光合成少女の世界旅 ‐そうだ!世界を見に行こう!‐
寺池良春
第1話 行ってきます
その日、私は荷物をまとめていました。
種族的な年齢でもう独り立ちしても良いとされる年齢に達した私は、更に言えば両親から許しが出た年齢に達した私は、いつも思い描いていた夢を実現するためにそんな行動を取っていました。
それは世界を旅すること。
特に理由は無いけど、この世界を見てみたかったから。
それに憧れたのは昔、ふと出会った冒険者と呼ばれる人に出会った時。その人は遠くにあるっていうイファブリーノ国から来たと言っていましたし、世界には色々な国や街があるとも言っていました。
それから私はずっと両親に旅に出たいと言っていたけれど、反対されていました。まだ、私が幼かったから。
そんな私はついに成人、とまではいかないけど両親が許可した年齢に達したのです。
ずっと暮らしていたこの森を離れるのは少し不安もあるけどようやく両親が旅に行っても良いと言った年齢に達したのだから行かない理由がありましょうか?
いや、無いでしょう!
私は両親が残してくれた背負う形のバッグに必要なものを詰め終えると、腰に巻いたベルトに護身用の短剣と何か拾ったものを簡単に入れられるように小物入れの用の小さなバッグを下げ、そして何かあったとき用、主に大型の魔物との戦闘になった時用の大剣を二本。両親の残してくれたバッグに紐で括り付け背負いました。
ずっしりとした感覚が伝わってきます。
「よし。じゃあ、行ってきまーす!」
私は服装を少し整えて家の入り口を開けて振り返るとそう元気に言いました。
誰も返事を返してくれる人はいないけれど。礼儀は大事だし、お母さんとお父さんが何となくいるような気がして。
私は踵を返すと、自身に気合を入れ家を後にします。
そのまま私は森を進んでいきます。この森は平和な森であるため魔物と呼ばれる者達は基本的には存在しないのですが。
たまに魔物がいたとしたら人間さんにより傷を負い逃げてきた魔物である事が多いです。
それに魔物に関してはお父さんが大体処理していました。
だから、私は魔物と戦った事が無いんですよ。
無いですけど、何かあったとき用に剣術はお母さんから教えてもらったから、大丈夫だと思います。
それに、いざとなったらお父さんから教えてもらった魔法もありますし。大丈夫。うん、大丈夫でしょう!
突然の不安をそう言い聞かせて振り払いつつ私は森を進んでいきます。
荷物を背負って森を歩くのはお母さんに頼まれてお父さんと一緒に丸太を運んだ時以来ですね。
「おや?誰かと思えば混ざり者のお嬢さんじゃないか」
ふと声をかけられて見れば、そこには大木さんが一人。
この森で最も古くからいる聖樹トレントのタイボクさんです。
「こんにちは。タイボクさん」
「ああ、こんにちは。ところでお嬢さんはこれからどこかに行くのかい?そんな荷物を背負って」
タイボクさんは私の事をジッと見てそんな事を尋ねてきます。
「これから旅に行くんですよ。人間さん達の国とか色々見てくるんです」
「おお、そういえばお嬢さんは旅に行きたいと言っていたね」
タイボクさんは私が幼い頃に言っていた事を覚えてくれていたみたいです。
「外は危険が色々あるからね。気をつけて行ってくるんだよ」
「はい!タイボクさんもお元気で!」
「ああ、帰ってきたら土産話楽しみにしているよ」
「はい!楽しみにしててくださいね!」
私はタイボクさんとそんな会話をして別れ、更に歩みを進めていきます。
進んでいくにつれて色んな者が通っていくのが見えました。それは森にいる妖精さんだったり、小人さん達だったり。
全くもって平和な森。
私は鳥のさえずりを聞きながらどんどん進んでいきます。
そしてついに私は森を抜けました。
視界に広がったのは初めて見る背の低い植物が風に揺れている大地。お父さん達は草原って言っていた場所だと思うそんな場所。
そして森ではあまり感じなかった日光の暖かさ。なんというか力が漲ってくるような感覚になります。
光合成、気持ち良いですーーーー!
