第1話入学式にて

 青ヶ原高等学校。県内有数の有名校で、生徒のほとんどが卒業後、誰もが知る有名大学に進学する超進学校。勉強だけでなく部活動も盛んで、野球部は甲子園常連の強豪であり、その他の部活もほぼ毎年全国大会に出場している。まさに文武両道。入学するだけで勝ち組なスーパー高校。


 てか、俺が今日入学する高校である。

 と言っても、別に俺は特別勉強ができるわけではない。頑張っても人並みが良いとこだと思う。決してバカではない。本当だよ?ここ重要。


 ともかく、そんな俺がなぜこの学校に入ることができたのか、それには学部が関係している。

 青ヶ原には普通科とスポーツ科がある。普通科は言わずと知れた進学コースであり、5教科受験でしかも超難関だ。一方スポーツ科には運動部の特待生が入ることが多く、その影響からか体力テストがある。勉強もある程度必要だが、体力面を重要視して合否を決めているのだ。


 俺はもちろんスポーツ科。

 もう、体力テストあるってわかった瞬間にここに決めたよね。

 他にも要因はあるが、決め手は完全に体力テスト。体力テストバンザイ。

 というわけで、無事受験に合格し晴れて青ヶ原に入学できたのである。



『……であるからして、新入生諸君には青ヶ原高等学校生であることを自覚し……』


 入学式が始まってどれだけ立っただろう。体育館のステージでは、現在校長先生が絶賛祝辞中である。

 いや、つーかマジで長ぇ。このおっさん1人で何分くっちゃべってんの?そろそろ眠気が限界なんですけど。

 周りを見渡すと、他の生徒もさすがの長さに参っているようだった。


『……ということで、新入生諸君にはこれからの学校生活を有意義に過ごしていただければと願っております。では、入学おめでとう』


 あーやっと終わった。

 大きな拍手の後、校長が満足げにステージを降りる。

 正直ほとんど聞いてなかったが、ここの校長の挨拶が長いことはよーくわかった。

 ……あれ?もしかして毎回これ?


 校長のクソ長い祝辞が終わり、俺がこれからの朝会に絶望している頃、司会の先生がプログラムを進める。


『続きまして、新入生挨拶』


 へぇー。やっぱこういうのあるんだ。確か、挨拶するのって受験の首席だよな。え、この学校で首席ってどこのAI?


『新入生代表、特進科1年A組、白崎冬華しらさきふゆか


「はい」



 空気が澄んだ。

まるで、その声が辺りを浄化しているような、そんな感じすらした。


 ステージを見ると、そこには今年の新入生代表の姿。

綺麗な長い黒髪、

大きく、だが寒気すら感じる瞳、

細くモデルのような体。

そのビジュアルに、生徒どころか父兄でさえも静まり返っている。


 彼女はその綺麗な声で、新入生代表の挨拶を淡々と、それでいて完璧にこなしていた。

 周りはみな息を呑み、彼女の声に聴き入っている。










 俺を除いて。


 俺は知っている。

ああいう感じのやつにロクなのはいない。

絶対に。

もう俺の[あいつに関わるなセンサー]がびんっびんに反応してるから。


 まぁ、俺みたいなのがあんな完璧モンスターと関わることなんてまずないだろうが。



 ……これフラグじゃないよね?



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