第9話 宝晶と学術の街へと到着

「わあー!早いです!」


 アルアハールさんの背中。私は過ぎていく景色を眺めながら感動を覚えました。

 だって、私が飛行するより早いんですもん。

 凄い速さで過ぎていく景色。ですけど、風は一切感じません。

 何故ならアルアハールさんが防風の魔法をかけているからです。これが無かったら私達は吹き飛ばされているほどの風なんだそうです。

 少し怖いですね。と、そんな感じで飛行をするアルアハールさんですけれど、道は続くばかりでまだ目的地の街が見えてきません。

 最初は楽しんでましたけど道中が続くと飽きてきてしまったようでクリスタ君は私に寄りかかって眠ってしまっていますね。

 コロンさんも夜になり少し休むそうで横になっちゃいました。


「レシアは休まなくても良いのか?」

「へ?」


 うーん、休みたいですけど……。ここで休んだらアルアハールさんに悪いですよね?


「今寝たらアルアハールさん一人じゃ無いですか。それって寂しくないですか?」

「我は常に単独で各所を回っている。誰かを乗せるのは今回が初めてだ。故に、寂しいとは思わん。故に気にするな。それに、寝るという行為、休むのは生き物にとって大切な事であろう。 故に街という場所に着くまでゆっくりと休むがよい。我が責任を持って届ける故」


 アルアハールさんはそう言ってくれました。

 うーん、でも、寝たら悪い気がしますけど……。


「では、私も失礼してお休みしますね。アルアハールさん、ありがとうございます」


 やっぱり眠気には勝てませんね。

 そうして私は寄りかかっていたクリスタ君をゆっくりと横にして、自分も眠りにつくのでした。


 目が覚めたのは朝日を感じてでした。

 私が目覚めると私の視界にはアルアハールさんのゆっくりと羽ばたく翼と、地平線に上る朝日が見えます。

 辺りを見渡すと皆さんまだ眠っている様子です。

 クリスタ君はまた私の腕の中で眠っていますし。


「ん?レシア、起きたようだな」


 と、寝息を立てているクリスタ君を眺めているとアルアハールさんが声をかけてきました。


「はい。お陰様でゆっくり眠れましたよ」

「そうか。それは何よりだな」


 アルアハールさんは前を向いたままですけどそう言いました。

 それにしてもよく前を向いているのに私が起きたのに気付きましたね?

 アルアハールさんまさか後ろにも目が付いてたりするんでしょうか?ですけど探してもありませんね。


 と、その時です。

 向かう先の地面に小さい建物の集合が見えてきましたのは。


「あ、あれ。町じゃないですかね?」

「ああ、そうだと思う」


 私がそう言うとアルアハールさんは答えます。

 どうやら町で間違い様子です!


「クリスタ君起きてくださーい。町が見えてきましたよ!」

「んぅ?まちー?」

「そうです。町ですよ!」

「まちー……、町!」


 起こしたクリスタ君は最初ボーっという感じでしたけど私が同じ事を言ってあげたら眠気が飛んだ様子で目を輝かせました。

 ふふ。さあ、次の方ですね。

 私はそうしてコロンさんにも声をかけます。


「コロンさん、起きてください!」

「んん~、お母さん。まだ早いよぉ」


 コロンさんがそう言いました。

 どうやらお母さんだと思っているみたいですね。

 ……少しイタズラしてもバレませんよね?


「こら、ダメですよ!ちゃんと起きないと立派な大人になれませんよ!」

「……は――ッ!?」


 私はイタズラ心に任せてそう言いました。

 そしたらコロンさんはいきなりガバッと起き上がります。


「い、今、私、なんて言ってた!?」


 そんな事を聞いてきました。

 何を言ってたって……。


「お母さんって言って――」

「忘れて!レシア、忘れて!」

「え?あ、はい」


 コロンさんは顔を真っ赤にしながら言ってきました。

 凄く恥ずかしかったみたいです。うーん、でもたまーに言っちゃいますよね~。

 ……あ、思い出したら恥ずかしくなってきました。

 確かに恥ずかしいですね。これは忘れてあげた方が良いでしょう。

 という事で気を取り直して!


