1-9.消えない痛み

 白く長い廊下を煌賀こうがに付いて歩く。早足の彼に合わせるのは大変で、何度も小走りになった。


千晴ちはる、遅れるなよ」


 その言葉にうなずいたが、本当はすぐにでも立ち止まりたくて仕方がなかった。


 昨日、なかなか泣き止まない千晴を見て、煌賀はヨハンと話をしようと言い出した。ヨハンは千晴の未来について何か知っているようだった、予知夢の力でこれからの事を教えて貰おうと言うのだった。

 しかし千晴は自分の未来を知る事にどうしても乗り気になれなかった。一体どんな事を言われるか、とてつもなく悲惨な死に方をすると言われるかもしれないと思うと心は沈んでしまう。そうしてずっとふさぎ込んでいるものだから、煌賀になかば無理矢理に連れ出されてしまったのだった。


 廊下を歩いてしばらくすると、他の部屋よりもさらに巨大な扉の前に辿たどり着く。前回は城の外から入ったが、どうやら目の前のここが、最初にこの城に来た時に入ったホールの部屋の入口らしかった。

 扉横に控えていた二人の守衛は、煌賀の姿を見るやすぐさま目の前の巨大な扉を開けてくれる。彼は歩調をゆるめず、ずんずんと部屋の中に進んでいってしまい、こちらも遅れまいと小走りに後を追った。

 扉をくぐる直前、ちらりと守衛に目をやると、爬虫類はちゅうるいのような黄色い目と、長い舌がちろりとよろいの隙間から出てくるのが見えた。彼らのような蜥蜴とかげ亜人あじんはリザードマンと呼ばれている。守衛は目が合うと、ぎろりとこちらをにらみ付けてきた。千晴はさっと顔を青褪あおざめさせ、慌ててその場を通り過ぎる。


 部屋に入ると、すぐにヨハンの巨大な尻にぶち当たった。岩山のような巨体に沿ってそろそろと正面に回り込むと、煌賀が声を張り上げる。


「ヨハン! 話がある!」


 その声に反応し、巨体が首をもたげた。まるで山が丸ごと迫ってくるようなその様に、思わず千晴は後退あとずさる。黄色い巨大な双眸そうぼうがこちらをとらえると、おぉ、と地鳴りのような声が響いた。何度見ても、この姿には慣れない。

 目の前にはでんと投げ出された前足がありそれはちょっとした丘のように大きいし、前足の先にあるつるりとした爪は身じろぎする度にごとりと重量を感じる音を発した。巨大な双眸の下には洞窟のように大きな鼻の穴があって物凄い風量の呼気が流れてくるし、さらに顔のふちまで裂けた口には凄まじい数の牙が並んでいる。ひるんでしまうほどの巨体は、あちらがちょっと目測を誤って身動ぎするだけで二人をたちまちぺしゃんこにしてしまうだろう。

 強張こわばっている千晴の顔を見て取ると、ヨハンはすぐさま転変てんぺんしてくれた。たちまち、人の良さそうな笑顔をたたえた老人の姿に変わる。


「よう来たのう。ゆっくり茶でも飲んでいきなさい」


 そう言って彼が軽く腕を振ると、欄干らんかんそばに机と椅子と簡素な茶飲み道具が現れた。二人は席へとうながされ、腰を下ろす。丸い碗の一つに茶が注がれると、ほうじ茶のような落ち着く香りが漂った。


