第2話 最初の町を目指して
しばらく歩いた頃。
完全に高い位置になった太陽に照らされながら私とクリスタ君は草原に見えた道に沿って歩みを進めていました。
ちなみにクリスタ君には私の替えのシャツを着せています。だぼだぼですけど、ボロボロの布を着ているよりはマシだと思いますし。
そして、私達は特に何かに出会う事も無く、他愛も無い会話をしながら進んでいきます。
その会話の中で知ったんですけど彼はなんと火山地帯という場所から来たそうです。なんでも植物はあまり無く、岩だらけの場所だそうです。
そしてそして、お昼寝をしていたらうっかり溶岩というモノの中に落ちてここまで流されてきたんだそうです。
なんでも溶岩っていうのは火山地帯の川みたいなものだそうで、地下水脈のように地中も流れているんですって!
ああ、行ってみたいなぁ。その火山地帯という場所。どんな場所なんでしょうか?
「人間の町ってどんなんだろうね?」
「え? あ、そうですねー。人間がいっぱいいると思いますよ?」
考え事をしていたら不意に声をかけられて咄嗟に答える私。
急に話しかけられても冒険者さんとの会話からの情報を巧みに出す私。ふふん、どうですか!
そんな私の素晴らしい回答に目を輝かせるクリスタ君。
あ、でも、よくよく考えてみれば町って国より規模が小さいんでしたね。という事はあまり人はいないのかも?
で、でも、そう答えてしまった矢先に実は居ないかもしれないって言うのは少し罪悪感があります。
ありますけど、間違いを間違いのままにしておくのは、彼の教育上良くないと思います。
そうです。私は教える者。つまり先生なのですから!
彼を正しい方に導くのは私の務めです。その先生が間違ってたらダメなのです!
「あ、ねえねえ。あそこにいるのって人間?」
「え?」
決意を決めた私にまたも不意に声をかけてくるクリスタ君。
そんな彼の指差す方を見れば道端で何かを探している様子の人間が目に付きました。
……耳は尖って無いので人間だと思います。うん、人間でしょう。
「あれは人間さんですね」
「あ、じゃあ、ここが町?」
そんな事を聞いてくるクリスタ君。ふふ、ここはまた私の知識が光りますね!
「いえ、ここには人間さんの家がありません。町には人間さんの住む家というのが沢山ありますからここは町じゃないですよ?」
「なるほどー」
私の教えを聞いて頷くクリスタ君。
まあ、私も実際に見た事が無いんですけど、幼い頃に話を聞いた冒険者さん曰く町はちゃんと町って感じらしいですから。
町って感じは良く分かりませんけども、着けばこんな感じかと分かるはずです。そうです。多分分かるんですよ。うん。
「ねえねえ、おねーさん。何してるの?」
そんな声が耳に聞こえ見ればさっきまで傍にいたはずのクリスタ君が目の先。人間さんの傍に立っていました。
相手はビックリした様子で体をビクッと震わせると、クリスタ君を見ます。私も彼の行動力に驚いて見てしまいました。
「え? あ、え? 子、供?」
その人間さんはクリスタ君を見て呆然とそんな事を言います。
確かに人間に見えますけど彼は岩食族という種族らしいですから違います。そう教えたいですけど、距離がありますね。
「む。僕子供じゃないよ! 大人だもん!」
私がどうしようか悩んでいるとクリスタ君はその人間さんに対して頬を膨らませて言います。
……その行動はとても成人した者の言う言葉とは思えませんけども。
「というか、え!? クリスタ君、成人してたんですか!?」
「ふえ?」
私は彼の言った衝撃の事実に驚くと、彼は振り返って首を傾げます。
その仕草、身長、外見どれを取っても、どう見ても成人した者には見えませんけども。
……本当に成人しているんでしょうか?
「え? あ、エル、フ?」
と、そんな声が聞こえたので見れば、私の方を見て人間さんが見ています。
どうやら今、私に気付いたようです。
でも、人間さん間違ってます。私はエルフではありませんから! それはちゃんと伝えておかなくては!
