第19話 光晶祭 ‐下見‐

「ところで、コロンさん」


 光晶祭のお祭り会場に向かいながら私はコロンさんに問いかけます。

 あることが気になったので。なんで私の名前ラフなんでしょうかと。


「何?」

「なんで私の名前、ラフなんですか?」

「ああ、それ?ラフって自由とかそういう意味があるから、旅人のレシアにはぴったりかなって」

「なるほど!」


 自由ですか!確かに、旅人の私にピッタリですね!

 コロンさんは凄く物知りです。それに、ふふ、自由ですか~。なんかいいですね。


「じゃあ、レシア」

「ふふ、どうしました。この自由な旅人に何の用事でしょうか?」

「いや、なんでそんな上機嫌なの?」


 答えたらコロンさん、なんだか不思議そうな顔をされました。

 ふふ、何故かって。それは―――


「まあいっか。それでさ」

「ええ!?良くないですよ!?なんでコロンさん、勝手に話し進めるんですか!?私のこの上機嫌な話題聞いてくださいよ!」

「いや、そんな事より。ちゃんと作戦覚えてる?」


 そ、そんな事!そんな事って言われましたよ!

 私は凄くショックです。うう、聞かないでそんな事って、あんまりですよぉ……。


「あれ?レシア?」

「ぅー、何ですか」

「もしかして忘れた?」

「覚えてますよぅ」


 作戦は覚えてますけど、覚えてますけどぉ~。聞いてくれても良いじゃないですか。ぐすん。


「あ、すいません。そこのお二人」


 気落ちしていたらそんな声が。

 誰でしょうか?

 そう思って声のした前の方を見ると、一人の少女が立っています。見た目は同い年くらいでしょうか?ですけど獣人さんみたいですね。犬の獣人さんです。と言う事は年下でしょうか?

 でも、あれ?あの着てる服どこかで見ましたね。


「この先、今は一般の人立ち入り禁止なんです」


 そう思って見ていたらその子は私達の所へ来るとそう説明してくれます。

 ふむふむ、なるほどぉ。


「何でですか!?私、そっちに行かないといけないんですけど!」

「すいません。大怪盗ノクターンホロウが犯行予告を出したので、混乱を避けるために現在通行できないようにしてるんです。ご協力お願いします」


 そう言って頭を下げられました。

 ですけど、ですけどぉ。私達はそっちに行かないといけないんですよ。クリスタ君と約束しましたから。むむむ……。


「ダメなんですか?」

「すいません。それに本日の夜間の行事は明日に回されますので明日来て頂ければ見れますので」


 彼女はそう言って頭を下げます。

 うむむ、よく分かりませんけど理由の一つが消えた気がします。

 ですから、私は一生懸命考えます。どうやったらここを通れるのかと。

 むむむむむ……!

 そうして一生懸命考えますけど、やっぱりこの子を倒していく方法しか思いつきませんよ。

 あんまり、傷付けたくないんですけど、でも―――


「レシア。仕方ないから戻ろう」


 この子に風魔法ごめんなさいを発動しようと思った所で、コロンさんに呼び止められました。


「ご協力感謝します」


 そのコロンさんの言葉にこの子はまた頭を下げます。

 って、ええ!?


「良いんですか!?このままじゃ、トパーズサイト様のティむぐ」

「いいからいいから!ほら、行くよ!」


 反論しようとしたらコロンさんに頬をむぎゅっとされちゃいました。

 そうして私はそのままコロンさんに連れられて、建物の影に。私はそこで頬を開放されます。むう!


「何するんですか!コロンさ――」

「ねえレシア」


 そしたら少し暗い雰囲気でコロンさんが言うじゃないですか。ど、どうかしたんでしょうかね?


「あそこでトパーズサイト様からティアラが取れないとかって言う所だったでしょ」


 何かしたかなと思っていたらコロンさんにそう言われました。

 え?確かに言おうとしてましたけど?


「え?だってそれが目的――」

「あのね、それをあの子の前で言ったら確実に私達がノクターンホロウだってバレるでしょ!」

「あっ」


 た、確かに!


「まあ、見た感じあの子は宝晶族ジュエリスタルの名前を知らないみたいだから、不思議な人って目で見てるけど。知ってる人だったら大変な事になってたよ」

「うう、すみません」

「分かったら注意してよ?」

「はい」

「それに、あの制服、スクロック魔法学校の生徒があんな事してるって事は――」


 そこでコロンさんはうーんと考えます。

 ど、どうしたんでしょうかね?


「どうかしましたか?コロンさん」

「もしかしたら、スクロック魔法学校の生徒と教師総出で護衛してるかもしれない」


 え?つまり――


「マイティアちゃんに会えるかもしれないって事ですか?」

「そう言う事」

「なるほど~」

「敵として、ね」

「へ?」


 現場でマイティアちゃんに会えると期待していたら、コロンさんがそう言います。

 って、うぇぇぇええええ!?


「な、なんで敵なんですか!?」

「考えたら分かるでしょ。私達は怪盗。向こうはそれを阻止するために動くんだから」

「あ、確かに」


 むむう、こ、これはやばそうですよ。マイティアちゃんと戦うなんて。

 そんな事になったらあの合成獣キメラさんみたいになるって事ですよね。

 あわわわわ!凄く背筋がゾワッとします。で、ですけど、話せば分かってくれますよね。

 きっと。うん!そうですよ!マイティアちゃんですもん!

