第6話
第6話
『根』
あなどり召さるな!
ハスの生命力は、泥の中で着々と、次の春のための準備をしていたのだ。
そう!揚げてよし、煮てよし、すりおろして団子にしてよしの、ハスの根、蓮根の堂々たる登場だ!
これは、誰でも入手しやすい家庭の食材である。
ということは冬になっても、私たちはハスからの多くの贈り物を、まだまだ受け取れる状況にあるということにほかならない。ハスは愛され、栽培されている!ハスはあらゆる豊かさを与え続けているのだ。
話は前後するが、ハスがいかに無駄がない「奇跡のハス」であるかを示すその好例でもある食材で、「実」や「蓮根」のほかに、「ズイキ」がある。
漢字では「随喜」だが、もとはハスの茎であった。次第に、様子が似ている里芋の茎が代用され、芋の茎「芋茎」になったのだ。
そう、「ヘ」の字になった茎は乾物として、食用になる!(我が家のVEGAN料理で考えるなら、含蜜糖と丸大豆醤油で甘辛に煮て、そこに油揚を加えてもいい。さぞおいしいだろう)
しかしながら、枯れて「ヘ」の字になったこげ茶のハスの田を思い出すにつけ、物寂しい感じがする。今やこげ茶色の泥の沼になっているのだから致しかたない。日々、そのハスを見ていた者は誰でも、麗しく絢爛だった
ハスを思って、「随喜の涙」を流すのではないだろうか。
使い慣れない言葉を使ったので、確認のために調べてみた。
【随喜(ズイキ)】《名・自サ》①〔仏〕仏を信じ、その徳をありがたく感じること。②〔転じて〕非常によろこんでありがたいと思うこと。
【~~の涙】《連語》喜び、ありがたく思って流す涙。ありがたなみだ。
*『学研 国語大辞典』金田一晴彦・池田弥三郎編 学習研究社刊より
また、「随喜」という字を、じっと見ているだけで伝わってくることがある。
「随喜」の随は「随意」の随。
「随(ズイ)+「茎(キ)」ズイのクキ~随意に食せる茎から派生した語か?
「随喜」ハス好きには大変ありがたいこと、常にハスと関わっていられる喜び(またおいしさ)
このように転じてきたのではないだろうか。
枯れてズイキとなって尚与え続けているハスへの感謝と、そのあまりのおいしさに、「随喜の涙」が自然と出てくるのかもしれない。(きっと豊かな慈しみの味がするのだろう)
ハスに魅せられて知る「言葉」の成り立ちであった。
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