そう思い、クリスタ君の近くに行き話します。
「私、ただのエルフじゃなくて、アルラウネとエルフのハーフです」
「アルラウネの
人間さんはそう言って目を見開きました。
なんて言うか、そんなに見られると恥ずかしいですね。
「あ、僕はね、
と、クリスタ君が私に続いて人間さんに自己紹介です。
この流れ、どうですか! 素晴らしいでしょう。
「え、ええっと?
人間さんがゆっくりとそんな事を口にしました。
ふふ、ここは私が説明しましょう!
「この子の種族ですよ!」
私は少し前に出てそう言います。それはもう自信満々に。
「うん! 僕の種族だよ!」
そして私の言葉に続くクリスタ君。
これは完璧な説明でしょう!何せ違う二人が同じ事を言ったのですから。
「いえ、あの。そういう事ではなくて、どういった特徴とかのある種族なのかという意味で聞いたのですが……」
人間さんはそう言います。なるほど、そっちでしたか。
私は頷きクリスタ君の方を向き、しゃがんで視線を合わせます。
「クリスタ君、あなたってどういう種族なんですか?」
「何が?」
お互いに向き合い首を傾げる私とクリスタ君。そのままお互いの顔を見ています。所謂、返答待ちってやつです。
しかし一向にどちらも話しません。だって、何言って良いのか分かりませんし。
「えっと、あなた達って仲間なんじゃ?」
と、そのままお互いに顔を見ていたら人間さんが声をかけてきました。
「そうですよ。今日仲間になりました」
「うん! 今日仲間になったの!」
質問に返答したらクリスタ君と被っちゃいましたね。
でも、内容は一緒なので大丈夫でしょう。
そう考えると息ピッタリです!
それにお父さんもお母さんも言ってましたけど、仲間と息ピッタリなのは良い事らしいので、これは良いことですね!
「え、えーっと、あなた達。一体なんなんですか?」
と、人間さんがそんな事を言ってきました。
うーん、なんなんですかって―――
「アルラウネとエルフのハーフです、けど?」
「
今度は私の後にクリスタ君という順番で言いました。今回は被ったらあれでしたけど、順番に発言できたのでちゃんと伝わっているでしょう。
「え?あ、いえ。その、そういう事ではなくて、あなた達はここに何をしに来たんですか?っていう意味で聞いたんですけど……」
「あ、そういう意味だったんですか!?」
私達は大変な勘違いをしていたらしいです。
つまり間違っていたという事ですね。これではクリスタ君に示しがつきません。
あ、でもクリスタ君。成人してるらしいですけど、いえ、でもちゃんとした姿勢を仲間に示すのが仲間というものです! 多分!
という訳で改めて改正いたしますよ!
「僕達ね。これから旅に出るの!」
言われてしまいましたぁ! 私が言いたかったのに!
「旅、ですか?」
人間さんは私とクリスタ君を交互に見ながら再度眉を顰めました。
「うん! 旅だよ! それでね。世界中を旅するの。色々見るんだよ!」
クリスタ君が笑顔で語ります。でも、それ私が言いたかった事です!ううっ。
でも、悔やんでも仕方ありません。時間は戻りませんから。
「え、えーっと、そうですか」
「うん! そうだよ。それでね。町を目指してたの!」
「あー、なるほど」
人間さんは私達の言葉に納得してくれました。でも、もう少し聞いてくれても良いのに……。
「あの、あなた方。別に悪い人って訳じゃなさそうですので案内しても良いですけど、お金とかそういった物とかって知ってますか?」
「「 お金? 」」
私とクリスタ君は突然の人間さんの言葉を受けて顔を見合わせます。
クリスタ君の顔には、何それっていう感じの雰囲気が出ています。私もそうです。
そして再度、人間さんに視線を戻すのでした。
「こういう物です」
すると人間さんはポケットから何かを取り出して私達に見せてきました。
それは、金色に輝く円状の板。
その板には何やら人の顔が浮かんでいました。
「これが、お金ですか?」
「そうです。これがお金です」
なるほど。これがお金。
「ねえねえ、このお金って何かに使うの?」
と、クリスタ君が人間さんに聞きます。
そうですね。現物見ても使い方知りませんし。流石クリスタ君! 抜け目が無いですね!