私は何となく気持ち良さそうな場所に思いっきり体を伸ばして寝転がりました。
それにより風に揺れる葉の音が耳元に聞こえてきます。
この音が不安とか、そんな気持ちを落ち着かせてくれますね~。
私の第一歩はここから始まるんだなぁ。そう思い青い空を見上げると小鳥達が飛んでいくのが見えました。
さて、そろそろ出発しましょうかね。
そう思い体を起こしたその時でした。
ボンッという爆発音と共に私のすぐ横の地面が破裂したのは。
衝撃で地面にズベーッとなった私は突然の出来事に何が起きたのかよく分からず呆然とさっきまでいた場所。現在、土煙が上がっているその場所に視線を向けました。
その土煙は風によって流されると、そこには頭が。
出ている頭は辺りをキョロキョロと見渡しています。どうやら頭は生きているみたいで辺りを探っている様子です。
と、辺りを見渡していた顔と視線が合いました。
その顔はなんていうか子供だと思えるような風貌で右目は赤色、左目は青色の目をしています。更に、私と違って耳は尖っていないので俗に言う人間族の子供だと思います。
だけれど頬になんか太陽光を浴びて輝く物が付いてるのが見えました。何となく宝石に見えなくも無いです。……この子、本当に人間さんでしょうか?
疑問に思っていると、その顔が満面の笑みに変わっていくのが見えました。
「こんにちはー!」
急に相手から挨拶をされました。なんとも可愛らしい声で。
って、そんな事よりも。と、とりあえず返さないと!初対面は大事ですから!
「こ、こんにちは~」
私は体勢そのままに相手にそう答えます。
すると相手は「んー、よいしょ」と可愛らしい声を出して地面から出てきました。
見れば私より身長が低く、幼い感じが窺えます。
でも、なんというか人間さんではないというのが分かる風貌をしていました。
というのも相手の纏っているボロボロの布から出ている腕とか膝とかの所々に色々な色の輝く宝石の様な物が付いているのです。
いや、付いているっていうより生えているって言った方がしっくりくる様な感じですけど。
「ねえねえ、おねーさんは人間?」
と、この子は私に対して屈んで首を傾げて聞いてきました。
どうやら人間さんに見えているようですね。
ですが私は人間さんではないのです。
「違いますよ。私はアルラウネとエルフのハーフですよ」
「あうあうねとエルフのハーフ?」
この子は更に首を傾げました。
どうやらアルラウネを知らないようですね。
「アルラウネは私のお母さんの種族ですよ」
「そーなんだ!」
その子は感心したように目を輝かせます。なんというか微笑ましいです。
「あ、エルフはー?」
「私のお父さんの種族ですよ」
「そーなんだ!」
再度、目を輝かせるこの子。
なんとエルフについても知らなかったようです。子供だから仕方ないんでしょうか?
「じゃあ、ハーフも何かの種族なの?」
と、そんな事を聞いてきました。
ハーフについても説明が必要とは。この子はまだあまり言葉を知らないようです。
ふふ、こうなれば私の知識の広さを見せてあげましょう!
私は立ち上がり服に付いた土を払いつつ答えます。
「違いますよ。ハーフは半分って意味です。私はその二人の子供なのでアルラウネとエルフの血が半分半分という意味でハーフなのです!」
「おおー!」
私の説明に更に興奮した面持ちで反応するこの子。
私の知識の広さに感心したようです。ふふ、どうですか!
「それじゃあ、おねーさんは人間じゃなくてあうあうねとエルフのハーフ。うん、覚えた!」
「ふふ、偉いですよ」
「えへへー」
私が褒めて頭を撫でてあげるとこの子は嬉しそうに微笑みます。
それを見た私も微笑んでしまいます。
「あ、そういえば名前を教えてませんでしたね。私、レシアって言います」
「れしあ?それがおねーさんの名前?」
この子がくりくりの可愛らしい瞳で見ながら首を傾げてきます。
ふふ、愛らしいってこういう事を言うんですね。
私はこの子に肯定の言葉を贈ります。
さて、私は自己紹介をしたので今度はあなたの番ですよ。
「それであなたの名前は?」
私がそう尋ねるとこの子はハッとした表情になり口を開きました。
「あ、えっとね。僕はね、クリスタって言うの!