「それよりもです!コロンさん、町が見えてきましたよ!」

「え?あ、本当!?」

「はい。あれですよ!」


 私が指す先。それをコロンさんは見て目を見開きました。


「あれが、スクロック。初めて見た」


 私が見たときよりも遥かに大きく視界に映る町を私達は見ていました。

 ふと、近付いてから気付いたんですけど町のいたる所に魔宝石があってまだ薄暗く見える町を淡い光で照らしています。

 なんだかとても綺麗です。


「では、あの入り口っぽいところに下りるぞ」


 と、感動しているとアルアハールさんからそう声が掛かりました。


「お願いしまーす!」


 私は新しい町に期待を膨らませてそう言います。

 新しい町。何があるのか楽しみで仕方ないです!

 そうしてアルアハールさんはコーメインよりも遥かに大きな町の入り口へと向かって降下していきます。

 今まで小さく映っていた地面が大きくなっていきますね。そして私達を乗せたアルアハールさんは地面を数歩歩き、入り口前で止まりました。

 無事に到着ですね!


「ど、どどど、ドラゴン!?」

翼手竜ワイバーン種だ!応援を呼べ!」


 と、突然そんな声が聞こえて見れば槍を持った二人がいて、一人が町の中に走って入っていってしまいました。

 なんというか慌てた様子なので転びそうですけど……。


「おい、貴様」

「な!?喋るドラゴンだと!?」


 アルアハールさんは残った一人に声をかけました。

 するとその人は更に驚いた様子です。


「そう怯えるな。我はすぐに去るが故それ程警戒せずとも良い。我はこの町に用事のある者を運んで来たに過ぎぬからな」

「……は?」

「と言う事だ。降りるが良い。レシア達よ」


 アルアハールさんが私達に声をかけてきました。

 私達はアルアハールさんに従い背中から降ります。その時、アルアハールさんは姿勢を低くしてくれてとても降りやすかったです。

 まあ、そう言ってもクリスタ君はちゃんと降りれるか心配だったので私は降りた後にクリスタ君に手を伸ばして降ろしました。

 そんな私達を見て槍を構えた人は呆気にとられている表情をしています。


「ではな」


 と、私達が降りるとアルアハールさんはそんな事を言い翼を広げました。

 って、折角ここまで来たのに、見て行かないなんて勿体無いです!


「アルアハールさんも一緒に町を見て行きましょうよ!」

「いや、そうしたいが我もする事があるのでな。まあ、お主等が旅を続けていればどこかでまたまみえるであろう」


 アルアハールさんはそう言うと羽ばたいてフワッと浮きました。

 えー、折角仲良くなれたのに。残念です。

 ですけど、そうも言ってられないですよね!


「アルアハールさん!」

「なんだ?」


 アルアハールさんが私に答えてきます。

 それに続く形で私は言いました。


「ここまでありがとうございました!」

「ありがとーございました!」


 私が言うとクリスタ君も続いてアルアハールさんにお礼を言います。

 ここまで連れてきてくださってんですから当然ですよね!


「ああ、我の方こそ魅力的な体験が出来た。礼を言う!ではな!」


 そう言ってアルアハールさんは飛び去ってしまいました。

 私達はその姿が見えなくなるまで手を振ります。

 って、いなくなってから気付いたんですけど、礼を言うって言ってましたけど、その後お礼言ってないですよね?あれ?言ってませんよね??

