第8話
第8話
『蓮ハス蓮よ~ハスには多くの物語がある』
頭頂チャクラにも千の花びらを持つ白いハスの花が咲いている。
ハスの台(ウテナ)に座っている。
ラクシュミー神は、「白いハスが好き」と言い、このことを暗に説いている。
先日観た1951年ジャン・ルノワール監督作品、インドが舞台の『河』(女流作家ハーマ・ゴッデン原作)という映画の中で、「ハス」を用いて心情を表現するシーンがあった。
主人公ハリエットは、ガンジス河の悠久の流れと、ガンジス河に頼って生きている人々を詩や物語に表わすことに強い思いを抱いている、多感な十四歳の少女である。しかも、ジョンという青年に初恋をし、嬉しさ切なさが行ったり来たりの日々を送っている。そんなハリエットが書いた『クリシュナ ※《補足説明⑥》への賛歌』を紹介する。
『「クリシュナへの賛歌」
昔々小さな村でのこと
若い妻が若い母親と川に行き
子を授かるように願い
祈りと花を捧げた
月満ちて女の子が生まれた
赤ん坊を愛し よく面倒を見た
かわいい女の子だった
親をよく手伝った
少女は日増しに成長した
彼女は川を愛した
川のように人生は流れていき
彼女は大人になった
彼女は外面だけでなく内面も美しかった
ある日彼女は若者に出会った
クリシュナかと思うほど美しい若者
でも彼女は父が選んだ人の花嫁に
それが しきたり 彼女は不幸だった
あの青年の姿が心から離れない
だが 父には逆らえない
彼女は美しい結婚式にするため
一心に努力した
米の粉で中庭に絵をかき
家は飾られ 客たちがやって来た
そして花婿も
母親が彼を迎える
彼女はとても不幸
縁を結ぶため 花婿の周りを回る
彼の顔にはベール ベールが外される
彼女は目隠しの葉を取り 顔を見た
それは 彼女が恋したあの若者
彼女は幸福
彼はクリシュナの姿に
彼女はラーダに姿を変えた
数千年前に生きたラーダも
田舎の少女だったが
神の愛で女神になった
彼女は 愛の踊りを踊った
彼女の目と手が語る
「おお、クリシュナ あなたは
雨季の雲のように美しい
その目は花開くハス
クリシュナ 私はいつも
あなたのそばにいたい」
ラーダは再び村の花嫁に
クリシュナは村の花婿に
若い妻は母親と川へ行き
子を授かるように願った……』
ハリエットが考えた「ハス」を用いた愛の表現~「その目は花開くハス」
いろいろ考えた結果、インドの方特有の、大きな瞳と、濃くて長いまつ毛を連想した。愛する方が瞼を伏せていて、自分はドキドキしながらその様子を見ていたら、きゅうにパチッと眼が開いて、その瞳の美しさに吸い込まれそう、魅了された……という思いだろうか。
開いたハスの花の美しさにも同じことが言える。魅了されてしまうのだ、すっかりと。
加えて、インドでも、ハスが花開くときには音がすると考えているのかもしれない。日本は「ぽんっ!」インドは「パチッ!」なのかしらん?
この映画の中で、母と娘が中庭に、米の粉を溶いて絵具にして、それで絵を描く場面があった。オムニバスのような、ハリエットの創作物語内で描かれているシーンだ。
そのサークル様の絵は、結婚式で客をもてなすためという。花嫁花婿が契りの盃を交わす道具が、サークルの真ん中に置かれるところを見た。「ハス」のように思えたので画面を見ながら真似して書いてみた。全体がどのような図かは映画の画面からは見てとれなかったため、中心からわかる範囲で書き写してみた。
そして、書いてみてわかったのは、これは単なるカーペット代わりの装飾模様ではない。エネルギーが絵の中心から放射状に発せられている。これはまるで「マンダラ」だ。
そのまま映画のオムニバスの先を観ていると、クリシュナ神が登場する。手には横笛を持っている。篠笛の飾りが、今書いた柄に似ている。私には、ガネーシャ神とハスの蕾をモチーフにしていると思える。また、そこで登場する赤ちゃんの目の隈取、これもガネーシャ神とハスの同じモチーフに見えてくるのだ。またそれは、松果体の断面図にも見える、先を見通すとしてハスの根をお正月などに食べるが、関係が深いのだと思う。「第三の眼(内なる眼)」を開くことで、人生をさらに豊かにしていくことができるのだから。蓮根に穴が開いているから部屋の中は見通せるけれど、内なる眼で宇宙全体を見通す方がダイナミックでいいのではないか。
ガネーシャ神にも尋ねてみたが、結果として、このモチーフには、豊穣のガネーシャ神、豊穣のハスへの感謝や祈りが込められているのである。人生の門出を祝うのにとてもふさわしい絵なのだった。
≪補足説明⑥≫
クリシュナ神はビシュヌ神から八代後の化身で、「祝福の神」である。
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