 

「でも、どっちにしても会場が見えないと厳しいかも……」


 無事を確信した私の前でコロンさんがうむむーと悩み始めちゃいました。

 うーん。やっぱり


「やっぱり、あの子を倒して行った方が良いですかね?」

「へ?いや、それは絶対ダメだから」


 提案したらコロンさんが慌ててそう言います。

 えー、でも


「ここであの子に危害を加えたら色々台無しになるでしょ。それに、スクロック魔法学校の学生だよ?勝てるかどうかも分からないでしょ」


 不服でしたけど、コロンさんにそう言われました。

 そ、そんなに強いんですか……?


「だから、どうしようかなって」


 そう言ってコロンさんがまた悩み始めます。

 うーん、どうしましょうね。

 私も考えてみますけど、全然いいアイディアが浮かびませんよ。

 どうしましょう。どうしたら良いんでしょうかね?

 むむー、どうにかして会場を見る方法って何かないですかね?


 あ、そうですよ!あの子がいる方とは別の道を探せば良いんですよ。

 むふー!私、頭良い!という訳で未だに悩んでいるコロンさんに報告ですよ!


「コロンさん、コロンさん!」

「何?」

「別の道を探せばいいんですよ!」


 どうですか!この発想!ふふ。凄いでしょう!


「レシア、普通に考えてあの道以外にもいるに決まってるでしょ」

「へ?」


 え?そんな事がありますかね?


「あの子が立ってる場所。大通りとかじゃなくて脇の細道だよ。そんな所にいるんだから他の場所もいるに決まってるでしょ」


 私が首を傾げていたらコロンさんがそう教えてくれます。

 ふむふむ、それじゃあ


「それじゃあ、ダメじゃないですか!」

「そう、だから悩んでるんだけど」


 うむむー、どうしましょう。

 どうにかして会場見るようにできないでしょうかね?

 私は再度考えます。むむむです。

 ですけど良い案が思い浮かびませんよ。どうしましょう。

 あ。そうですよ!どこか高い所から見ればいいんですよ!流石私!

 これをコロンさんに伝えましょう!そうしましょう!


「コロンさん、コロンさん!」

「何?」

「高い所から見れば良いんですよ!」


 どうですかこれ!良い案でしょう!


「それも考えたけど、高い所って言っても、そんなに高い所は無いし、高い所って言ったらスクロック魔法学校とか宝晶族様がいるっていう城になるから入れないでしょ」


 またもや論破されちゃいました!

 むむぅ、じゃあどうしたら良いんですかっ!


「はあ。飛べたら手っ取り早いけど、翼人族フロウィングがいる訳でもないし、魔法でもそんな高等呪文出来る人なんて」


 コロンさんも色々考えてるみたいで意気消沈です。

 あれ?でも、


「コロンさん」

「何?」

「私、飛べますよ?」

「……へ?」


 そうですよ。私飛べるんですよ。


「え?本当に?」

「飛べますよ」

「レシア。今、冗談言ってる場合じゃないから」

「本当に飛べますから!ほら!」


 私は何故か信じてくれないコロンさんに事実であるのを証明する為。私は飛びます!

 ふわっと。


「本当に飛んでる。え?レシア。本当に!?」

「だから飛べるって言ったじゃないですか!」


 私は驚いてるコロンさんに少し強く言います。

 だって信じてくれなかったんですもん。ですけど、これで会場の下見が出来ますね。良かったです。


「すみませーん!飛翔の魔法は安全上禁止されてるのでやめてくださーい!」


 って、あの子にそう言われちゃいました!

 仕方なく私は地面に降ります。折角良い案だったのに。

 その時、もう日が暮れかけて薄暗くなってきました。

 確か、予告状に書いてるのが夜なのでもうあまり時間が無いですよ!


「うへぇ、どうしましょう」

「うーん、どうしよう」


 なのに、なのに!もう、時間が無いのに、何もできていません!

 うひゃーですよ!


「飛翔の魔法使えない。でも、方法としては今すぐにでも飛翔の魔法をこっそり使えたら良いんだけど、上空にあがったら目立つと思うし。でも、もう薄暗くなってるから、時間は残り少ないかぁ。う~ん、何とかしないと」


 私の隣ではコロンさんがぶつぶつ言っています。

 うーん、ここは。


「コロンさん!ここはもう強制突破しか無いですよ!」

「いや、ダメだから!怪盗自らは相手を傷つけちゃいけないから!」

「え?そうなんですか?」

「そうなの」


 初耳なんですけど。

 ええ、でもだったら何も出来ないじゃないですかー……。

 完全に意気消沈です。うへー、どうしましょう。


 私は良い案が浮かばないので薄暗い空を見上げました。

 どーしましょー……。って、あれ?何か動いてます?


 私が見上げた先で何かが動いてるように見えましたけどなんだかよく分かりませんね。

 んー?なんでしょうかね?

 そう思ってよく見ていたら、なんと黒い鳥さんでした。

 黒い鳥さんが私達の隠れてる建物の屋根の上で首を凄い動かしてます。まるで円をえがくように。


 あ、そうですよ!


 私の頭にピピピンっと来ましたよ!ふふっ

 という訳で早速私はコロンさんに案を出します。出すのです!


「コロンさん、コロンさん!」

「何?」

「黒い服を着て飛べば良いんですよ!」

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