すると、人間さんは口を開きました。
「お金は商店、言い換えればお店で使います」
人間さんは使い方を教えてくれました。ふむふむ。
「お店で使うそうです」
「お店って何?」
確かになんでしょう?
「お店って何ですか?」
「……分かりました。説明しますから質問があったら言ってください」
そう言った人間さんは私達にお金の使い方を教えてくれました。
時折、クリスタ君が質問して、そしてついに覚えましたよ!お金に関して。
つまり、お金とは!
物々交換の代わりのものであると!
代わりの金!つまり代金!それがお金なのだという事を!
「あと、人間の、というか町の決まり的なのも色々ありますからね?」
今度は町の決まり事について教えてくれるようです。
そして始まる人間さんの町講座!
ふふ、私、どんどん賢くなっていきますね! 帰ったらタイボクさんに話しましょう!
そしてかれこれ、何時間くらいでしょうか。
新しい事を覚えて賢くなった私とクリスタ君は人間さんに連れられて道を歩いて行きます。
町まで案内してくれるそうなので。
「ところで、人間さんはお名前なんと言うんですか?」
「え? あ、まだ言ってませんでしたね。私はセナって言います」
人間さんもとい、セナさんはそう返してくれました。
って、そう言えば私も名前言ってませんでした!
相手に言っていただいたんですから、こちらも言わなくてはッ!
「私も言ってませんでしたね。私はレシアって言います。で、こちらが」
「クリスタだよ!」
私は咄嗟に気を利かせてクリスタ君の自己紹介に続く道を作り上げました。
どうですか!
「よろしくー!せなさん!」
クリスタ君が追加で言いました。
なんて抜け目が無いんですか!?私、まだお願いします的なの言ってない!
ああ、でも、タイミングを完全に逃してしまいました!
……シュン。
「それで二人は、どこから来たんですか?どこか遠くから?」
落ち込んでいるとセナさんが話しかけてきてくれました。
これは挽回のチャンス!
「あ、私はこの先にある森から来ました」
私はすぐさま行動に出ます。そう、来た道を指差して答えたのです。
「え?あの森から?」
と、セナさんが驚いた様子で聞いてきます。
「ええ、そうですけど」
「私、よく薬草を取りにいってましたけど、見かけたこと無いですよ?」
セナさんはそんな事を言っていました。見かけた事無いと言われても。
「私、家にずっといましたからそれで会わなかったんだと思いますよ?」
「家? あの森に家なんてありました?」
セナさんは首を傾げて聞いてきます。
「ありますよ~。結構森の奥深くですけど」
「そうなんですね。私、あんまり奥までは行かないので知らなかったです」
セナさんがそう言った時でした。
急に左手が後ろに引っ張られて私は少しバランスを崩しかけましたけど、何とか耐えました。
何があったのかと見れば、クリスタ君がしゃがんで地面を見ています。
それで繋いでいた左手が引っ張られたんですね。
「クリスタ君、どうしたんですか?」
「ゆびわー」
クリスタ君が手のひらに小さな銀色の指輪を乗せて見せてきました。
その指輪には綺麗に輝く赤色の宝石が填め込まれています。なんというか、クリスタ君の右目と同じ色に見えますね。
「綺麗ですねこの指輪。でもこれどうしたんですか?」
「ここに落ちてたの」
そうして足元を指差すクリスタ君。どうやら指輪に気付いて拾うために立ち止まったんですね。
でも、こんな綺麗な指輪。誰かの落し物でしょうか?
