第18話 光晶祭 ‐準備‐
「おー、凄いです!」
宿の部屋で私は自分の着ている服を見て思わず声を出してしまいました。
だって、凄く素敵なお洋服なんですもん。仕方ないですよね!と言っても作った訳じゃなくて、あのワンダーさんから貰った黒い布が巻きついて出来たものですけど、でも凄いです!
なんというか黒と白のお洋服で、きちっとしてる感じですけど、真ん中にリボンの飾があってコーメインのオーラ様の所にあった服装にも似ている感じです。
なんていうか華やかな感じです。
そして私よりも先に巻きつかれたコロンさんはというと、こっちもなんというか凄いです。
色は私と同じ感じの黒と白色ですけど、凄くきちっとした服装でまるでコーメインの男性の使用人さん達の服装そっくりです。ですけどそのせいで私よりも大きな胸がはっきり分かりますね。むむぅ、少し悔しいです。
そして頭には黒い帽子と、顔には片方しかない眼鏡があります。……眼鏡って片方だけで良いんですかね?
でも変って感じはしないです。
それと黒いマントですね。これはコロンさんと初めて出会った時にマント付けてましたけど、これはそれよりも立派な感じのマントです。
「私はあるのに。でも、古くなってたから良かったかな」
コロンさんはそう言いつつ色々触って確かめています。
あ、今はノクターンホロウさんでしたね。
「わー、二人ともすごーい!」
「です!かっこいいです!」
クリスタ君とコクヨーちゃんが目をキラキラさせて絶賛です。
ふふ、そう言われると少し恥ずかしいですけど嬉しいですね。
「いーなー。僕も欲しー」
と、クリスタ君が私の事を見ながら欲しそうにそう言います。
んー、確かにクリスタ君だけ黒い布でのお洋服無いですもんね。
あ、だったらあげればいいんですよ!
「クリスタ君にもあげますよ!」
「ほんとー!?」
「はい」
私の言葉にクリスタ君は「わぁー」と満面の笑みに変わります。
ふふ、これでクリスタ君だけ仲間はずれじゃないですね。
それじゃあ早速。と言う事で私は腰に付けたバッグを、バッグを……、あれ?
バッグがありませんよ!?
いくら体のあちこちを触って探しても全くありません!
というか他のバッグも見当たりませんし、というかその時気付いたんですけど私がさっきまで着ていた服も無いです!?
ど、どこにいったんですか!?
「れしあさんどうしたの?」
そうしていたらクリスタ君が声をかけてきました。
どうしたのって。
「バッグが無いんですよ!服も無いです!」
確かにさっきまであったのは確実なんですけど、全く無いです!
あれには食料とかワンダーさんから貰った布とか着替えとか色々入ってるんですよ!?
「服も無いって、そういえば私が着てた服。服の中に無い。……って、ちょっと待って。この服って脱げるの?」
と、そんな私にコロンさん。
脱げる脱げないかって。
「え?そこは普通に脱げるんじゃないですか?」
そうですよ。普通に服なんですから。
大丈夫なはずです。そうですよ。
……えーと、多分。そうですよね?
あれ、言われるとなんだか普通に不安になってきましたよ。本当に脱げるんですかこれ?
そう思って私はそーっと自分の服の袖に指を入れてみました。
貼り付いてたりしないですね。これは、大丈夫そうです。
「多分脱げると思いますよ」
「いや、多分って確証ない事言われても」
そう言ってコロンさんは困った表情をしました。
まあ、ですよね。ならば!
「私が脱いでみましょう!」
私は着ている服に手をかけていつも服を脱ぐようにバッといきます。
そしたら、なんだかシュルって感じで脱げて、服が布に戻っちゃいました!
「コロンさん!布に戻っちゃいましたよ!?」
「ほ、本当だ。っていうか、服が脱げてる訳じゃないんだね」
そう言ってコロンさんは見てきます。
そういえば、黒い服を着ていた時になくなってた私の服普通に今着てますね。それにバッグも戻ってます。
ああ、良かったです~。
「それじゃあ、これは現地で着るとして。後は時間まで待機しよっか」
「そうですね」
そんなやり取りをしながらコロンさんも今着ている服を脱ごうとしました。すると、シュルっていう音がして服が布に戻ります。
どうなってるのか分かりませんけど、凄いですよね。
「ねえねえ、僕のお洋服はー?」
「あ、そう言えば!」
この布について考えようとしていたらクリスタ君に言われて思い出しました。
お洋服をあげるって言ってた事を。
そういう事で私は早速バッグをごそごそして布を取り出しました。
えーと、これをクリスタ君にですね。
「あ、ちょっと待ってー」
と、クリスタ君の方に向けようとしたらクリスタ君に待ってと言われてしまいました。
どうしたんでしょうか?
するとクリスタ君は腰に巻いてるベルトを外し、それをバッグごとテーブルに置きました。
「うん!いいよー」
と、クリスタ君はそう言います。
なんで外したんでしょうかね?まあ、いいですか。
そうして私がクリスタ君に黒い布を向けると案の定クリスタ君に巻きついていきます。そして――。
「わあ!」
凄く可愛らしいお洋服になりました。
なんていうか、端が白くてふわふわした感じになってます。それに目を引くのは上着です。
マントっぽいんですけど、コロンさんのマントとは違うよう感じで、マントみたいな上着って感じでしょうか?羽織ってるって感じです。それも端の部分が白くてふわふわしてる感じです。
それにこのお洋服の真ん中には白くてふわふわした玉が二つ下がってて凄くかわいらしいです。
下の服も袖が広くてクリスタ君の嬉しそうに振ってる手の動きで鳥さんの翼みたいにぱたぱたしてますし、お洋服で膝まで全部隠してる感じですね。
確かお父さんも同じような服持ってたと思います。でも、あれは白色でしたけど。
でも、凄く良いです。……私も欲しいですね。
「なんかクリスタの服、女性物っぽいけど……。というかなんでポンチョ?」
そう思っていたらコロンさんがそう言いました。
あの服、ポンチョっていうんですか。なんだか可愛らしい名前の服ですね。
というか、女性物なんですか。これ。
「じょせーものなの?」
と、クリスタ君も疑問に思った様子で首を傾げました。
「うーん、下は祭服みたいだけど、そのポンチョは普通に少し裕福な女の子が身に付ける物だよ」
そんなクリスタ君にコロンさんは説明します。
つまり、クリスタ君の着てるのは二つ出来てるって事ですよね!?