 そう思っていましたら後ろからガシャガシャという音が聞こえてきました。

 そこには同じような服装の人が数人走って向かって来ている姿でした。


「今、戻った!ドラゴンは!?」


 と、さっき町に走って行った人が息を整えないまま呆然と立っていた方に言います。


「あ、ああ。ドラゴンは去って行った」


 呆然としていた人は我に返ったようで来た人にそう言いました。

 そして私達の方に指を向けます。


「この者達を連れて来ただけのようでな」


 皆さんの視線が私達に集まります。ええっと、ちょっと恥ずかしいですね。


「おはよーございます」


 と、そんな声が聞こえて見ればクリスタ君はいっぱい集まっている人達に向かって頭を下げていました。

 でも、返答は返ってきません。


「……あれ?」


 それが不思議だったようでクリスタ君は顔を上げて首を傾げました。

 まあ、そんな雰囲気では無いので返答は来ないと思いますけどね。

 するとその中から一人の人が進み出てきました。

 なんというか筋骨粒々で強そうですし、顔も厳つくて少し怖いですね。


「この街の私衛兵しえいへい長をしているギルシュガルデだ。貴様等、私について来い」


 その人はそう言いました。

 ですけど、声もそうでしたけど凄く怒っている表情で怖いです!

 と、その時ずっと黙っていたコロンさんが話しかけました。


「あ、あの」

「なんだ?」

「私達、旅をしていて、ですね」

「詳しい話は私達の詰め所で聞く。良いからついて来い!」

「は、はいぃぃいい!」


 凄く厳つい声で言われてコロンさんが跳ねました。

 私も怖いです。クリスタ君は、……平然としていますね。

 それでずっと首を傾げています。


 そんな事よりも。

 私達はギルシュガルデさんの後ろを着いて詰め所という名前らしい建物の中に入りました。

 正直、町の中には入ったんですけどこの人が怖くて周りを見ている暇なんてありませんでした。


 そしてついって行った先の部屋。

 そこにはギルシュガルデ私衛兵長のお部屋と書かれたピンク色のプレートが掛かっていました。

 ……凄くファンシーですね。どういう意味かは知らないですけど、そんな感じの言葉が似合うプレートです。


「そこに座れ」


 ギルシュガルデさんに言われるがまま私達は指された長い椅子に腰掛けました。

 ……凄くふかふかです!

 そんな私の隣ではクリスタ君が体を上下させて喜んでいます。


「わー!凄ーい!ふかふかー!」

「そうだろうそうだろう。……ゴホン。先ず静かにしろ」


 あれ?なんか今、ギルシュガルデさんの雰囲気が変わったような?

 と、そんな疑問が浮かんでいる私達の向かい側にギルシュガルデさんが座りました。


「お前達、さっき聞いた話だが、ドラゴンで来た経緯を話してもらおうか?」


 そうしてギルシュガルデさんはギラリという感じで見てきました。

 ほおぉおおおおお!!凄く怖いです!


「んとね!あるあはーるさんがね、りょーり食べてみたいって言ったから作ってあげてね。あ、作ったのはね、れしあさんでね。それでねそれでね!そのお礼にって乗せてきてもらったの!」


 そんな中、クリスタ君が笑顔で言います。

 よく言えますね。私、怖くて無理です。コロンさんはずっと私の隣でくっ付いてびくびくしています。


「そっか~。そういう経緯だったのか~」

「うん!」


 ギルシュガルデさんはクリスタ君にまるで蕩けた様な表情を向けて言いました。

 ……この方。さっきまできつい表情をしていたギルシュガルデさんなんでしょうかね?


「それでこの町には何しに来たのかな?」


 明らかに違う声色に逆に怖くなりますね。

 というかクリスタ君が凄く生き生きして話しています。


「えーとね、旅しててね。色々見て回ってるんだけどね。ここに詳しい人がいるって聞いてね、来たの!」

「そうなのか~。詳しい人って誰かな?」

「分かんないけど僕の事知ってる人なんだって!」

「……は?」


 クリスタ君の言葉にギルシュガルデさんは眉間にシワを寄せました。


「え、ええっとですね。そのクリスタの種族について詳しい方がいるという事でコーメインのオーラ子爵様より教えていただいて、それで来たんです」


 と、お互いに首を傾げ始めた二人にコロンさんが言いました。


「ふむ、そう言う事だったか。それに偽りは無いな?」

「は、はい!」


 ギルシュガルデさんは明らかにクリスタ君と話していたときとは違う声色で話しかけてきました。

 それに緊張した様子で返答するコロンさん。

 なんでこんなに怖いんでしょうか……?


