー」
「いや、いきなりという事でって言われても、って、行くってどこに行くの?」
「あそこの屋台ですよ」
問いかけてきたコロンさんに私はこれから行く場所を指さしました。
「えっと、なんで煉瓦なんて売ってるの?」
「さあ? それは分かりませんけど行ってみるんです!」
そういう事で私はクリスタ君を抱いてあの屋台に向けて出発です!
どんどん近づいていく屋台。
って、あ、あれ?
あれって――……
「わー! せなさんだー!」
その屋台にいたのは、コーメインでお世話になったセナさんです。
なんでセナさんいるんですかね?
すると声をかけた私達を見て、セナさんは微笑みました。
「ふふ、やはり来ましたね」
「ふぇあ!?」
び、びびび、びっくりしました!
急に後ろから声がして振り向いたら、お、オーラ様です。
「ふふ、お久しぶりです。皆さん」
そう言ってオーラ様は頭を下げました。
え、えーと
「お、お久しぶりです」
「わー! おーら様だー! こんにちはー」
「え、えっとその、あの時はありがとうございました」
なんだか皆バラバラに話しちゃいましたけど、と、とりあえず良いでしょうかね?
「ふふ、皆さんお元気そうで」
そんな私達に微笑みながら話しかけて下さるオーラ様。
凄く眩しい笑顔です。
「うん! 元気だよ」
「ふふ、クリスタさんはいつも元気そうで」
そう言ってオーラ様に頭を撫でて貰っているクリスタ君。
少し羨ましいです。って、それよりも。
「あの、なんでオーラ様ここにいらっしゃるんですか?」
って聞こうと思ったら先にコロンさんが聞いちゃいましたよ!
むむー、私が聞きたかったのに。
「それは、あなた達のお手伝いのためですかね」
そう言うとオーラ様はふふと笑います。
ほえー、そうなんですか? って、あれ? お手伝いって、なんでオーラ様知ってるんですかね?
「……オーラ子爵様は公爵様の呼んだ外部の助っ人」
私が首を傾げたら横からマイティアちゃんが説明してくれました。
おお、なるほど。
じゃあ、知ってて当然ですね。
「それで、あのー、
納得していたらおずおずとオーラ様が小さな声で訪ねられました。
ああ、そういえばまだ紹介してませんでしたね。であれば、早速紹介ですよ!
「こちらです」
「え?」
あれ? オーラ様、何か笑顔のまま固まってますけれどどうしたんでしょうかね?
「あ、あのー、その、ご本人ですか?」
「そうですけど?」
なんで聞いてくるんですかね?
んー?
「あの、立ち話もなんですからこちらにおいでになりませんか?」
首を傾げていたらセナさんが私達に話しかけてきました。
って、こちらってどこでしょうかね?
「そうですわね。皆様、よろしければこちらへ」
そう言われて私達がついていくと、そこは屋台の後ろの建物でした。
なんだか凄く広い空間ですよ。
辺りを見渡しながら進んでいくと、オーラ様が奥の方まで行き立ち止まりました。
「それでは、改めさせて。宝晶族様、私、コーメインで領主をさせて頂いておりますオーラと申します」
「え、ええ。その、ご丁寧にどうもですわ。そうですわね。私も自己紹介をさせて頂きたいですわ」
オーラ様におずおずと言ったトパーズサイト様はオーラ様みたいにゆっくりとお辞儀をしました。
「私、宝晶族のトパーズサイトと申しますわ」
格好は違いますけどお姫様ですよこれは。
「あ、私も言うです! 私は岩食族のこくよーって言います。よろしくです」
トパーズサイト様の隣に立つコクヨーちゃんもお辞儀をしました。
凄く良く出来ましたって褒めたくなる感じがしますよ。
「はい。よろしくお願いしますわ」
ああ、なんでしょう。良いですね。凄くオホホホって感じですよ。
「ところでオーラ様、一つ良いですか?」
あの場の空気が凄くお上品で見とれていたらコロンさんが横から声をかけます。
一つ良いかどうかって聞いてますけど、うーん? どうかしたんでしょうかね?
「なんでしょう?」
「なんであそこで煉瓦なんて売ってらしたんですか?」
「ああ、その事ですか。ふふ、あなた方に出会うためです」
そう言ってオーラ様は笑みを浮かべます。
えーと、私達に会うために煉瓦売ってたんですか。んー? 何ででしょう?
「ああ、そういう事ですか」
あれ? コロンさん理解しちゃったみたいですよ!?
え? 私、全然分からないんですけど。煉瓦で私達に会う方法ってなんでしょう?
むむむ……。
「それで会った訳ですけれど」
「ええ、大丈夫です。他意はありませんわ。あなた方の所にいるとお聞きしたのでまずは出会っておこうと思っただけですから」
そう言ってオーラ様はまた優しい笑みを浮かべます。
な、なんだかよく分かりませんけど、凄い事が起きてる気がしますよ。
「そうなんですね」
「ええ、向こうの方も順調みたいですし。後は――」
と、オーラ様がそう言った時でした。
「大人しくしろ! ノクターンホロウ及びその一味め!」
この建物の入り口のドアがバンッと開いて、そこには怖い顔のギルシュガルデさんと沢山の兵士さん達と、あと、
「助けに来ました。トパーズサイト様!」
クレサン様の姿が。
って、え? あ、あれー? これ、まずい状況じゃないですかね!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます