第5話

第5話


 八月も終わり、種の収穫もすんだ頃、ハスの田は、見るのが申し訳ないようなことになっている。

 あの瑞々しく豊かだった緑と薄紅色が織り成すハスの田が、枯れて、真ん中からへし折れた茎が「ヘ」の字そのまま※《補足説明④》に垂れているのだ。こげ茶色が、びっしりと沼を埋めているのだ。

 


 でも、ハスをこよなく愛す私は、眼をそむけない。寂しかったが、じっと見た。そして少し迷ったが、その姿も写真に収めた。

 ハスさん、これまでたくさんの歓びを与えてくれて感謝しています。

ありがとう、ごめんなさい。


 そんな灌漑と共に、私の「ハスの観察ライフ」は秋で終了したかと思った。


≪補足説明④≫

 大古の昔からあるインド伝来のハスは、「人の暮らし」と深く結びついていたものであり、日本語の語源に、ハスの影響を感じてしまうのは私だけであろうか。

本文中「芽」から

…そして、カタカナの「イ」の字の形のものが真っ直ぐにグングン伸びていった。

…巻物を両側から巻いててに持ち空にぐうーんと伸ばしていったような(「イ」の字の形をした)葉が、幾本も泥の中から現れ出した。

  =『「イ」丈高(イタケダカ)』

 

 本文中「茎と葉」から

…「ヘ」の字そのままに垂れて沼を埋めている

=『「へ」垂れる(ヘタレル)』

(注 ヘコタレルは、兵児帯由来?こちらは後から出来た語、と私は思う(笑))


本文中『種』から

…真ん中からへし折れた茎が「ヘ」の字そのままに垂れているのだ。

=『へ萎れた・へし折れた』


本文にはない追記として

秋が深まり、ハスの茎が『「へ」の字そのままに垂れて』しまった後は、蓮の田の片付けが始まると思う。きっと縄で束ねるのだろう。その作業は難攻不落に近いようなものではないかと思う。足場は泥の沼である。

=『「へ」束る(ヘタバル)』

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