「そうか。その詳しい者というのはこの街を治めるグリノレッジ公爵様の事だろう。だが、今は祭り期間中であるからお忙しくしておられるが故に会うのは難しいぞ。まあ、この街に何かしらの危害を加える目的ではないのは分かった。行って良いぞ」


 と、ギルシュガルデさんはそう言って私達をお部屋から出しました。

 とりあえず、移動しましょうかね……。


「うーんと、祭り期間中って事はもしかして光晶祭こうしょうさいかな?」


 詰め所を出ながらコロンさんがそう言いました。

 光晶祭って何でしょうかね?

 すると早速クリスタ君は質問をします。


「こーしょーさい?」

「この街にいる唯一の宝晶族ジュエリスタルに魔力が枯渇した魔宝石に新しく魔力を込めてもらうっていうお祭りよ」

「へぇー」

「そうなんですか」


 コロンさんの説明に感心してしまいました。

 どうやら凄いお祭りみたいですね!


「まあ、年に一回。三日間だけしかやらないお祭りだから今が何日目か分からないけど、良い時に着いたみたい」


 そしてコロンさんも嬉しそうにしています。


「でも、最初は宿に行こ。祭りの時だと人がいっぱいいて荷物邪魔になるから」


 という事で私達はコロンさんの案で宿へと向かいました。

 って言っても初めての街なのでよく分からず歩いて、広くなってる所に看板に貼られた地図を見つけてようやく宿に来たって感じでしたけど。

 そうして私達は宿にお部屋を借りました。


「ふう、ようやく着いたー」


 コロンさんはそう言ってベッドに座ります。

 その横にクリスタ君が座って、バッグからごそごそと石を取り出して食べ始めました。

 ……ああ、見てると何となくお腹空きますね。


「あ、そう言えばこの街には綺麗な青色の魔宝石の大結晶があるんだって。見に行ってみない?」


 と、コロンさんが言いました。

 へえ、そんなのがあるんですか。


「見てみたいですね」

「僕もー!」


 私が言うとクリスタ君も目を輝かせて言いました。

 この時点でやる事は決まりましたね。

 ですけどそれを見に行くのは朝食を食べてからにしようとコロンさんが言いましたから、朝食後に行く事に。

 そうして私達は宿の一階にある食堂という場所へと来ました。そこでは色々な人が朝食を食べています。

 見ているだけで美味しそうですね!早く食べたいです!

 そして私達は空いてる席に座りました。

 そこには薄い紙が一枚あって色々書かれています。その紙の上には料理表と書かれていました。どうやらこの紙に書かれているのが料理らしいです。

 ですけど、よく分かりませんね。文字だけで想像するのは難しいです。うむむ、どんな料理が出てくるんでしょうか?


「あれ?お前達」


 と、そんな声が聞こえてきました。その声に視線を向けるとコーメインの時に見かけた鎧の人が鎧を着けずに立っていました。

 なんというか凄く新鮮ですね。

 その横には深くフードを被っているあの方もいます。

 レオンさん一行ですね。ですけど、レオンさんはいないみたいですけど。


「なっ!?も、もしかしてディアナ様とルーファン様!?」


 そんな事を思っていたらコロンさんが驚いた表情で言いました。

 むむ?コロンさん、知ってるんでしょうか?


「ん?その娘は?」


 と、思っていたら鎧の人が聞いてきました。

 そういえばコロンさんに会う前に行っちゃいましたもんね。


「新しい旅の仲間のコロンさんです」

「ほう、そうか」

「は、はい!こ、こここ、コロンって言います」

「そうか。よろしくな」

「は、ははははい!こ、こちらこそ!」


 コロンさんはそう言って立ち上がって礼をしました。

 なんというか凄くカッチコッチな感じに動いてます。


「それにしてもまた会うとはな。しかしどうやってコーメインあそこからスクロックここまで来たんだ?馬車でも三日、速急馬車でさえも二日はかかるのだが?」

「それが不思議。私達も昨日着いたばかりなのに」


 と、お二人にそう言われてしまいました。

 ふふ、ここは私が!