「ヨハン、この間の話だが」

「茶が入るまで待ちなさい。そう事をくものではない」


 いさめられた煌賀は不服そうに眉をしかめたが、老人をそれを無視して茶の支度を続けた。


「お前さんは本当にせっかちじゃのう。茶を飲む時には、香りと味と時間の流れを楽しむものじゃ」


 そう言われむくれる煌賀の顔を見て、千晴はつい吹き出してしまった。

 湯呑みの一つをこちらに差し出されると、少しだけ中身をかたむける。口と鼻からまろいお茶の香りが広がった。飲み込むと、温かい物が胸へとみていく。

 美味しい、と呟くと、老人は嬉しそうに微笑ほほえんだ。ここに来る前より、少しだけ心が軽くなった気がする。


「それで、話というのは?」

「この間言っていた話だ!」


 ヨハンはこちらに向かって問いかけていたが、待ちきれないといった様子で煌賀が顔を割り込ませた。


「千晴が賢竜けんりゅうになる為には生まれ変わる必要がある。だがあんたはそれに対して曖昧あいまいな返事をしていただろう? こいつが死なずに賢竜になる方法があるのか? 何か知っている事があるなら教えてくれ!」

「前にも話した通り、それはわしにも分からぬ」


 その言葉に彼は肩を落とした。まだ納得いかないのか、尚も食ってかかる。


「じゃあ、前言ってたのはなんだ? 煮え切らないような事を言ってたじゃないか!」

「勘違いせんで貰いたいが、予知夢を使えたとしても知りたい未来について全てを把握出来る訳ではないのじゃ。むしろこの力は"天が見せたいもの"を視る力であって、わしがそう容易たやすく制御出来るものではない。じゃから千晴の事は知り得ても、賢竜に転生する方法については何も知らんのじゃ」


 またもや肩を落とす彼の姿を見て、ヨハンはただ、と言い添えた。


「わしが見たものだけでも良ければ、お話しよう」

「教えてくれ」


 ヨハンはこちらに気遣うような視線を向けてきた。煌賀の手前、無下に断る事もし辛くて、意を決して頷く。それにやはり実のところ、千晴も興味があったのだ。

 こちらが頷いたのを見て、あちらもゆっくりと頷き返す。


「わしが見た光景は二つじゃ。一つは千晴をここに連れて来る夢、もう一つは転生した千晴の姿じゃ」

「……ほぼ役に立たない情報じゃないか」


 期待していた分、落胆も大きかったのだろう。煌賀の声には責めるような色がにじんでいた。そして表情にも、その不満が如実にょじつに表れている。


「天はそうそう、誰かだけを贔屓ひいきしたりはしないものじゃ。たとえ賢竜であってもな」


 そんな彼の様子に、ヨハンはつれなくそう返した。

 千晴はしばらくの間、うつむいたまま考え込んでいた。そして静かに、自分の中でもやもやとくすぶり続けている疑問を口にする。


「……ヨハンは、私が本当に賢竜だと思う?」


 不安気にたずねるこちらを見て、彼は何かをさっしたのだろう。黄色い目で真っ直ぐこちらを見つめると、はっきりした声で答えてくれた。


「この目で見た。お前さんは賢竜じゃよ」


 じゃが、と彼は続ける。


「一つだけ、心に留めておいて貰いたい。賢竜とは、その者の器の名前に過ぎぬのじゃ。それはお前さんがお前さんである為に必要なものとは非なるものじゃ。わしはお前さんが賢竜になる為に死なねばならぬのかどうか、その答えを教えてやる事は出来ん。じゃが本来生き物は皆、そうなのじゃ。明日死ぬともしれぬ今を生きておる。それは人間のままでいようと、賢竜になろうと何も変わりはしない。

 千晴、今を精一杯生きなさい。元来、生き物が出来る事はそれだけなのじゃ」


 その言葉に頷きはしたものの、正しく理解するのはとても難しい事のように思われた。

 精一杯生きるとは、何だろうか?