この子はそんな自己紹介をしてきます。
……
それよりも、この子はクリスタという名前らしいですね。
「クリスタちゃんですか」
「クリスタちゃんじゃないよ。クリスタだよ?」
そんな風に返されました。
……どういう事でしょう?
「ええ、だからクリスタちゃんですよね?」
「クリスタだよ!」
どうしましょう。何故か急に話が通じなくなりましたよ。
「ちゃんは要らないの!クリスタなの!」
と、ここでクリスタちゃんがそんな事を言いました。
それで私の頭脳がピピピンと反応しました。クリスタちゃんはどうやら敬称について名前を間違えられていると思って言っているようです。
どうやらこれも私の知識を披露する時が来たようですね!本日二度目!私の博識に酔いしれそうです。
「このちゃんって言ったのは別に名前じゃないんですよ?」
「どういう事?」
「このちゃんって言うのは他人の名前の後に付けるもので、男の子なら君、女の子ならちゃんと付けられるものなのです!」
「そーなんだ!」
今日一番の電撃が走った様子のクリスタちゃん。ふふ、爽快ですね。
「でも、それなら僕、ちゃんじゃなくて君だよ?」
「な、なんですってー!?」
私にも電撃が走りました。クリスタちゃん、女の子じゃなくて男の子ですって!
こんなに可愛いからてっきり女の子かと思っていましたが、男の子だそうです。
「ところで、れしあちゃんはここで何してるのー?」
と、クリスタちゃ――君が話しかけてきました。
さっそくちゃんを使ってきましたね。ですけどこれは――
「えっとですね。このちゃんと君は目上の人には使わないんですよ?」
「目上の人?」
「
「そーなの!?」
更に衝撃を受けた様子のクリスタ君。
「えっと、じゃあ、そういう人にはなんて言えば良いの?」
「そうですね。さん、とかですね」
「そーなんだ!」
感嘆の声を出して私を尊敬の眼差しで見てくるクリスタ君。その瞳は完全に尊敬が感じ取れます。
ふふ、照れますねー。
「あ、それでね。れしあさんはここで何してたの?」
「私、ですか?」
「うん!」
満面の笑みで頷くクリスタ君。
それに若干見惚れちゃいますね。っとと、それよりもです。
ちゃんと答えないと。先生として示しがつきませんから。
「私、これから旅に出るところだったんですよ」
「旅?」
私の言葉に首を傾げるクリスタ君。
どうやらその言葉も知らないようです。
ふふ、こうなればレシア先生の授業の始まりですよ!
「この世界には色々な場所があって、そのいろんな所を回るんですよ。それで色々見たりするんです」
「ほえー、そーなんだ!」
私の言葉に目を輝かせるクリスタ君。
ふふ、教えるの良いですね。
「僕も旅したい!」
私が余韻に浸っているとクリスタ君がそんな事を言ってきました。
その彼の瞳はより輝いています。
私は彼の言葉を聞き思い出しました。
初めて私が旅というモノを知った時に抱いた感覚を。
私も世界が広いって事を知ったとき、行きたくて行きたくて仕方ありませんでした。でも、彼はなんというか弱そうですし自分で自分の身を守れないかもしれないです。
……うん、よし!
「それじゃあ、一緒に行きますか?」
「いーの?」
「はい。旅は一人でも良いですけど二人なら更に楽しいですから!」
私はそう言って彼に手を差し出しました。
クリスタ君は手に視線を向けた後、笑顔になり私の手に小さな手を乗せてきます。
「それじゃ、行きましょうか」
「うん!」
こうして私は彼と共に旅へと出発です。
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