「二人とも、どうかしました?」
と、セナさんが振り返って声をかけていました。
「指輪が落ちていたので」
「指輪? ……あ!」
今あった事を告げるとセナさんが私達の元に戻ってきました。
なんとなく慌てている様子も見えますけど。
「ちょ、ちょっと見せてください!」
そんな慌てた様子の、というより興奮気味?の彼女にクリスタ君はセナさんに指輪を見せます。
「こ、これ。私のです!」
セナさんが指輪を見てそう言いました。
どうやらセナさんの物のようですね。
「はい」
持ち主が分かったクリスタ君はセナさんに指輪を返しました。
それを受け取ったセナさんは首から下げている紐を外して指輪を通して、再度首にかけました。
まさか指輪をネックレスにするなんて驚きです。
「あれ? 指に着けないの?」
「ええ。これ、代々家に伝わる物で安易に指にはめられないんですよ」
セナさんは語ります。なんと代々家に伝わる秘宝だそうで、身に着けてはおくものの指にはめるのは一流の魔術師と周りから認められてからなんだそうです。
そして、彼女の代まで着けられた者はなんと三人程しかいないそうです。凄いですね。
「指輪なのにはめないなんておかしいね」
「ええ。ですけどそういう決まりですから」
彼女はそう言って指輪を見つめます。
そんな彼女の持つ指輪を改めて見て知ったんですけど、あの指輪、かなりの魔力量を持っていますね。あんな小さな宝石なのに。
でも、さっき見たときは何も無かったんですけど……。うーん?
「あ、それよりも。見つけてくれてありがとうございます」
セナさんはそう言って頭を下げてきました。
「いえいえー」
対するクリスタ君は笑顔でそう言いいセナさんに頭を下げました。
ふふ、何となく彼のこういう言動、微笑ましいですね。
「お礼に私の家でで申し訳ないんですけど、ご馳走を用意しますね」
「ごちそー? ごちそーって何?」
と、クリスタ君が首を傾げます。
どうやら知らないようですね。ふふ、ここは私が教えてあげましょう!
「美味しいご飯って意味ですよ」
「そーなんだ!」
クリスタ君が瞳を輝かせて言います。ふふ、彼も美味しい物に目が無いようですね。
「そうなんです。ところでクリスタ君は何のご飯が好きなんですか?」
「僕ね僕ね。軽石が好きなの!」
私の問いかけにわくわくしたまま答えるクリスタ君。
……軽石って何でしょう? どんな食べ物なんでしょうか?
あ、ここは彼に聞いた方が良いですね。
「あの、軽石って何ですか?」
「さくさくしてるの! それでね、僕の好きな食べ物なんだよ!」
「なるほど!」
つまり軽石はクリスタ君の好物って事ですね!
どんな食べ物なのか気になります。私も楽しみですね。
「あ、あの。軽石は食べ物じゃないですよ?」
「「 え? 」」
セナさんの言葉に反応する私とクリスタ君。
軽石が食べ物じゃない?どういう事なんでしょう?
だってクリスタ君は好きな食べ物って言ってますし。
「あれって、垢すりで使う物ですよ?」
セナさんがそんな事を言いました。
……垢すり? 垢すりって何でしょう?
「垢すりって何ー?」
と、すぐさまクリスタ君が質問します。
この子、凄いです。私はある程度自分で考えてしまうので咄嗟に質問なんて出来ません。
「まあ、湯浴みとか水浴びとかの際に普通にただ体を擦っただけでは取れない、古くなった皮膚を除去する行為ですね」
「「 へえー 」」
セナさんの言葉に感心して声をあげる私達。
なるほど。そういうものなのですね。
「ですから軽石は食べ物じゃないですよ?何かの間違いじゃないですか?」
「え? でも、おかーさんは軽石って言ってたよ? よく住んでた場所の近くの海で取ってきてくれたもん」
「え?」
クリスタ君の事をセナさんが驚いた表情で見つめて固まってしまいました。
それにしても海ですか。……海って何でしょう?