「えっとね、あるあはーるさんに乗せて来てもらったの!」


 って言おうとしたらまたクリスタ君に先に言われてしまいました!うう、早すぎませんか?クリスタ君。


「アルアハール?聞かない名だな」


 ですけど鎧の人は分かっていない様子です。その横のフードの人も同じ感じで首を傾げています。

 ふふ、ようやく私の出番のようですね!


「ドラゴンさんですよ」

「……は?」

「……え?」


 お二人とも何というか驚いている様子の凄い顔されましたね。


「ドラゴン、に乗ってきたのか?」


 鎧の人に恐る恐ると言った感じで問いかけられました。


「はい。そうですけど」

「あるあはーるさんね。翼手竜わいばーんなんだって」


 私が肯定するとクリスタ君が元気良く情報を付け加えます。

 ですけど鎧の人は戸惑いながら頬を掻いています。


「いや、まあ、そうか」

「うん!」


 なんというかクリスタ君と鎧の人の間にかなり温度差があるように感じますけど。


「嘘って事は無さそうね。ドラゴンに乗って来たのなら納得はいく」


 と、フードの人は信じてくれた様子です。

 ですけど、私達がここにいる事の話題よりもお二人に聞いておきたい事があるんですけど。

 私はそう思い声をかけました。


「ところであの」

「何?」


 返答したのはフードの方です。


「コーメインの時、聞き逃しちゃったんですけど、お二人のお名前伺っても良いですかね?」


 私がそう言うとお二人は顔を見合わせました。

 すると二人の表情が少し笑顔になりましたね。


「ふふ、そうか」


 と、鎧の人が少し上機嫌な感じで言います。

 えっと、私、何かおかしい事言いましたかね?

 と、そんな事を思っていたら私は裾を引かれました。見ればコロンさんがテーブルから身を乗り出して低い姿勢で私を見ています。その瞳は凄く真剣な表情をしていました。

 ですけど、雰囲気がちょっと怖いんですけど……。

 と、そんなコロンさんが小さな声で私に言いました。耳打ちってやつですね。


「レシア、何言ってるの!ディアナ様とルーファン様を知らないの!?」


 そう言えばコロンさんがさっき口にしていましたね。

 ですけど、その名前がどちらの名前なのか全く分からないんですけど……。


「そう責めなくても良い。どちらかといえば、私が少し鼻が高くなってしまっていた事で困らせてしまったようだしな」


 と、私がコロンさんにそう言おうとした時、そんな声が聞こえ、見れば鎧の方がそう言っていました。

 それに続くようにフードの方も口を開きます。


「そうね。私も、レオン達としばらく一緒にいて同じように行く先々で皆に名前を覚えられちゃって、他の場所でもそうだったから自己紹介しなくても皆が知ってるもんだってなってた」


 その表情は少し寂しそうですけど、どちらかと言えば少し嬉しいようなそんな表情でした。

 どんな表情かと言われれば、えーと、苦笑い笑顔寄りって感じでしょうか?

 すると鎧の人が「隣の席に座っても良いか?」と聞いてきたので私は「はい」と答えました。

 まあ、お二人立ったままですし、疲れますよね。

 そしてお二人は私達の横の席に腰を下ろしました。


「では、改めて。私はディアナ。ディアナ・ノッテンブーロだ。代々勇者一族と共に世界の脅威に立ち向かった騎士の家系だ。よろしく」

「ルーファン、魔術師をしてるの。よろしく」


 えっと、鎧の人がディアナさんでフードの方がルーファンさんって名前だそうですね。

 ふむふむ。覚えましたよ!