「人間なんだったら、」


 言われた言葉について考え込んでいた時、煌賀がふいに声を上げた。


天管てんかんに行かせるというのはどうだろうか?」

「なるほど、良いかもしれんの」

「テンカン……?」


 また耳慣れない言葉が出てきた。疑問符を頭に浮かべていると、煌賀がそれに気付いてくれる。


「ヨハンス大陸の西の端に、天管と言われる聖堂が建っているんだ。そこではダブル達が天に祈りをささげている」

「ダブル?」

「人間の血が混ざった者達の事だ」


 千晴は目を見開いた。


「ここにも人間がいるの!?」


 驚いてそう返すが、彼は首を振る。


「純粋な人間はいない。かつては交流のあった人間の血が色濃く出てしまう奴がたまにいるんだ。そういった奴らは見た目が人間に近いせいか、一族の者から差別や迫害を受けてしまう事がある。そういうダブル達が住処すみかを求めて集まったり、天に祈りを捧げて魔力を得ようとしたりする場所だ」

「魔力を得る? そんな事出来るの?」

「天管は昔、この大陸で最後に生き残った人間が住んでいた場所なんだ。その人間を岩に封じこめる際に使ったとされる魔力がまだ聖堂に残っていて、天に祈りを捧げて聞き届けて貰えた者は、その力の恩恵を受けられると言われている」

「……本当にそんな事出来るの?」


 半信半疑で目を細めた。


「実際のところは俺もよく知らないが、過去に天管から帰って来た者が強大な魔力を備えていたという話はちょこちょこ聞くぞ。天がお前の祈りを聞き届けて魔力が得られれば、転化てんげしたり転変したりといった事も可能になるかもしれない。ダブル達なら見た目はお前と大差ないはずだから誤魔化ごまかせるだろうしな」

「そう、なの……」


 正直、その提案に乗り気にはなれなかった。ようやくここでの生活も慣れてきたところなのに、また別の所に移らなければならないのだろうか。どうしても億劫おっくうな気持ちになってしまうのだが、しかしそう思っているのは自分だけのようだった。隣に座るヨハンも名案だというように頷く。


「ずっと城の中に閉じこもっているより、良いかもしれんのう」


 そう彼が言うや、煌賀は自分のひざを高らかに打ち鳴らした。


「よし、そうと決まれば早速荷造りだな! 天管は寒いから、俺がまじないを掛けたマントを用意してやろう」


 とても断り切れる空気ではなく、千晴は力なく頷いた。


「ところで、ヨハン」


 言って老人の方へと向き直る。相手は小首をかしげてこちらを見返した。


「私の賢竜の姿って、どんなだったの?」


 聞くと、彼の瞳は悪戯っ子のように細められた。


「秘密じゃ」





 ********





 自室に戻ると、早々に煌賀こうがに荷造りをするよう言われた。どうやら明日にでも出発するつもりらしい。


「……そんなに急いで行かなきゃならないの?」

「何を言ってるんだ? 折角せっかく新しい道が開けたんだ。早いに越した事はないだろう!」


 そう言って彼はあさっていたタンスの中から朱色のマントを引っ張り出した。


「よし、これでいいか。ちょっと待ってろよ、これに耐寒のまじないを掛けて来てやるからな」

「呪いってどうやるの?」

「色々とやり方はあるが、他の物質の特性を別の物質に移すんだ。普通は鉱石やら原材料となる素材を使うんだが、俺達賢竜けんりゅうは余りある魔力を使うから、特に何か物質を用意しなくても呪いを掛ける事が出来る」

「ふーん」

「まぁ何でもという訳ではなく、あくまで自分の特性にあった物に限られるけどな。前に言玉ことだまをお前にやっただろう? あれは鉱石に竜の息吹いぶきを封じ込めた物だ。賢竜は言葉に不自由しない生き物だから、その石を持っている間はどんな言葉でも理解する事が出来る」