少し羨ましいです。それと、なるほど。あのポンチョは女性物なんですね。
その時、私の頭にビビッと来ました。
そのポンチョは女物、と言う事は男性用のポンチョもあるって事ですね。あ、そう考えたら凄く気になりますよ!どんなんでしょう?男物のポンチョって。
「僕、男だよ?」
気にしていたら、クリスタ君は少し残念そうにしています。
あー、そういえば結構似合ってますけど、男物じゃないんですもんね。うーん、どうしましょうか?
私は考えます。むむむむむー……。
むっ!
その瞬間閃きました!そうです。そうすればいいんですよ!
私は閃いたこの素晴らしい案を早速クリスタ君に伝えます。
「クリスタ君、一回脱げば布に戻るので脱いでみたら良いと思いますよ」
そうです。脱いでしまえば良いんですよ。そしてまた服になってもらう際に男物でお願いします!って言えば良いんですよ。
ふふ、どうですか。この素晴らしい発想!
「脱ぐの?」
クリスタ君は首を傾げます。
「はい。それで脱いでからまた服になる時に男物でお願いしますって言えば良いんですよ」
「おー!なるほどー!」
ふふ、私の提案にクリスタ君は目を輝かせます。
と、早速クリスタ君が脱ごうと頑張ってます。
「むー?……れしあさん、脱げないよー?」
ですけど、クリスタ君は頭が抜けないようです。
それはそうですよね。
「クリスタ君、一旦その結び目を取らないと脱げないですよ?」
私はそんなクリスタ君に教えてあげます。
そうです。クリスタ君は先端にふわふわの玉が付いてる可愛らしい紐が結んでいるのを
「解く?解くってなーに?」
そしたらクリスタ君首傾げちゃいました。
「クリスタ君、解くって事知らないんですか!?」
「うん」
クリスタ君は私の言葉に普通に頷きました。
解くを知らないってクリスタ君、どういう生活してるんでしょうかね?
まあ、でも、ここはあれですね!
久々にレシア先生としてクリスタ君に教えを――
「おりなー、解くって言うのはこう言う事です。それにここをこうすると脱げるです」
「わあー、ありがとー」
そう言ってコクヨーちゃんがクリスタ君の紐を解きます。
って、また私が教える場面取られちゃいましたよ!?
それにまさか、コクヨーちゃんに先を越されるなんて!!
思わぬ伏兵にぐむむーです。
次はこうはいきませんからね!
私がそう胸に決めていたらクリスタ君が黒い布で出来たポンチョをばさりと脱ぎます。
ですけど、あれ?
布に戻りませんよ。
私の時とは違って普通に脱げてますし、布に戻ってません。
うーん、これはどういう事なんでしょう?
「れしあさん、戻らないよ?」
「そうですね」
この事に私とクリスタ君はお互いに首を傾げてしまいます。
うーん、どうして元の布に戻らないんでしょうか?
元に戻らないとまたお洋服にはなりそうな気がしませんし。むむー。
「そのままでも良いと思うけど。下は祭服なんだし」
悩んでいたらコロンさんがそう言いました。うーん、まあ、そうですね。
確かに服装的にはあってますし良いと思いますけど、さっきまで
「そうなの?」
「うん。まあ、ポンチョは寒い時身につければ良いんじゃない?見た感じ耐寒に良さそうだし」
「たいかん?」
クリスタ君は首を傾げました。でも、私も良く分かりませんね。耐寒て何でしょうか?
「寒い所で寒くないように暖かい服着たりする事」
「そーなんだ。でも、これじょせーものなんでしょ?」
クリスタ君はコロンさんの言葉に目を輝かせましたけど、またシュンってなってます。
「それよりも、そろそろ行動しないといけないから皆、気を引き締めてよね」
そう言えばそろそろ日が赤くなり始めてますね。そろそろ夕方になります。
と、言う事でこれから作戦決行になる訳ですけど、むむむー、これからする事を考えると凄く緊張しますし、盗るのは可哀想ですけど、可哀想ですけどクリスタ君たちの為です!頑張りましょう!
でも、いえ、一旦落ち着きましょう。大丈夫、大丈夫です!後でちゃんとごめんなさいすれば良いんですから!
「クリスタとコクヨー。遺跡までの道は分かる?」
と、コロンさんはクリスタ君たちに問いかけます。
「うん!だいじょーぶ!」
「はいです!おりなーと一緒なのでだいじょーぶです」
二人は元気に返答します。
二人はやる気満々です。この二人を見たら、うん!私も頑張らないといけませんね!
「しっかりやってね。私達も頑張るから。……それじゃあ行こう」
そのコロンさんの言葉を合図に、私とコロンさんは部屋を後にします。
扉が閉じる瞬間、後ろからクリスタ君とコクヨーちゃんの「頑張って」という声援が聞こえました。
うん。頑張って、絶対に成功させますよ!
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