 そんな私の横ではクリスタ君が「よろしくー」と返答しています。


「ところでお前達はこの街の祭りを見に来たのか?」

「いえ、クリスタ君の事について詳しい方がいらっしゃると聞いたのでそれで来ました」


 ディアナさんの言葉に私は答えました。

 そんな私の返答に「ほう」と答えるとディアナさんはクリスタ君を見ました。

 そんなディアナさんをクリスタ君は見返します。


「岩食族だっけ?」


 と、ルーファンさんもクリスタ君を見ました。


「石を食べる点なら宝晶族と同じだが、その近縁種なのかもな」

「そんな感じはする。でも、あの時ゴーレムが絶滅したって言ってたから――」


 そんな感じでお二人が考えています。

 ですけど、宝晶族も石食べるんですか。へー、クリスタ君と同じなんですね。


「まあ、この街で種族に詳しいといえば公爵殿の事だろうからお前達が探しているのは公爵殿だろう。だが、公爵殿は今日から始まる光晶祭で忙しくされているから会うのは終わってからの方が良いだろうな。というより終わるまで一般人は会えないだろうしな」


 と、ディアナさんがギルシュガルデさんと同じ事を言いました。

 うーん、まあ、でもお祭りを見るのも良いですよね。それに大きな魔宝石があるらしいのでそれも楽しみです。


「お待たせ二人とも」


 ここで更に聞き慣れた声がしました。見ればレオンさんが立っていました。


「ああ、お帰りレオン」

「お帰り」


 そんなレオンさんに返答するお二人。

 と、そのレオンさんの視線が私の方へ。


「え?あれ?君達、どうやってここに?」


 レオンさんがさっきのお二人と同じ様に問いかけてきました。

 なので私も同じ事を説明します。

 レオンさんは聞きながらお二人と同様に苦笑いです。そんな私の向かい側の席ではコロンさんが凄く固まっていますけど。


「そ、そうだったのか。まさかドラゴンに乗って来るなんてね。ところで、そちらの方は?」


 これまた同じ事を聞かれました。


「新しい旅の仲間ですよ!コロンさんです」


 私がそう言うとコロンさんはビクッと背筋を伸ばしました。

 って、お顔真っ赤です。大丈夫でしょうか!?


「そうか。よろしくコロンさん」

「ひゃっはい!こ、ここっ、こちちらこそ!」


 コロンさんはそう言って凄くぎこちなくレオンさんの伸ばした手を握り返しました。


「ところで皆はお祭り見て行くのかい?」


 と、レオンさん。


「ええ。そのつもりです」

「僕もー」


 私に続いてクリスタ君が返答します。


「あ、ですけど最初に魔宝石の大結晶を見に行こうと思ってます」

「あー、そうなのか。でも、残念だけど今日はその大結晶に光を灯す日だから今準備中で見に行けないよ」

「そうなんですか!?」


 ここで衝撃的な事を言われてしまいました。大結晶見にいけないそうです!


「どうしましょうコロンさん!」

「……手、触っちゃった。レオン様の、手……」

「こ、コロンさん?」

「へ?あ、な、何?」


 何かぶつぶつ言っていたコロンさんがようやく戻ってきてくださいました。


「どうしましょう。今日は大結晶見に行けないそうですよ!」

「へ?あ、そうなの?」

「はい。どうしましょう。予定無くなっちゃいましたよ!」


 私が悩んでいるとレオンさんが口を開きました。


「じゃあ、遺跡に行ってみるのはどうだい?」

「遺跡ですか?」

「ああ、この街の外れにある場所で一般公開もされているんだ。もうほとんど研究者達によって調べ終わっているらしいから目新しい発見は無いだろうけど、お祭りの開始は夜だから良い暇つぶしにはなると思うよ」


 と、レオンさんが説明してくださいました。

 遺跡ですか。どういう感じのものなんでしょうかね?

 ですけど、行ってみるの良いですね!


「そうですね!行ってみます!」


 こうして私達の次の目的の場所が決まったのでした。

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