うーん、今日は色々知らない単語が飛び交いますね。でも、クリスタ君の住んでいた場所に行けば見えると思いますしそれまで楽しみにしておきましょう。
「あ、お話してたらお腹すいてきちゃった」
と、クリスタ君がお腹を押さえました。
私は今日、光合成である程度エネルギーは確保出来ているので大丈夫ですけど、他の生き物の方々はそういう事が出来ないらしいですね。
そう考えているとクリスタ君がごそごそとシャツの中に手を入れて何かを取り出しました。
見れば、黒と白が入り混じったような物でクリスタ君はそれを口に運びます。
ゴリッボリボリという音が鳴りました。
なかなか固いモノのようですね。
それを音を立てながら嬉しそうに頬張るクリスタ君。
……見ていたら私も何となくお腹空いてきましたね。
「あのー、クリスタ君。それって美味しいですか?」
「うん!」
クリスタ君は元気に答えます。
そう聞いたら私も食べたくなっちゃうじゃないですか。
「あの、少し分けていただいても?」
「いーよー」
クリスタ君は笑顔でそう言うと「ぶれいく」と言いました。
すると、クリスタ君が手に持っているそれがちょっとした爆発音を立てます。
ちょっとビックリしました。
「はい。どーぞ」
その音を一切気にせず、クリスタ君は笑顔でその手に持つ物を渡してきます。
どうやらさっきのブレイクという技? で半分にしてくれたようです。
私はそれを受けとると、期待に胸を膨らませ一口。
―――ガッ
……は、歯
私は口元を押さえて
「何やってるんですか!?」
私が歯の痛みに悶絶していると、さっきまで固まっていたセナさんがそんな声をあげました。
一体どうしたのでしょう?
「それ、石ですよ!?」
「ふぇ?」
セナさんが指した自分の手元。それはクリスタ君に手渡された物を指していました。
石? 石ですかー。だから、こんなに硬いんですねー。……――?ッ!?
「って、い、石ですか!?」
私はセナさんの言葉に驚き再度手元の物を見ます。
確かに言われて見れば石みたいな感触をしています。
そしてクリスタ君を見ます。音を出しながら普通に食べてます。
「え? た、食べて、る……?」
セナさんがクリスタ君を見て静かに声を出しました。なんとなく呆然としていますね。私も、ちょっと呆然としています。
すると視線に気付いた様子でクリスタ君が顔をあげました。
「あ、もしかして。せなさんも欲しいの?」
クリスタ君は食べる動作をやめて、そんな彼女に問いかけます。
「え? あ、いえ。いらないです」
「そっかー」
返答を聞いたクリスタ君は再度普通に食し始めます。
ガリッゴリゴリという音が響きます。
その様子をただ見つめる私とセナさん。ですけど、見ていれば見ているほど美味しそうに食べますね。
……。
ガッ!
……っ!
「何やってるんですか」
今度は冷めたような口調でセナさんに言われました。
うう、だって美味しそうに食べてるんですもん。
こうして私達が再度出発したのはクリスタ君の食事が済んでからでした。と言っても、何時間もかかっていないですけどね。
数分です。数分。
そうして私達はセナさん案内の元、道を歩いていると前方に何かが見えて来ました。大きな茶色かかった大きな何か。
それは道を左右に分けるように広がっています。何でしょうあれ。
「セナさん、セナさん。あの大きな茶色い物なんですか?」
「え?あれは町を覆う壁ですけど?」
セナさんが言います。
なるほどなるほど。町を覆う壁ですか?……ッ!という事は!?
「クリスタ君! 私達町に着きましたよ!」
私はクリスタ君に報告します。
するとクリスタ君も喜んだ表情になりました。
「ほんとー!?」
「ええ! あれが町だそうです!」
私が指差す先。
町を覆う壁を見たクリスタ君の表情が更に明るくなります。
「やったー!」
「ええ! やりました!」
私は喜びの余りクリスタ君を両手で持ち上げてくるくる回ります。
クリスタ君も喜んで両手を上げています。
「いや、あの。二人とも、まだ町の中に入ってませんからね?」
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