 千晴は胸に下がる巾着袋にそっと触れてみた。中には石の硬い感触がある。


「今回はマントに俺の炎を移す呪いを掛ける。これなら、たとえ極寒の地に行ってもこごえる事はないぞ」

「え、待って。極寒の地なの?」


 驚いて顔を上げた。寒い所とは聞いていたが、どの程度の寒さなのかは聞いていない。


「ヨハンス大陸の西部には氷の大陸、ノーゼン大陸がある。そこから流れてくる寒気の影響で、西端部は一年中が雪に覆われているんだ。天管てんかんは雪原の中にある」


 千晴は絶句した。

 千晴の住んでいた場所は日本列島の中でもあまり雪が降らない地方で、一年の内でも雪が降る日は数日あるかないかといったところだった。数センチ雪が積もっただけで交通が麻痺するような場所で育ったのだ、当然、雪国で過ごした経験など皆無に等しい。

 それなのに、今から行くのは一年中が雪の国。


「……何か胃が痛くなってきたかも」

「おい、大丈夫か? 明日出発なんだから、今日は無理せずさっさと寝ろよ。天管の近くまでは送っていってやるからな」

「え、煌賀が一緒に来てくれるんじゃないの!?」


 またもや驚愕きょうがくの事実を知らされたが、彼は気にせず、さらりと首肯した。


「あぁ。俺がほいほい人目に付く場所に行ける訳ないだろ? 賢竜が人里に出ると目立つし、それだけで騒ぎになる」


 そして、彼はさらにこちらを驚かせる事を言ってのけた。


「基本的にあそこに居るのは身寄りのないダブル達ばかりだ。ぞろぞろと連れ立って行くべきじゃない。見た目は人間と同じでも、あそこの奴らもあまり人間に好意的でないと思っておいた方がいい。お前の身を守る為にも、他の奴らと連れ立って行かない方がいいだろう」


 誰も知り合いもいない、どこかも分からない僻地に行く? しかもたった一人で?

 頭はすぐに不安で一杯になった。苦虫を噛んだようなこちらの顔を見て、煌賀が肩に手を置いてくる。


「また夢合ゆめあわせをして、時々お前の様子を見るようにするから。そんな顔をするな」

「……うん」

「大丈夫だ。人間だという事がばれなければ大事にはならない」

「……いつ迎えに来てくれるの?」


 か細い声でそう聞くと、彼も同じように心許なげな小さな声で言った。


「……お前が賢竜になったらだ」

「それは、」


 いつなの?と聞こうとしたところで、桜花おうかが部屋に入ってきた。不安気なこちらの様子を見てどうしたのかと尋ねられたが、その問いにはただにごした答えを返しておいた。


「……呪いを掛けてくる。出発の準備をしておけよ」


 そう言うと、こちらの返事を待たずに彼は部屋から出ていってしまう。手持ち無沙汰ぶさたにタンスの中の物をいじっていると、桜花が傍まで来て顔を覗き込んできた。


「お手伝いしましょうか?」

「……お願い」

「明日、どちらにお出かけなのですか?」

「天管って所だって……」


 衣服にかけていた彼女の手が止まる。桃色に塗られた綺麗な爪が、誤魔化すように生地をでた。


「……どのようなご用事で?」

「よく、分からないけど、私にとってそれが良い事だからって……」

「……」


 何も言い返してこない彼女を不思議に思い、視線をやる。しかしここからでは彼女の表情はうかがい知れなかった。


「桜花?」

「……いくつかお召し物を見繕みつくろいましょう。そちらにお座り下さい」


 言われるままに椅子に腰掛けると、彼女はいくつかの衣服を手にこちらの背後に立った。取り出したそれらをこちらの背中に押し当て、寸法を測り始める。


「いつ頃お戻りの予定なのですか?」

「分かんない……。煌賀は賢竜になるまでって言ったけど……」

「なれるのですか? 賢竜に。天管に行けば」

「それは分からないんだって。だけど、今は他に手がないから……」

「……あそこがどういった所か、お分かりですか?」

「さぁ、しら」


 知らない、と言おうとしたこちらののどを、何かがふさいだ。慌てて喉元に手をやると、つるつるとしたきぬの感触が指に触れる。質の良い生地が、喉をくぼませるほどに締め付けていた。

