第4話

第4話



  『実(蓮)』


 ハスの実が出来た!成長した花芯は「蜂の巣」をひっくり返した形で、にょきっと泥水の上にある。静かにすっくと伸びて堂々としている。

「蓮」と言えば「ハチス(蜂巣)」とは、昔はそうとうたくさんのハスの実を食べていたのだろう、そんなことを彷彿とさせる。


 「ハスの実」、それはようするに種でもあるのだが、お菓子としても利用されている。

 埼玉のある老舗ではハスの実を甘く煮たお菓子があるそうだ。それは一体どんな味がするのだろう。マロングラッセのようなものか、それとも甘納豆のようなものなのか。季節の限定品ということだが、私は店頭に並んでいるところをまだ見たことがない。一粒だけでいい、食べてみたい。



  『種』


 「種」ハスの種の生命力は神がかっている!

驚くほかない!

 千葉県検見川の二〇〇〇年前の地層から(一九五一年)に三粒のハスの種が発見された。それは二千年もの間、土の中で眠っていたのだが、何と、発芽もし、開花もしたのである。そのハスは「二千年ハス」と呼ばれている。

 「二千年ハス」の種が、「ハスの大家」大賀博士の手に無事に渡ったのはハスにとっても皆にとっても何よりだ。多分、五〇年代のうちには、大切に開花させられ守られていたのだと思う。そして、種の発見から三十七年後の一九八八年、繁殖に成功していたうちの一部が荒神谷史跡跡公園に寄贈された。


 花の季節ではないので、せめてものと思い、現地製茶所の『荒神谷二千年ハスの茶葉』を取り寄せてみた。


 さあ、飲んでみよう!

 ふわっ、と香るかおりは、私がせっせと通い詰めたハス池の、近づいただけで漂う「ハスの葉」そのものの香りだ。何だか、居住まいを正して飲むのがふさわしいような静謐な気もちがしてくる。ハス独特の波動の高い気品によるものだろう。


 今は、この「二千年ハス」のお茶で大満足しているが、いずれにしてもハス好きな私は、博士が二千年の眠りから優しく目覚めさせてくれた「眠り姫のハス」を観に行くことになるだろう。王子様ありがとう。

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