 がっ、と濁った音が口から漏れる。何度も皮膚に食い込む布をつかもうと喉をいたが、生地はきつく食い込んで一向に緩む気配がない。あまりの苦しさに身をよじると、座っていた椅子と一緒に後ろにひっくり返った。一瞬だけ空気を確保できた喉がひゅっと音を立てるが、上に覆い被さってきた者の手によって再度首を絞められ、阻まれてしまう。き止められた喉が熱を持った。

 自分の上で般若はんにゃのような顔をしている桜花を見ても、千晴はまだ状況を理解する事が出来なかった。無我夢中で彼女の腕を叩いたが、腕の力は一向に緩まる気配がない。首に食い込む絹越しの細い指と、胸の上に圧し掛かった彼女の重さで身動きも取れなかった。


「お前では駄目だ……!!」


 目の前の女にすごまれ、頭が混乱する。腕の力も緩まない。


「何故、お前が賢竜なんだ!? 無知で、しんもない、ただの人間の子供が!! 私達がどれだけお前を恐れているか分かるか!? 低能で、無能な人間の子供におびえて生きなければならない苦痛が、お前に分かるか!!!?」


 彼女の腕にさらに力がこもり、ぐぅ、と空気が押し出されるような呻き声が漏れる。酸欠状態の脳は上手く働かず、腕からはだんだんと力が抜けていった。

 目の前が、白くかすんでいく。


「お前が本当に賢竜かどうか、今ここで証明してやる! 私がお前の化けの皮をがしてやる! お前が賢竜の筈がない!! お前が、お前なんかが……!!!」

「やめろ!!!!!」


 途端、目の前の腕が燃え上がった。桜花は悲鳴を上げて首から手を放し、火を消そうとごろごろと床を転げ回る。息をしようと勢いよく空気を吸い込んだが、喉と胸に痛みを感じて激しくき込んだ。咳き込むたびにも、喉と胸が酷くいたむ。

 朦朧もうろうとする頭で上体を起こすと、目の前には揺れる赤い髪が見えた。周りを轟々ごうごうと炎が渦巻うずまき、目の前に立った人物の髪が怒り震えるようにおどっている。その炎は、前と違って酷く熱かった。

 炎は天井まで立ち上り、周りの椅子や机をバチバチと燃やしていく。目の前に広がる熱で、顔が焼けそうなほどだった。

 桜花が炎の向こうで、げた腕を抱きながらこちらを睨んでいる。


「下がれ。千晴に近付くな」


 ドスの効いた声が前から発された。こんなにも怒りをあらわにする煌賀を見た事がなくて、酷く恐ろしかった。

 怒気どきたぎらす煌賀か、それとも猛る業火にか、相手は恐れてその場を動こうとしない。ただ血走った眼でこちらを睨み付け、指を突き立てた。


「こいつをかばうのですか!? こいつはただの人間です! 我らの敵です! 何故、人間などお連れになったのか!? こいつはこの大陸に災いをもたらす者だ! 焔伯えんはくは、永和の地をつぶすおつもりか!!?」

「黙れ。千晴にそんな事を押し付けるな」


 そこまで言ったところで、衛兵達が部屋へと押し入ってきた。惨状を見るなり桜花を引っ掴み、部屋の外へと連れ出していく。彼女は部屋を去るまで、千晴をあざける言葉を放ち続けていた。


 桜花が出ていくのを確認すると、先程まであれほど激しく燃えていた炎が嘘のように鎮火ちんかしていった。そうしてようやく静かになると、恐怖と痛みとショックで、千晴の目からは涙が零れ出す。まるで赤ん坊が不安で泣きだすような情けない嗚咽おえつだった。気付いた煌賀が、ひざまづいて背中をさすってくれる。


「すぐに助けられなくて悪かった。もう大丈夫だ」


 そう言って何度も何度も擦ってくれたが、胸の奥でズキズキと痛んだものは、少しも楽にはならなかった。

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